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スカパラ初シンフォニックコンサート 指揮・服部隆之、ハナレグミ、中納良恵と共に紡ぐ幸せなグルーヴ

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Photo/板場 俊

35周年のアニバーサリーイヤーの幕開けが初のフルオーケストラコンサート『billboard classics Tokyo Ska Paradise Orchestra 35th Anniversary symphonic concert』

今年35周年を迎えた東京スカパラダイスオーケストラ(以下スカパラ)が、初のフルオーケストラコンサート『billboard classics Tokyo Ska Paradise Orchestra 35th Anniversary symphonic concert』を5月25日山梨県・河口湖ステラシアターで開催する。指揮と音楽監修はNHK朝の連ドラ『ブギウギ』の主題歌「ハッピー☆ブギ」と劇伴を手がけた、日本を代表する音楽家の一人・服部隆之。ゲストヴォーカルにハナレグミと中納良恵(EGO-WRAPPIN')を迎え、東京フィルハーモニー交響楽団と共に極上の音楽を響かせる。

雄大な富士山をバックに、祝祭のような記念ライヴになる

服部隆之
服部隆之

スカパラはスカをベースにジャズ・ソウル・R&B・ポップスなど、あらゆるジャンルを独自の解釈で交差させ、オリジナリティを追求してきた。様々なアーティストとコラボし、進化を続け、国内外のファンをハッピーなグルーヴで楽しませ続けてきた。

35周年の今年は6月から7月にかけて全国ツアー『35th Anniversary TOUR「Voyage To Paradise」』を、 さらに11月には阪神甲子園球場で『スカパラ甲子園』を開催する。 そんなアニバーサリーイヤーの幕開けとなるのがこのシンフォニックコンサートだ。雄大な富士山をバックにまるで祝祭のようなコンサートになることが想像できる。 このコンサートについて服部隆之とスカパラの北原雅彦(Trombone)、GAMO(Tenor sax)、加藤隆志(Guitar)の4人にインタビュー。リスペクトし合うアーティスト同士からもワクワク感が伝わってきた。

スカパラと服部隆之の素敵な関係

GAMO(Photo/板場 俊)
GAMO(Photo/板場 俊)

今回、スカパラと服部は2007年の『服部良一~生誕100周年記念トリビュート・アルバム~」(2007年/服部克久・服部隆之プロデュース』以来の共演となるが、実はそれより前に小沢健二の名作『LIFE』(1994年)の制作に関わっていたという共通点がある。

GAMO 服部良一さんのトリビュートアルバムの中では、国民的唱歌「青い山脈」を自由にアレンジしてくださいと言っていただきました。スカパラで当時笠置シヅ子さんとか昭和歌謡のカバーをよくやっていて、大好きな曲のひとつなのでお話をいただいて嬉しかったです。

服部 スカパラにしかできないアレンジで、本当にかっこよかったです。うちの親父(克久)が最初に聴いた時「なんだこりゃ」ってビックリして、 でも聴いてるうちにだんだん癖になったみたいで、ずっと聴いていた記憶があります。実はスカパラと僕はその前から一緒にやっていました。 小沢健二さんの『LIFE』というアルバムのレコーディングで、スタジオで顔は合わせなかったものの、僕はストリングスアレンジをやらせていただいて、 北原さんがホーンアレンジをやって、確かそのライヴの時に初めて顔を合わせたと思います。小沢さんの「強い気持ち・強い愛」(1995年)でも僕がブラスアレンジを書いて、スカパラホーンズのみなさんに演奏してもらいました。

服部から見た北原のブラスアレンジ

北原×服部(Photo/板場 俊)
北原×服部(Photo/板場 俊)

その後、服部が劇伴を手がけた映画『みんなのいえ』(2001年)で再び2組は共演している。

服部 僕が『みんなのいえ』(2001年)という三谷幸喜さん監督・脚本の映画で音楽を担当した時も、北原さんにブラスアレンジをお願いしたり、スカパラとはずっとつながっている感覚なんです。

加藤 興味深いのは、僕は北原さんのホーンアレンジしか知らないというか、 スカパラがボーカリストの方をフィーチャリングする時、歌に対してのアレンジ、ホーンのアレンジは北原さんなので、服部さんは北原さんのアレンジはどう感じているのか聞いてみたいです。

