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今からちょうど四半世紀前に起きた、まるでデジャブのようなトリプル・プレー

宇根夏樹ベースボール・ライター

今からちょうど25年前の1990年7月17日。フェンウェイ・パークで行われたミネソタ・ツインズ対ボストン・レッドソックスの試合で、まるでデジャブのようなプレーが起きた。

まずは4回裏、無死満塁の場面だった。トム・ブルナンスキーの打球を捕ったゲリー・ガイエティが、自ら三塁ベースを踏み、二塁ベースに入ったアル・ニューマンへ。この送球を受けたニューマンは、素早くケント・ハーベックに転送し、5-4-3のトリプル・プレー(三重殺)を成立させた。

続いては8回裏、無死一、二塁。今度はジョディ・リードの打球だ。同じように三塁ベースを踏んだガイエティの送球は、やはり同じくニューマン、ハーベックと渡り、再び5-4-3のトリプル・プレーとなった。

5月に「クレメンテに縁のあるウォーカーがやってのけたトリプル・プレーは、メジャーリーグ史上初の快挙」で書いたように、トリプル・プレーにはさまざまなパターンがある。そのなかで、5-4-3のトリプル・プレーはメジャーリーグで最も多く成立している。

とはいえ、同じ日に別の試合でトリプル・プレーが起きたことはあるものの、同じ試合で2度は史上初めて。この後も起きていない。しかも、3人の野手も、その順序もまったく同じ。マウンドで投げていた投手――スコット・エリクソンジョン・キャンデラリア――と打者、塁上の走者の数などの違いはあるが、ヨギ・ベラならずとも「デジャブの繰り返しだ」と言いたくなる。改めて映像を見ると、ニューマンが二塁ベース上で走者を避けてジャンプをする姿勢までそっくりだった。

また、プレーだけでなく、そのルックスからして存在感があったガイエティ――ニックネームは「ラット(鼠)」――は、1試合2度のトリプル・プレーにとどまらず、メジャーリーグ初打席でのホームランや、史上初となるポストシーズン初打席から2打席連続ホームランといった、他のレアな記録にも名前を刻んでいる。メトロドーム(ツインズの前球場)がオープンした1982年の開幕戦では、球場初アーチこそ逃したものの、球場初の三塁打を放った(この試合はホームラン2本を含む4打数4安打)。現在、ガイエティは独立リーグのシュガーランド・スキーターズで監督を務めている。

なお、ツインズは2度のトリプル・プレーによってピンチを脱しながらも、0対1で試合には敗れた。ホームを踏んだのは、エラーで塁に出たマイク・グリーンウェル。そのエラーを犯したのは、ツインズの内野手では唯一、この日のトリプル・プレーに関わらなかったグレッグ・ギャグニーだった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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