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女子大生アイドル、カレッジ・コスモスが語るキャンパス事情と「就活しない私たちの夢」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
カレッジ・コスモスの松井まり、山木梨沙、秋月香七(左から) 撮影/松下茜

女子大生を中心に21人で編成されるアイドルグループ、カレッジ・コスモスが、2ndシングル「幸せのありかはどちらですか/わたし革命」(両A面)を発売する。“何十社分もエントリーシート”といったフレーズが盛り込まれ、大学生目線で歌われたナンバーだ。中心メンバーの山木梨沙(慶応義塾大学商学部/ハロー!プロジェクトのカントリー・ガールズと兼任)、松井まり(中央大学法学部)、秋月香七(慶応義塾大学文学部)に、今どきの女子大生のキャンパス事情や人生観、恋愛観などを聞いた。意外と(?)堅実かつ現代的な意識が浮かび上がった。

長い休みに国際交流のボランティアをしました

――山木さんと松井さんは来春卒業予定の4年生ですね。

山木  卒論に向けてカフェで勉強中です。家だとベッドとかゲームとか誘惑が多いので(笑)、「やるぞ!」という日は朝から晩ごはんまでずっとカフェにいます。

――卒論のテーマは?

山木  大まかにいうと“組織市民行動”です。組織は思いやりの精神を持たないと機能しない……ということを、自分の芸能界での経験を踏まえて必死に書いてます。ゼミは管理会計で、全然関係ないんですけど(笑)、先生に「卒論は半年向き合うものだから、興味のあるテーマでいい」と言われたので。

山木梨沙(やまき・りさ) 1997年10月14日生まれ、東京都出身。(スペースクラフト提供)
山木梨沙(やまき・りさ) 1997年10月14日生まれ、東京都出身。(スペースクラフト提供)

松井  私は法学部で卒論はなくて、ゼミは金融法を取っています。フィンテックという経済とテクノロジーの融合や、キャッシュレス決済が広まってアップデートされている法律などについて学んでいます。刑法とか民法より、狭い分野の細かいことを勉強したいと思いました。

――秋月さんは3年生で、どんな勉強に力を入れてますか?

秋月  もともと近代文学が好きで、今は戦後の作品について、当時の時代背景を調べて作者さんの伝記なども読んだうえで、どう受け止めるかを研究しています。

――たとえば、どんな作品について?

秋月  春学期に学んだのは、安岡章太郎さんの『ガラスの靴』です。ファンタジー要素がある印象を受けたので、何に影響を受けたのか調べたら、ご自身が体験したことを集めて書いたことがわかりました。

――学業にもしっかり取り組んでいるようですが、芸能活動とはどう折り合いをつけてますか?

山木  高校生のときにアイドルになるに当たって、大学は絶対に卒業するのが親との約束でした。特に1~2年生のときはキャンパスが日吉で遠かったり、必修の授業が多くてしんどかったけど、4年で卒業できるように頑張りました。

松井  私は今もキャンパスが多摩で遠くて、山に囲まれていて「マムシ注意」という看板も立ってます(笑)。もともと中学生の頃にドラマの『HERO』を観て検察官に憧れて、法学部に入りました。でも、1年生で芸能活動を始めてからは、司法試験は年齢制限がないので、今できることをやろうと思ってます。

秋月  大学には内部進学で入って、1年生のときは将来のことは何も考えてなくて、ダンスサークルでひたすら踊ってました。芸能界にはずっと憧れはありましたけど、大学生になって「もう厳しい?」と思っていたら、ご縁があって事務所に所属して、カレッジ・コスモスの活動をしています。

――大学生って、どんなところが良いと思いますか?

山木  ゼミが楽しいです。1~2年生の頃は、大学ってクラスはあるけど、高校みたいに団結して文化祭や球技大会をするわけではないから、ただ単位を取るために通う意識が強かったんです。でも、3年生になってゼミに入ったら、一気にまとまりが出て、勉強はもちろん、遊びやごはんも一緒に行くことが増えて、やっとキャンパスライフが始まった気がしました。

秋月  好きな時間に受けたい授業を受けられるのは良いです。空いた時間に友だちとごはんに行ったりは、高校まではできませんでしたから。

松井  あと、休みもとにかく長い。夏休みが2ヵ月、春休みが2ヵ月半くらいあるのは特権だと思います。その間に海外留学に行く人もいますし、私は1年生のとき、国際交流で来日する海外の学生をサポートして、一緒に2週間生活するボランティアをしました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

誰かについていくのでなく自分でしっかり考えたい

――カレッジ・コスモスの新曲「幸せのありかはどちらですか」には“何十社分もエントリーシート”といったフレーズがあります。芸能活動を続ける皆さんは就活はしないでしょうけど、周りでこういう空気は感じますか?

山木  6月あたりから友だちがゲッソリしてきて、「大変なんだろうな」と思いました。

松井  歌詞でグッときたところがあります。そのエントリーシートの部分で“埋められない空白500字”と続きますけど、私は法学部で論文を書くことが多いから、友だちにエントリーシートの文面のアドバイスを求められて、本当に悩みました。ざっくり「こんなことをやりたい」というのはあっても、限られた500字で何を書いたらいいのか難しくて。

――作詞・作曲の山崎あおいさんは「この先の人生で一番大切にしていきたいものを、急に決めなさいって言われる大学生は大変」とツイートしてました。皆さんが人生で一番大切にしていきたいものは、何ですか?