服部 この北原さんの風貌からは想像できない緻密さで(笑)、すごく整理整頓されていて、ツボを捉えているというか、気持ちがいいところでストンって入ってくるんです。そのアレンジを僕もたまに参考にさせてもらっています。

北原 いやいや(笑)。でもきれい好きです(笑)。

加藤 こういう話は今まで聞いたことがないので新鮮だし、僕はスカパラに参加したのは後からだったので、そういう視点って面白いなと思って。

「ボーカリストとホーンとフルオーケストラが融合した時にどんな化学変化が起こるのか、それが一番楽しみ」(北原)

ハナレグミ
ハナレグミ

スカパラの9人が生み出す幸せなグルーヴと、60人を超えるオーケストラのアンサンブルがどう共鳴し、どんな音になるのか想像するのが難しいが、想像できないほどの素晴らしいものができあがるということは想像できる。

服部 僕もまだ全然イメージができていません(笑)。

GAMO 服部さんが想像できないくらいなのに、どうなっちゃうんだろう(笑)。

北原 こんな組合せ、普通誰も考えないでしょ(笑)。

加藤隆志(Photo/板場 俊)
加藤隆志(Photo/板場 俊)

加藤 今までスカパラの楽曲にストリングスをプラスするという機会はありましたけど、今回は初めてフルオーケストラと一緒にやることで何が起こるのか、すごく楽しみです。ホーンズの4人はスカパラの中でコーラス、ボーカリストな立ち位置でもあると思っていて。 それを僕らリズム隊が装飾するというか、そこをオーケストラのゴージャスなサウンドでさらに盛り上げていただけると、また新しいインストゥルメンタルの聴かせ方が提示ができるのでは、という期待があります。

北原 今回やって発見できることがたくさんあると思うし、我々もすごく刺激になると思います。

加藤 ホーンズはユニゾンでメロディを奏でるところも多いので、それをひとつの歌のようにメロディとして捉えてもらえると、広がりがありそうだなと思いました。さらにそこにヴォーカルが加わるので、楽しみしかないです。

北原 フルオーケストラとできるなんてなかなかないチャンスだし、それをイメージしてハナレグミと中納良恵さんにオファーさせていただいたので、 ヴォーカリストとホーンとフルオーケストラが融合した時にどんな化学変化が起こるのか、それが一番楽しみです。スカパラが(中納)良恵さん、ハナレグミをイメージして作った楽曲を披露したいと思っていますし、二人の声、歌はオーケストラとすごく親和性があると思うので僕達も楽しみです。

「今回は中納さんもいます。『ハッピー☆ブギ』をスカパラの音で披露できたら最高でしょうね」(服部)

中納良恵(EGO-WRAPPIN')
中納良恵(EGO-WRAPPIN')

中納は服部が作曲とアレンジだけではなく初めて作詞も手掛けた、注目を集めた朝ドラ『ブギウギ』の主題歌「ハッピー☆ブギ」を、さかいゆう、主演の趣里と共に歌っている。ホーンが印象的な曲で、生で聴ける機会は極めて少ないので、スカパラとのコラボで是非聴いてみたい一曲だ。

服部 あの曲は最初中納さんとさかいゆうさんの声をイメージして作って、あとから趣里さんにも参加してもらったんです。 まさか今回のライヴで中納さんとご一緒できると思っていなかったので、しかもスカパラの音であの曲を披露できたら最高でしょうね。

「スカパラとオーケストラ、それぞれがそれぞれに“乗っかる”というだけだと、きっとつまらなくなる」(北原)

「オーケストラの美しい音圧の中で、エッジの効いたスカパラサンドをどう立てていくか」(加藤)

北原雅彦(Photo/板場 俊)
北原雅彦(Photo/板場 俊)

今回はスカパラの曲にフルオーケストラが“寄り添う”とか“支える”というイメージではなく、それぞれの音をどう気持ちよく響かせるかが聴きどころであり、注目したい部分だ。

