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FC東京チャン・ヒョンスも炎上リンチにさらされる韓国“テックル・テロ”の恐怖

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
スウェーデン直後のチャン・ヒョンス(写真:ロイター/アフロ)

ロシア・ワールドカップに関するニュースが世界中を駆け巡っている。

ネットでは美女サポも話題だが……

日本では、コロンビアに大金星を挙げた日本代表の最新情報に始まり、西野監督の人柄や大迫勇也のルーツにプライベート、はたまた各会場を彩る世界の美女サポーターまで、さまざまな情報がネットで話題になっていると聞く。

それは韓国も同じで、韓国代表のことはもちろん、選手たちの私生活に“美女サポーター”などの情報がネット上に続々とアップされている。

スポーツ新聞『スポーツ・ソウル』によると、最近はシン・セロムという女性が話題だそうだ。

韓国では2002年ワールドカップ時に登場した“応援女神ミナ”以降(ミナは歌手としてもデビュー)、フォトジェニックな美女サポーターを“ワールドカップ美女”と呼ぶが、シン・セムロは “5代目ワールドカップ美女”としてネットでバズっているらしい。

(参考記事:【画像】韓国の “歴代ワールドカップ美女”を一挙ご紹介!! ロシアW杯でも現れるか?

こうしたネット上での盛り上がりがワールドカップの熱気と関心をさらに高めてくれるが、その一方で心配になるのは韓国の“テックル・テロ”のことだ。

度を過ぎた批判でネット炎上

“テックル”とは、ネットニュースに読者が書き込むコメントのこと。Yahoo!ニュースでいう“ヤフコメ”のようなイメージといえば伝わりやすいだろうか。

そのテックル欄に、韓国がスウェーデンに敗れて以降、代表選手に対する度が過ぎた批判が大量に書き込まれているというのだ。

特に槍玉に挙げられているのは、FC東京でプレーするチャン・ヒョンスだ。

例えば、前半26分にはチャン・ヒョンスのロングパスを受けた左サイドバックのパク・チュホがハムストリングを負傷して交代。ロシアでのプレーは絶望的となったが、チャン・ヒョンスはこのときのロングパスが不正確だったとして、パク・チュホの怪我の責任を問われている。

また、スウェーデン戦では、キム・ミヌのスライディングタックルによって献上したPKから決勝点を奪われたが、この失点シーンも、その直前のチャン・ヒョンスのパスミスからボールを奪われたことが原因だったと批判が殺到している。

しかも、チャン・ヒョンスを非難するテックルのなかには、目を覆いたくなるような人格攻撃も少なくないのだ。

(参考記事:「代表永久除名」「刺青を消せ」はまだ序の口…FC東京チャン・ヒョンスへの批判がひどすぎる)

こうしたテックルをチャン・ヒョンス自身も目にし、チャン・ヒョンスは自身のSNSアカウントを非公開にした。代表チームの広報関係者によると、「チャン・ヒョンスがあまりに多くの批判を受けて、とてもつらそうにしている」というのだから深刻だ。

土下座スケーターも襲われた“テックル・テロ”

スウェーデンに敗れたことをきっかけに、“テックル・テロ”ともいうべきバッシングが飛び交っている韓国。

もっとも、これまでも韓国ではスポーツ選手への悪質なテックルが問題になってきた。最近で記憶に新しいのは、平昌五輪で“土下座スケーター”という不名誉な異名を頂戴してしまったキム・ボルムだろう。

スピードスケート女子パシュートの準々決勝で“置き去り騒動”が大問題になったことは日本でも報じられたが、韓国のネット上では、チームメイトを置き去りにしたとされたキム・ボルムに対するバッシングがヒートアップ。

結局、彼女は開幕前にはネットで話題になっていた自身のSNSアカンウトを閉鎖するだけではなく、精神治療のために入院するまで追い込まれてしまった。

(参考記事:「アイドル顔負けの美貌」韓国女子スピードスケート選手キム・ボルムのSNSがスゴい!!

サッカーでも“テックル・テロ”の犠牲者はいる。例えば、スウェーデン戦でチャン・ヒョンスとともにセンターバックを務めたキム・ヨングォンも被害に遭った一人だ。

昨年8月にホームで行われたロシア・ワールドカップのアジア最終予選のイラン戦後、キム・ヨングォンが「サポーターの歓声が大きくて、選手同士の意思疎通が難しかった」と発言したことで、猛非難を受けたのだ。

現在のチャン・ヒョンスと同じように誹謗中傷のテックルが大量に書き込まれ、結局キム・ヨングォンは謝罪。

「応援に駆けつけてくれたサポーターを悪く言うつもりはなかった」と釈明したが、その後も当分の間、バッシングは収まらなかった。

「自分だったらゾッとする。韓国で生きていけない」

こうした“テックル・テロ”を振り返りながら思い出すのは、2002年の日韓ワールドカップ代表メンバーで、Jリーグ得点王にも輝いたファン・ソンホンが語っていた言葉だ。

ファン・ソンホンは94年アメリカ・ワールドカップで期待を裏切る結果しか残せず、国中から猛烈な非難を浴びた。叩かれ侮辱され、「国賊」とまで罵られた。そんな彼に当時のことを聞いたとき、こんなことを言っていたのだ。

「それでも私はまだマシなほうですよ。当時はインターネットがなく、無差別的に誹謗中傷を浴びることはありませんでしたから…。それを差し引いても、最近のネット上での誹謗中傷はひどすぎます。私の現役時代にはまだそんな文化はありませんでしたが、もし自分だったらと考えると……ぞっとしてしまいますね。文字通り、韓国では生きていけないかもしれない」

ストライカーは称賛と非難の両方を浴びるポジションだと割り切っていても、集中砲火を浴びると心が折れてしまうというのだ。つまり、それほど精神的に傷つけられ、追い詰められるということでもあるだろう。

チャン・ヒョンスをはじめとした韓国代表選手たちは、今まさにそんな誹謗中傷を浴びているのだ。

もちろん、スウェーデン戦が不甲斐ない結果に終わったことは事実だ。ミスや落ち度を指摘されるのは仕方ない。

また、チャン・ヒョンスは、シン・テヨン監督からディフェンスリーダーとして信頼を寄せられてきた選手でもある。その分チームで背負う責任は大きく、実際にミスも目立っていたため、批判の対象になってしまうことへの懸念はあった。

だが、だからといって個人の人格まで否定し、選手に深い傷を負わせるような暴言が許されるわけではないだろう。

ワールドカップの熱気が高まることは大歓迎だが、韓国で代表選手に対する度が過ぎた批判が続いていることは残念でならない。

本日行われるメキシコ戦も厳しい戦いになることは間違いないが、結果がどちらに転ぶにせよ、試合後には感情に任せた誹謗中傷や人格攻撃ではなく、建設的で未来志向なテックルが書き込まれてほしいと願う。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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