スバルの新提案、レヴォーグ「STIスポーツ」とは? 【動画あり】
スバルは6月27日に、同社の主力モデルのレヴォーグに、新たに「STIスポーツ」と呼ばれるモデルを追加した。
スバルのモータースポーツやパーツ、そしてスバル車をベースとして高性能化したコンプリートモデルを送り出すスバル・テクニカ・インターナショナル(=STI)はこれまで、スバルの車に後から高性能パーツを架装することで、台数限定モデルを販売してきた。
しかし今回のSTIスポーツはそうした手法とは異なり、スバルとSTIの共同開発によって誕生した背景を持っているモデルであり、生産もノーマル・モデルの工場ラインで行われることになる。狙いはスポーティなSTIブランドをより多くのユーザーに認知してもらうことにある。
なぜなら日本国内でもSTIは、クルマ好きやモータースポーツファンには認知されているものの、一般ユーザーにはまだまだ知られていない。また海外においても展開はほぼ皆無のため、世界で見てもやはり、クルマ好きやモータースポーツファンのみが知るカルトなブランドだ。そうした現状を打破するために誕生したのが、今回のSTIスポーツというワケだ。
もともとSTIが世に送り出していたコンプリートカーは、数百台規模の台数限定ゆえに価格も高く、キャラクターも走りを徹底追及していたため必然的にユーザーも限られていた。しかし今回、スバルと共同開発を行うことによって工場のラインで生産が可能となったことで、ノーマルモデルと同様にカタログに掲載して常時販売するモデルとしたのが最大の特徴だ。
ノーマルとの違いや試乗インプレッションは動画を参照いただきたい。
今回スバルが送り出したSTIスポーツは言ってみれば、ノーマル以上STI未満という立ち位置。しかし実はこの立ち位置こそが世界的なトレンドでもある。
世界の自動車メーカーは、常に新たな市場を開拓してユーザーを獲得するのが使命だが、その典型といえるのがドイツ・メーカー。メルセデス・ベンツやBMW、アウディはまさに同じ手法を数年前から展開している。ご存知のようにメルセデス・ベンツにはAMG、BMWにはM、アウディにはRSといった具合に、ノーマルモデルをベースにしたハイパフォーマンスモデルが必ず用意される。これらは同社のスポーツ部門に当たる各子会社がブランドの威信をかけて世に送り出すモデルたち。ただそうしたキャラクターだけに、価格は高くキャラクターも尖っているため限られたユーザーのものとなる。
しかしながら顧客ニーズとしては、ノーマル・モデルでは物足らない…という層が確実にあり、そうしたユーザーに向けて新たな提案を行ってきた。例えばBMWは、Mとノーマルの中間に当たるモデルとして、M135i、M235iというモデルを用意しているし、メルセデスもAMGのC63とノーマルの間に、C43というモデルをラインナップする。こうすることで様々なニーズに応えてユーザー拡大を狙うわけだ。
スバルが今回レヴォーグで提案したSTIスポーツはまさにそうした例に近いもの。ノーマルのスバルでは物足りない、けれどSTIのコンプリートカーほど尖っていないモデルが欲しい。そうしたニーズをカバーするとともに、カタログに掲載されることでこれまでSTIの名を知らなかった方にも認知を広げようとしているわけだ。
またSTIは以前から海外展開を各市場からオファーされており、最近オーストラリアではSTIの手がけたフォレスターtSというモデルが発売となった。ただしこれも台数限定モデルで、多くの方が買えるわけではない。そうした背景を考えると、工場のラインで作れるSTIスポーツを要したことで、これらの海外へのある程度まとまった台数での展開もしやすくなったといえるだろう。
そんな風に推察すると、おそらく今後はレヴォーグSTIスポーツの販売状況等をみつつ、このコンセプトを他のモデルにも広げていくだろうと予測できる。ということは今回のレヴォーグSTIスポーツというのは、スバルとSTIが新たな扉を開くきっかけとなるモデル、ともいえるのだ。それだけに、レヴォーグSTIスポーツの販売がどのように推移するかにも注目といえる。