服部 例えば掛け合いがあった時、オケの音が妙に遠かったりするとつまらないということですよね。

北原 それぞれがそれぞれに“乗っかる”というだけだと、きっとつまらなくなりますよね。

服部 やっぱり生楽器、特にドラムの音量感とストリングスとかの音量感と、ギター、ベースのアンプの音量感のバランスをまず考えますよね。

加藤 オーケストラの美しい音圧の中でも、エッジの効いたいつものスカパラのサウンドをどう残し、そして立てて行くか。 最近各地のアコースティックライヴにスカパラも呼ばれることがあって、その時はいつものスカパラの見せ方ではなく、もう少しジャズ寄りというか、管楽器の生の音がフィーチャーされるようなセットリストが組めないかなと思っていました。 ドラムのアプローチも少し変わってきますが、今回いい機会なので、会場は大きいのでバランスは難しいと思いますが、 例えばビルボードライブ東京でやるとしたらどんな感じの音になるんだろう、ということをイメージしながら選曲していくと、また新しいスカパラの見せ方ができるのかもしれません。そんなことを想像しています。

Photo/板場 俊
Photo/板場 俊

スカパラはライヴハウスからホール、大きなフェス、色々なところでやっているので、場所によってビート感やテンポで曲を決めることも多いです。 大きな会場だと速いテンポのばっかりやると飽きてしまうと思うし、ただやっぱりスカパラのライヴには踊りに来るという方も多いので、そのバランスも大切だと思います。

北原 フェスだと30~40分くらいしか時間がないので、そこはギュッと凝縮したセットリストをいつも加藤が考えてくれます。

加藤 ここ数年フェスに出て感じていたのは、炎天下の中で1日立ちっぱなしという過酷さもあって、なかなか来ることができなかった人も多いと思います。 だから大人も子供も一緒にゆっくり楽しめるフェスがあったらいいのになって思っていたので、今回はきっとそういう楽しみ方ができるライヴになると思います。

初の河口湖ステラシアターは「解放感とまとまり、ちょうどいい音の反響が楽しめるはず」(加藤)

今回の会場、河口湖ステラシアターのステージに立つのは共に初めてだ。気持ちがいい季節に富士山を正面に観ながら、心地いい音楽を楽しめる最高の空間と時間。ファンはもちろん2組とゲストヴォーカルも楽しみにしている。

GAMO 河口湖ステラシアターはスカパラとしては初めての会場なので、本当に楽しみです。

服部 僕も初めてです。

北原 実は僕は山梨県の高校の吹奏楽部の演奏会のゲストで呼ばれて、その時の会場がステラシアターでした。屋根が開いていて、すごく気持ちよかったです。

加藤 完全に野外ではないので、想像するに音が全部散ってどこかに行ってしまわないので、解放感とまとまり、ちょうどいい音の反響があると思います。

「こういう機会には服部さんと一緒に音を奏でられるなんて幸せ」(GAMO)

アニバーサリーイヤーの幕開けの豪華なこのライヴは一回限りのスペシャルなライヴだが、スカパラのグルーヴとオーケストラの美しい音圧、そしてゲストヴォーカルの歌がひとつになる瞬間を想像するだけで心が躍る。是非シリーズ化して欲しい企画だ。

服部 今回の企画で僕をコンダクターに選んでくれたことがとても嬉しいです。もし他の音楽家さんのところに話が行っていたら「えーっ!」ってなっていたと思います(笑)。

北原 こうやって35年やってこれたからこそ、こういう企画もやらせていただけると思うし、しかも大好きな服部さんとできるなんて、本当に嬉しいです。

GAMO こういう機会を、服部さんと一緒に音を奏でられるなんてすごく幸せなことです。

服部 本当は一回やって色々修正して、ブラッシュアップさせながら何回かやりたいですよね。今回はやらない曲もやりたい曲がたくさんあります。

『デビュー35周年記念特別公演 東京スカパラダイスオーケストラ×ビルボードクラシックス at 河口湖ステラシアター billboard classics Tokyo Ska Paradise Orchestra 35th Anniversary symphonic concert』
2024年5月25日(土) 山梨・河口湖ステラシアターOPEN 16:00 / START 17:00
※雨天決行(会場は開閉式の可動式屋根付き音楽堂になります)
出演:東京スカパラダイスオーケストラ
ゲストヴォーカル:ハナレグミ/中納良恵(EGO-WRAPPIN')
指揮・音楽監修:服部隆之
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

『billboard classics Tokyo Ska Paradise Orchestra 35th Anniversary symphonic concert』特設サイト

東京スカパラダイスオーケストラ オフィシャルサイト

服部隆之オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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