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介護に疲れていませんか?「介護殺人」をおこさないために #専門家のまとめ

太田差惠子介護・暮らしジャーナリスト
イメージ画像(提供:イメージマート)

年末年始は、家族での介護時間が長くなる傾向があります。デイサービスやホームヘルプサービスが休みになる事業所もあり、なかには、高齢者施設に入居中の家族を一時帰宅させた方もいるでしょう。そんななか、「もっと、介護をがんばらなければ」と離職を検討している人もいるかもしれません。しかし、介護に専念するほど、介護疲れやストレスはたまるケースも。「介護殺人の報道を見聞きすることが増えた」と思っているのは筆者だけではないと思います。他人事ではありません。最悪の事態を防ぐためのヒントとなる記事を紹介します。

ココがポイント

高齢者が(中略)、昨年度(令和5年度)家族や親族などによる虐待件数は1万7100件で93.8%を占め、27人が死亡
出典:NHKニュース 2024/12/28(土)

被告人が自覚のないまま疲労や疲弊感を蓄積させ、解決のための選択肢を持ち合わせない中で、視野を狭くして、犯行に及んだ
出典:日テレNEWS NNN 2024/6/23(日)

母から(中略)「楽にしてちょうだい、もう殺してちょうだい」と言われた。「うん、わかったよ。一緒に死のうか」と言いました
出典:FNNプライムオンライン 2024/12/28(土)

仕事を辞めて介護に専念(中略)「介護離職前より、介護離職後の方が精神的・肉体的負担が増える」という調査結果があります
出典:朝日新聞リライフ 2024/2/26(月)

エキスパートの補足・見解

「介護は、家族で何とかしなければ」と考えていませんか。けれども、「何とかしなければ」と思うほど、視野が狭くなり、とんでもない方向にことが流れていくことがあります。リンクした2本目の記事で、妻を殺害した被告は「私も妻もよく言えばプライド、悪く言えば見栄っ張りで、人には弱みを見せたくなかった。 家族のことは家族でなんとかしなければというのがあったのかもしれない」と語っています。

3本目の記事では、61歳の息子は92歳の母親を介護するためフランス料理のシェフを辞め、1日のほとんどを介護に。母親の首を体感で20分くらい絞め、自らも大量の睡眠薬を飲むなどして自殺を図っています。

介護に専念しても、多くの場合、物事は好転せず、「孤立」や「負担増加」というリスクがあることを理解すべきです。地元の地域包括支援センターやケアマネジャーなどの介護の専門家、医師などに、「辛いです」「苦しいです」と訴え、負担軽減の方策について相談を。また、虐待を受けていると思われる高齢者を発見した場合(疑わしい場合も含む)も、地域包括支援センターに通報してください。高齢者を虐待などから守る「緊急一時保護」という制度もあります。

介護・暮らしジャーナリスト

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。「遠距離介護」「高齢者住宅」「仕事と介護の両立」などの情報を発信。AFP(日本FP協会)の資格も持ち「介護とお金」にも詳しい。一方、1996年遠距離介護の情報交換場、NPO法人パオッコを立ち上げて子世代支援(~2023)。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第3版』『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第3版』(以上翔泳社)『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門第2版』(共著,KADOKAWA)など。

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