Yahoo!ニュース

創業150周年「彩雲堂」さんの自信作に驚き!伝統銘菓、若草を見つめ直したよもぎの香りはまるで緑茶

柳谷ナオ和菓子ソムリエ・ライター

京都、金沢、そして島根県松江市。日本三大和菓子処として名を馳せる三つの都市ですが、歴史浪漫に満ちた京都や、加賀百万石と名高い金沢ではなく、なぜ島根県松江市?と思う方もいらっしゃるかもしれません。東京、奈良、名古屋と他にも有名な都市はいくつもありますからね。

それは、島根県松江市七代目藩主・松平治郷(通称:不昧公(ふまいこう))公が茶道の「不昧流」を大成させ、彼が好んだとされる銘菓が今も尚お茶席にて供され、「不昧公好みの味」として脈々と受け継がれているから、というのも大きな理由のひとつ。

従来の若草は花柄ですが、よもぎ若草はよもぎが描かれています
従来の若草は花柄ですが、よもぎ若草はよもぎが描かれています

その中でも、ぽかぽかとした太陽の日差しに照らされた春の野をイメージしたとされる銘菓、若草。求肥に黄緑色のそぼろを塗したシンプルなお菓子は、島根県の和菓子屋さんでも多く作られております。

そしてこのほど、その原点を見つめなおした商品を、創業150周年にあたり発表したお店があるのです。今回は「彩雲堂」さんの「よもぎ若草」をご紹介。

よもぎ若草
よもぎ若草

ひと箱でお茶の時間がぐっと華やぎます
ひと箱でお茶の時間がぐっと華やぎます

こちらのお菓子、着色料を一切用いていないのです。従来お作りになられてきた若草とは異なり、なんと蓬の粉末をふんだんに盛り込んだそぼろなのです。歴史上に若草が登場した際には、蓬を用いたという文献をもとに研究、試作を重ねてきたという今回のよもぎ若草。

一口サイズに切って少しずつ召し上がるのがベター
一口サイズに切って少しずつ召し上がるのがベター

和菓子とは切っても切れない関係にあるお茶屋さんが乾燥し粉末状に加工した蓬を、何パターンも試したというのも納得です。香りが、一般的な蓬の青々しく背筋をシャキッとさせるような蓬とは一味も二味もことなるのです。

蓬の粉末とお砂糖を合わせた衣の向こうに透ける、奥出雲産の糯米から作られた求肥
蓬の粉末とお砂糖を合わせた衣の向こうに透ける、奥出雲産の糯米から作られた求肥

適度な粘り気があるからこそ、お砂糖と蓬粉末の衣がばらばらにならず口の中でひとつに
適度な粘り気があるからこそ、お砂糖と蓬粉末の衣がばらばらにならず口の中でひとつに

まるで緑茶のような香りを薫らせ、風格漂う落ち着きのある芳しさ。それでいて、一拍置いてから蓬特有のスンと鼻通りの良い薬草らしさがほんのりと。そのため、しゃきっとした独特の衣に包まれたとろりと粘り気のある甘い求肥と調和のとれたまろやかさとなり、そのままスムーズに抹茶の旨味であるほろ苦さへと繋がるというのも頷けます。蓬の粉末の生産が追い付かない程人気というのもわかります。

パッケージの内側も見逃し厳禁!
パッケージの内側も見逃し厳禁!

原点回帰ではあるかもしれませんが、よもぎ若草に携わる職人さんやお茶屋さんの技術の確かな進歩を強く実感した今作。彩雲堂さんの初代が100年以上も前にお作りになった若草が、それより以前の姿や味に近づいたかもしれないというのも、なんだか不思議なストーリー性を感じますね。
最後までご覧いただきありがとうございました。
柳谷ナオ

<彩雲堂・本店>
公式サイト(外部リンク)
島根県松江市八束街波入757-1
0852-76-3377
9時~18時
定休日 木曜

和菓子ソムリエ・ライター

■年間400種を優に超える和菓子を頂く和菓子ソムリエ&ライター。美味しさだけではなく、職人さんやお店、その土地の魅力をいかに伝えるかに重きを置いて執筆中! ■製菓衛生士免許所持・製造・販売・百貨店勤務経験有 ■和菓子・お取り寄せ・お土産・アンテナショップ・都内物産展&催事・和菓子とお酒&珈琲&ノンアルコールとのペアリングなどの執筆や取材、監修を得意としています。

柳谷ナオの最近の記事