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郷ひろみ 110作目の新作に込めた思い――「今を生きるたくさんの人に伝わって欲しい」言葉とは?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

『Hiromi Go Concert Tour 2024 Initial G』
『Hiromi Go Concert Tour 2024 Initial G』

現在全国ツアー中。コンセプトは“王道”

今年でデビュー52年を迎えた郷ひろみの全国ツアー『Hiromi Go Concert Tour 2024 Initial G』(全33公演)が5月25日千葉・松戸森のホール21大ホールからスタートした。“王道”というキーワードを掲げ「誰もが楽しめる内容に」という郷の言葉の通り、世代や性別を超えて誰もが知っている新旧交えたヒットナンバーを軸に構成されたステージだ。昭和、平成、令和と3つの時代に渡って聴き継がれ、歌い継がれてきた色褪せない名曲の数々が、原曲の薫りを失うことなく、“今”の空気感を言葉と音に纏わせ伝える。ただ懐かしさを楽しむだけではなく現在進行形の、最新系の郷ひろみを伝える空間と時間になっている。

ツアー初日に新曲「できるだけ、」を披露

「それから、」(『Hiromi Go Concert Tour 2024 Initial G』より)
「それから、」(『Hiromi Go Concert Tour 2024 Initial G』より)

この日とりわけファンを喜ばせたのは、6月5日に発売された新曲「できるだけ、」を発売前にいち早く披露したことだ。通算110枚目のこの作品は郷自身が「今までにはない曲」と語っているように、400曲以上の候補曲の中から選ばれた、厚いコーラスが印象的な、優しさ溢れるミディアムナンバーだ。ライヴで郷はこの曲を歌い終えると「いい歌でしょう?皆さんと一緒に歌っていける心温まる歌なんです」と客席の反応を体と心で感じながら、手応えを感じていた。キャリア52年、110枚目の作品で新たな代表曲となりそうな楽曲に出会えたことを心から喜んでいた。

400曲以上の候補曲の中から選ばれた、堂島孝平作詞の「できるだけ、」。「郷さんの歌声が光そのもの。満ち溢れるエナジーを感じて、自分自身が励まされるようでした」(堂島)

400曲以上の候補曲の中からこの曲を選んだ理由について郷は「今まで出してきた曲を振り返りながら、これからの方向性の幅を広げることなども考えて決定した」と、過去を振り返ることよりも、現在地に満足しない意識を持ち続け、走り続けてきた郷の表現者としての矜持を感じることができる。全ての人に寄り添う、一緒に歌いたくなる歌詞とメロディ。作曲はこれまで乃木坂46、King&Princeやアニソン等様々なジャンルの楽曲を手がけている山田裕介、そして歌詞はシンガー・ソングライター堂島孝平が手がけた。堂島はこの歌詞について「“寄り添うこと・温もりのあること”をテーマに作詞をしましたが、郷さんの歌声はまさに光そのもので、この薄暗い世界をきっと照らしてくれると思っています。出来上がった曲を聴き、その歌唱から満ち溢れるエナジーを感じて、自分自身が励まされるようでした」と語っている。

「応援歌なんだけどただやみくもに『がんばれ』というのではなく、今立ち止まってしまっている人にもそっと寄り添うような歌詞になっている」(郷)

『Hiromi Go Concert Tour 2024 Initial G』
『Hiromi Go Concert Tour 2024 Initial G』

歌詞のテーマは“HAPPY”。<できるだけ灯しあおう>と、決して押しつけない、優しと強さを感じる言葉から始まる歌詞は、<元気にしてたかい><話を聞くよ><立ち止まるのは間違いじゃないよ>と、同じ目線で寄り添い、共感や共鳴できる言葉が詰まっている。郷は「歌詞の中にある<できるだけ>という言葉は、僕自身もこだわって歌った部分。応援歌なんだけどただやみくもに『がんばれ』というのではなく、今立ち止まってしまっている人にもそっと寄り添うような歌詞になっているので、今を生きるたくさんの人に伝わってほしい」と、背中を押すのではなく、そっと手を差し伸べ、温もりを伝えることで共に灯しあおうと、優しく語りかけている。<遥かなる旅の途中では 悩んだり迷ったりしてもいいから 立ち止まるのは間違いじゃないよ 自分を疲れさせないで>と、山あり谷ありの歌手人生、それでも常に次へと歩みを止めない自身の人生観が反映されているような歌詞は、郷が歌うからこそ、説得力を纏って心に響いてくる。「できるだけ、」の「、」に込められた思いも、酸いも甘いも経験し、様々な歌を歌い届けてきた郷だからこそ、伝えることができる。

MUSIC VIDEOは教会に老若男女が集まり、郷と共に笑顔で歌い、クワイアのような迫力と優しさ、人間の声が持つ力を感じさせてくれる。人を思う気持ちは、相手にとっても自分にとっても大きな力になるんだいうことを改めて教えてくれる。

カップリングの「君じゃなくちゃ」もお気に入りの一曲

カップリングの「君じゃなくちゃ」も郷のお気に入りの一曲だ。どこまでも親近感を感じさせてくれるメロディと<君じゃなくちゃなくちゃなくちゃダメさ ありのままの君じゃなくちゃダメさ>という歌詞が心地いいリズムを生む、HAPPYで真っすぐなラブソングだ。TikTokやインスタなどSNS上に郷が振付動画を上げ、バズっている。6月5日には朝の情報番組「Day Day」(日本テレビ系)で出演者と共に振付を楽しみ、これもSNS上で拡散された。「できるだけ、」と共にライヴでもすでにファンと共に一緒に歌い、踊り、欠かせない曲になっている。

前作109枚目のシングルが<俺は最高 君も最高>と、聴く人の気持ちを鼓舞するロックナンバー「俺は最高!!!」だ。「さぁ行こう!」と「最高!」を掛け、暗いニュースが飛び交うどんよりとしたこの時代を、明るく照らすという意味では、「できるだけ、」も共通している。

「まだ歌っていない曲があるはず」――“レコードデビュー55周年”に向け、柔軟に様々な曲と向き合う

歌への欲――これまでシングルを110枚もリリース、アルバムも合わせると膨大な数の楽曲を歌ってきたが「まだ歌っていない曲があるはず」という思いは、今も強い。心の柔軟性を大切にしている郷は様々な楽曲と向き合い、“今歌うべき歌”を手に、来るべき70歳、そして2027年の“レコードデビュー55(GO GO)周年”という大切な年へ向け、旅を続けている。

郷ひろみ オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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