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史上最も遅い「球速50km前後」の投球。なかには、見逃しのストライクや投手ゴロに仕留めた球も

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブロック・ホルト(テキサス・レンジャーズ)Aug 7, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月7日、テキサス・レンジャーズのクリス・ウッドワード監督は、9点ビハインドの8回裏に、ユーティリティ・プレーヤーのブロック・ホルトを登板させた。

 ホルトは、打者3人に投げ、3アウトを記録した。1人目は投手ゴロ。2人目にはヒットを打たれたものの、打者が二塁を狙い、それをレフトのチャーリー・カルバーソンが刺した。3人目の打球はフェンスを直撃しそうだったが、ライトのDJ・ピータースがジャンプして好捕した。

 これだけなら、特筆すべきことではない。ワシントン・ナショナルズでプレーした昨年の夏も、ホルトは2試合に投げている。

 ただ、スタットキャストによると、この日のホルトの投球は、10球のうち半数が球速34マイル(約54.7km)を下回った。それまで、2008年以降の「ピッチ・トラッキング・エラ」において、35マイル(約56.3km)未満の球を投げた選手はいなかった。

 ホルトが更新する前の、最速ならぬ最遅は、2015年4月11日に投手のクレイグ・スタメン(現サンディエゴ・パドレス)が記録した36.1マイル(約58.1km)だった。これは、申告制ではなかった時代の敬遠四球の球だ。敬遠四球を除くと、ホルトの前日に、こちらも野手のジョナサン・アラウーズ(ボストン・レッドソックス)が投げた36.3マイル(約58.4km)が最も遅かった。投手では、2017年4月10日にジャレル・コットン(現レンジャーズ)が投げた41.1マイル(約66.1km)が最遅だ。

 8月7日の試合には、ホルトの3人前に、コットンも登板した。この日は76.3マイル(約122.8km)のカーブが最も遅く、1イニングを投げて被安打4、与四球と奪三振が2ずつ。3ラン本塁打を打たれた。

 ホルトが投げた、山なりのゆっくりとした5球――下の写真がそう。スタットキャストは球種をイーファス・ピッチとしている――のうち、最も遅い30.4マイル(約48.9km)をはじめとする3球はボールと判定されたが、2番目に遅い31.1マイル(約50.1km)の球はストライク(見逃し)。3番目に遅い32.6マイル(約52.5km)の球は、投手ゴロになった。

 ちなみに、ザック・グレインキー(現ヒューストン・アストロズ)やダルビッシュ有(現パドレス)も、イーファス・ピッチを投げる。グレインキーの最遅は今年4月12日の51.5マイル(約82.9km)、ダルビッシュは2013年5月5日の53.5マイル(約86.1km)だ。

ブロック・ホルト(テキサス・レンジャーズ)Aug 7, 2021
ブロック・ホルト(テキサス・レンジャーズ)Aug 7, 2021写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 なお、この日のホルトの最速は、82.7マイル(約133.1km)の速球。最後に投げ、最もいい当たりの打球を飛ばされた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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