2階級王者が興行主に ダニー・ガルシアが目指す“単なるビジネスではないプロモーター”
元世界スーパーライト、ウェルター級王者ダニー・ガルシアがプロモーターとして新たなスタートを切っている。
7月より自身が主催するスウィフト・プロモーションズの定期興行として“Tale of Garcia(ガルシアの物語)”と称されたシリーズを開始。アトランティックシティで11月30日に挙行した第4回も大観衆を動員した。
現役時代に“DSG(ダニー・“スウィフト“・ガルシアの略)”ブランドを設立したガルシアは、故郷フィラデルフィアの同じ敷地内にジム、床屋、グッズショップが隣接された複合施設をオープン。PBC傘下で手にした高額報酬を有効に活用し、リング内外の成功例になっているといえよう。
最新の興行にはスティーブン・フルトン、ジュリアン・ウィリアムズといった同じフィラデルフィアの世界王者たちも顔を出していた。このような人脈を活かして、プロモーターとしても活躍していくことが期待される。
30日のイベント後、ガルシアを単独インタビュー。今後の青写真、ボクシングへの思い、フロイド・メイウェザーとの関係、そして選手としての復帰プランなどをじっくりと語ってもらった。
夢でもあったプロモーターへの転身
――今夜(30日)の主催興行には満足していますか?
ダニー・ガルシア(以下、DG) : 素晴らしいショウだったと思う。多くの観客を動員し、みんなが喜んでくれていた。選手たちのパフォーマンスも良かったし、これ以上のことは望めないくらいだ。
――ハイペースで今回が4度目の主催興行ですが、これから何を成し遂げていきたいと考えていますか?
DG : DSGブランドをプロモーションの面でも大きくし、同時にチャンピオンを生み出したい。クインシー・ウィリアムズ(アメリカ/4戦4勝4KO)、クリスチャン・カンゲローシ(イタリア/9戦全勝(5KO))といった無敗の若手選手たちを育成していきたい。これまでボクシングで得たものを還元し、後に続く世代を育てていきたいんだ。
――プロモーター業は現役時代からいずれやりたいと思っていた仕事だったのでしょうか?
DG : その通りだ。自分の夢の1つだったし、これからもやりたいと思うことをやっていきたい。自身の限界を定める必要はないんだ。
――長くこのスポーツに関わってきましたが、ボクシングへの愛情は変わらないということでしょうか?
DG : 私は10歳でボクシングを始め、以降、26年間も続けてきた。知っているのはボクシングのことだけ。ボクサーとして多くの目標を達成し、成功したときにどんな気持ちを味わえるかもよくわかっている。これからは周囲の若い選手たちにも同じ喜びを味わってほしいし、その手助けをしていきたい。
――プロモーターとしてのプランは?
DG : まだ這い歩きをしている段階だけど、自身の足で歩けるようになる前にはそれをしなければいけない。まずはしっかりと下積みをしたい。これからも傘下選手に機会を与え、ブランドを大きくし、次の段階に進んでいきたい。
――出場選手はフィラデルフィアをはじめとするアメリカ東海岸の選手だけでなく、メイウェザー・プロモーションズの選手もいました。フロイド・メイウェザーとはいい関係を保っているのでしょうか?
DG : フロイドとは親しいし、メイウェザー・プロモーションズのCEOに就任したリチャード・シェイファーとは彼がゴールデン・プロモーションズを率いていた時代から馴染みだ。おかげで互いに支え合う上質なコラボレーションが可能になっている。
他のプロモーターとの違いとは
――あなたは現役時代からファイトマネーを上手に投資し、DSGブランドを構築してきました。引退後も困らないような報酬の使い方は若い選手たちにも伝えていくつもりでしょうか?
DG : それもダニー・ガルシア・プロモーションズが力を入れていくことの一部だ。私たちは単なるボクシングのプロモーターではない。まとまった報酬を稼ぐ選手が出てきたとしたら、生活の基盤を築き、後々までお金を残し、ずっと利益を得られるように助けていきたい。税金を堅実に納め、健康保険、生命保険などもしっかりとできるように。さまざまな形で傘下のボクサーたちのケアをしていきたい。それが他のプロモーターとの違いになっていくと思う。私にとって、プロモーター業は単なるビジネスではないんだ。
――今回の興行にはメイウェザー傘下のカーメル・モートンが出場するはずが、15パウンド以上の体重超過で試合はキャンセルになりました。18歳の新星にいったい何が起こったのでしょう?
DG : 伝達不足があった。試合をするのに必要な血液検査の結果が間に合わず、彼は試合ができないと思ったようだ。私たちは検査が間に合った時のために体重を作ってくれると期待していたが、ただ、彼を責めたくはない。私たちの責任だ。私たちはプロモーターとして学んでいる過程だし、彼もボクサーとして成長途上だということだと思う。
――モートンに何かアドバイスをするとすれば何と伝えますか?
DG : こういうこともある。ボクシングでは、リングに入るその瞬間まで何が起こるかはわからない。今回の件から学び、成長してほしい。まだまだ伸びていってほしい。それだけだ。
ラストファイトを自らプロモートしたい
――あなた自身はもう現役ボクサーとして戦うつもりはないのでしょうか?
DG : うーん、もう少し待ってほしい(笑)。戦うかもしれないし、戦わないかもしれない。もうリングに立つ必要はないけれど、その一方で、(9月、エリスランディ・ララ戦に完敗し)あんな形で引退したくはない。3階級制覇を狙い、やり遂げられなかった。ただ、ファンはもう1試合を望んでくれているように感じる。自分がどうすべきか、もう少し考えてみたいと思っている。
――キャリアを少し振り返って、最も思い出深い試合を挙げるとすれば?
DG : まずは23歳の時、初めて世界王者になったエリック・モラレス戦だ。それからアンダードッグとして臨み、予想を覆して勝ったアミア・カーン戦、ルーカス・マティセ戦も忘れられない。あとはキース・サーマン戦、エロール・スペンスJr.戦、ラモン・ピーターソン戦・・・・・・かなりたくさんある(笑)。
――そうやって充実したキャリアを過ごし、もしも復帰するのであれば何が目標になるのでしょう?
DG : 理想を言えば、さっきも話した通り、ファンにもう1試合をお見せしたい。ラストファイトを自身でプロモートできれば、それこそがドリーム・カム・トゥルーだ。真の王者として、同時にビジネスマンとして、現役を終えられれば最高だ。
――最後にプロモーターとしての最終目標は?
DG : 若手を育成し、スターを生み出したい。そして、ボクシング界で最高のプロモーターになりたい。