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なぜ垣永真之介は吠えたのか。

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)
左端が、入場するやいなやシャウトした垣永真之介。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

壮大なるチャレンジである。ラグビーの日本チーム『サンウルブズ』が来季、世界最高峰リーグのスーパーラグビーに初挑戦する。21日の記者会見。入場するやいなや、日本のホープ、24歳のプロップ垣永真之介(サントリー)は右こぶしを握りしめ、大声でシャウトした。「さあー、いくぜぇー」と。

東京都内のホテルの記者会見場は、やんやの喝さいに包まれた。この日の選手登場は、スコッドのうち、垣永と日本代表のウイング山田章仁(パナソニック)、SH矢富勇毅(ヤマハ発動機)、エドワード・カークの4人だった。

会見では、山田から「(会場に)入る時、何と吠えたんですか? あれだけ、”吠えるな”と言ったんですけど。吠えた理由を聞かせてください」と冗談口調で突っ込まれた。垣永が照れながら、こう説明した。

「きょうはサンウルブズのスタートなので、元気よく、インパクトあるチームだということをみなさんにお伝えしたくて、ワタクシごとながら、パフォーマンスをさせていただきました」

じつはこれ、会見後の垣永によると、山田たちから勧められて、シャウトしたものだった。何と言ったの? と聞かれれば、垣永は「いつも何を言っているのかわからないので」と言いながら、「“さあー、いくぞー”です。(会場が)静まりかえらなくてよかったです。ははは。イメージは、オオカミ(サンウルブズのウルフ)です」と笑った。

改めて、なぜ?と問えば、「(サンウルブズの)始まりなので、勢いと、場を盛り上げようということでした」と答えた。

「もう世界最高峰のリーグですから。ほんとうに個人的にはチャンスをいただいたと思っています。(チーム参加には)断る理由がありませんでした。個人のスキルアップと、日本ラグビーの人気アップのため、一瞬一瞬がんばりたいと思います」

サンウルブズ参加の条件には頓着なかった。拘束期間などスケジュールは厳しいけれど、「僕としては独身ですし、若いですし、そんなことはどうでもいいのかなって。スーパーラグビーに参加できることを、光栄に思っています」と漏らした。

伸び盛りの垣永はことし、ワールドカップ(W杯)イングランド大会で活躍した日本代表に途中まで帯同していた。最後にメンバーから漏れたが、「ジャパンに関われたことは自分の財産になりました」という。

スーパーラグビーでの目標は、「個人としてはまず、試合にでること。試合にでなければ話にならない」と意気込む。「チームとしては、勝つことが一番です。やっぱり今回のワールドカップもそうですけど、結果がすべてだと思います」

サンウルブズは、五郎丸歩(ヤマハ発動機)がチーム入りするレッズとも対戦(2016年5月21日・ブリスベーン)する予定。「ゴローさん(五郎丸)は大学(早大)の先輩ですし、同郷(福岡)ですし、こういうトップリーグじゃないところで対戦できるのは楽しみです」と期待する。

垣永は心根がやさしい。会見後の囲みの際、某ラジオ局の記者から「もう一度、叫んでもらえませんか」とメチャ振りされると、「えっ。ここで叫ぶんですか」と躊躇しながらも真っ赤な顔で要望に応えた。「ヨッシャ―!」

このサービス精神、この人柄の良さ。これもまた、ラグビー人気アップの一助になればいいと考えているからである。グラウンドではからだを張ってプレーし、こういう会見の場でもからだを張ってラグビーをアピールするのである。

今年を漢字一文字で表すと?と問えば、「破壊の“壊”」と答えた。「ぜんぶ、たたき直されたからです」。では、来年の抱負は漢字一文字で?

「創造の“創”です。新しい自分を創っていきたいからです」

チャレンジの2016年。サンウルブズで新たな歴史を。2019年ワールドカップ(W杯)日本大会に向け、日本のホープがスーパーラグビーに挑む。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2024年パリ大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。酒と平和をこよなく愛する人道主義者。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『まっちゃん部長ワクワク日記』(論創社)ほか『荒ぶるタックルマンの青春ノート』『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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