松井まり(まつい・まり) 1996年10月22日生まれ、東京都出身。(スペースクラフト提供)
松井まり(まつい・まり) 1996年10月22日生まれ、東京都出身。(スペースクラフト提供)

秋月  まっすぐに生きること、ですかね。自分を折り曲げてまで人に従うのは、違うなと思ってます。自分の気持ちを大事にしつつ、人の気持ちも大事にして、生きていきたいです。

山木  誰かについていくのでなく、自分でしっかり考えて、信念を曲げずに生きたいと思います。この世界だと、私の中でアイドル像はしっかりあるので、誰に何を言われても曲げたくない。それでバカを見ることがあったとしても、自分と同じ考えの人も必ず周りに出てきてくれるので、そういう人たちを大切にしていきたいです。

松井  私は目の前のやりたいことを諦めず、常に今を生きていたいと、ずっと思ってきました。未来でもそのときごとにやりたいことを、迷わず選択していけたら。

――自分を貫くところは3人とも共通してますね。この曲では、“いつか会社の帰りに待ち合わせ”とか、恋愛や結婚、家庭に関する夢も織り込まれています。自分の将来に関して、そういう部分も考えますか?

松井  まったく考えたことはなかったのですが、MVでお母さんの役をやって、初めて「子どもってすごくかわいい」と思ったし、子どもにお母さんの気持ちで接しながら、ふと「私にもこんな未来があるのかな?」と考えました。

秋月  私も結婚や子どもについて、一切考えたことはなかったです。結婚するなら、ゲームオタクに理解がある人(笑)。デートも一緒にゲームをしてほしい。

山木  リアルに想像したことはありませんけど、少女マンガを読んで大恋愛には憧れました。昔から大好きだった『フルーツバスケット』に、おばあちゃんになってもラブラブで手を繋ぐ描写があるんですね。そういうふうに末永く仲良くできる家庭はいいなと思います。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

強い言葉よりオブラートに包んで円滑に

――両A面のもう1曲「わたし革命」では、勇気を出して発信者になろうという決意が歌われています。声を上げることが難しいという感覚はありますか?

松井  発言することに対する恐れは、私の中にはないです。ただ、今の時代、SNSには気をつけないと。何となく書いた言葉が誤解を生むこともあるので、なかなか発言しにくいときも実際あると思います。

山木  言いたいことが言えなくて悩んだりはあまりしませんけど、自分が少数派になっても「私はこう思う」と議論できる人はカッコイイなと憧れます。

秋月  私は授業で当てられただけで緊張しちゃうタイプで、自分から何かを発信するのは勇気がいることでした。最近ようやく、大学の授業で班別に議論するとき、それなりに発言できるくらいには成長しました。

秋月香七(あきづき・かな) 1998年12月3日生まれ、東京都出身。(スペースクラフト提供)
秋月香七(あきづき・かな) 1998年12月3日生まれ、東京都出身。(スペースクラフト提供)

――今の若い世代は深い人づき合いを避けたがると、巷間言われます。自分が傷つかないように表面的な関係に終始するとか、実際ありますか?

松井  あまり強い言葉で言わないように、オブラートには包むかもしれません。ズバッと言って争いになるより、婉曲に伝えて中和できる方法を取ることが多い気がします。

山木  私は極端に狭く深い友人関係を築くタイプなので、友だちは少ないですけど、本当に信頼できる親友が1人いればいいと思ってます。その親友には何の気もつかいませんし、私が言ったことを本当の意味で理解してくれるので、誤解も生まれません。でも、私は入ってませんけど、サークルとかで何10人単位で関係を築かないといけないときは、喧嘩しても何も生まれないから円滑に行くように、めちゃくちゃ気をつかうと思います。

――その辺は大人の感覚ですね。こちらの曲には“この世界の75億人 笑ってる顔泣いてる顔 どちらが多いのだろう”といったフレーズがありますが、世界のニュースに関心はありますか?

松井  家でCNNが流れるネットをつなげていて、観たりしています。海外に興味があるので、最近の国際政治の問題は気になっていて。サウジアラビアへの攻撃で原油が高騰して、ガソリンスタンドで「やっぱりガソリンの値段が上がったな」と思いました。

秋月  G20大阪サミットのニュースはよく観てました。ラグビーのワールドカップもそうですけど、日本が舞台になると興味が出ます。

山木  他の国との友好関係を深めるためにも、カレッジ・コスモスで海外ライブができたらいいなと思います。

――カレッジ・コスモスではこうしたメッセージ性のある楽曲を、どういう人たちに届けたいと思ってますか?

松井  やっぱり同世代の方にたくさん聴いていただきたいです。来年就活を始める3年生とか、聴くと胸が痛くなるくらいリアルな歌詞が多いですけど、少しでも力になれたら。

秋月  3年生でもインターンに応募している友だちはたくさんいるので、かなり刺さると思うし、実際に「すごく良い歌だね」と言われました。

松井  今、就活に励んでいる人たちにも、それを経験してきた大人の方たちにも、響く曲かなと思います。

撮影/松下茜
撮影/松下茜
総勢21人のカレッジ・コスモス(スペースクラフト提供)
総勢21人のカレッジ・コスモス(スペースクラフト提供)

カレッジ・コスモス

2018年に各大学のミスコンファイナリストら女子大生を中心に結成。美と知性を併せ持つユニットとなるように、コスモス(秩序と調和の取れた宇宙/秋桜=花言葉は“乙女の真心”)から命名。2019年3月にシングル「夢は意地悪/言葉の水を濾過したい/記号なんかじゃない私たちは」でデビュー。公式HP

初回生産限定盤A
初回生産限定盤A

「幸せのありかはどちらですか/わたし革命」

10.9発売

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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