冷え込む時刻の前に「十三夜の月見」
中秋の名月と十三夜の名月
旧暦の春夏秋冬は、1月から3月が春、4月から6月が夏、7月から9月が秋、10月から12月が冬です。
従って8月は秋の真ん中の月、「中秋」です。
そして、旧暦の8月15日の満月を愛で、月の神様に豊作を願うのが「中秋の名月(十五夜)」の月見といわれています。
収穫したばかりの芋を備えることから「芋名月」とも言います。
令和2年(2020年)の「中秋の名月」は、10月1日でした。
また、十五夜の約1ヶ月後にめぐってくる旧暦の9月13日は「十三夜」の月見といわれています。
稲作の収穫を終える地域が多いことから、稲作の収穫を感謝しながら「ほぼ満月」の月を愛でるのですが、収穫したばかりの豆や栗を備えることから、「豆名月」「栗名月」ともいいます。
令和2年(2020年)の「十三夜」は、10月29日です。
「中秋の名月」と「十三夜」を合わせて「二夜(ふたよ)の月」といったり、片方しか見ないことを「片見(かたみ)月で縁起が悪い」といったりするのは、昔から「十三夜の名月」が重視されてきたことのあらわれと思います。
気温の差
月の出の時刻は、満月を基準とすると、満月を過ぎると次第におそくなります。
逆に、満月より前の十三夜は、1時間くらい早く昇りはじめます(表)。
季節が進むので、旧暦の9月の満月の頃は、中秋の名月の頃より気温が低くなります。
しかし、旧暦9月の十三夜の月見であれば、月の出が早いので、夜の冷え込み前に月見を終えることができます。
令和2年(2020年)の東京でいえば、10月1日の中秋も名月を見る頃の気温は18度前後です(図1)。
そして、東京の10月29日の時系列予報では、夜遅くになれば15度を下回ってきますが、十三夜の月の出から南中時刻までの気温は、15度以上です(図2)。
令和2年(2020年)の十三夜の月見
日光東照宮の陽明門では、柱の中の1本だけ彫刻の模様が逆向きになっている逆柱であるのは、「建物は完成と同時に崩壊が始まる」ということから、わざと柱を未完成の状態にしたとされています。
中国伝来の中秋の名月に対し、日本固有の風習であるとされる十三夜の月見も、衰退がはじまる絶頂期の満月より、絶頂期の直前の十三夜の月を好んだという、日本人の美意識かもしれません。
個人的には、美意識に加え、作物の出来や気温の日変化も大きいのではないかと思っています。
10月29日の夜は、北日本を中心に曇りか雨の地方が多い予報となっていますが、太平洋側を中心に晴れる所も多い予報になっています(図3)。
東京も次第に雲が広がってきますので、月の出の頃はともかく、十三夜の月の南中時刻は愛でることができるかどうか微妙です。
タイトル画像の出典:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート
図1、表の出典:国立天文台ホームページと気象庁ホームページをもとに著者作成。
図2の出典:気象庁ホームページ。
図3の出典:ウェザーマップ提供。