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城 南海 大切な曲を3人の音楽Pとセッション。15周年を迎え“深化”した歌が生む感動

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

音楽シーンを代表するサウンドメーカーが紡ぐスペシャルアレンジで、アーティストが今歌いたい、歌うべき曲を一流のミュージシャンたちとセッションするライヴ番組『Sound Inn S』(BS-TBS)。

デビュー15周年を迎えた城 南海が、大切な3曲を一夜限りのアレンジでセッション

7月20日(土)の放送にはデビュー15周年を迎えた城 南海が登場。オリジナル曲とカバー曲を3曲披露し、その優しい歌声、圧巻の歌唱力、そして進化を続ける豊かな表現力を、アレンジを手がけた音楽プロデューサー陣も改めて絶賛していた。シンガー・城 南海のこれまでとこれからを存分に感じることがセッションだ。

「ずっとカバーしたかった」名曲「嘲笑」を、斎藤ネコのアレンジで披露

一曲目は城が「ずっとカバーしたかった」というビートたけし「嘲笑」(作詞:北野武/作曲:玉置浩二)を、斎藤ネコのアレンジで披露した。シンプルな言葉とどこまでも優しいメロディが心にスッと入ってくるこの曲は、これまで多くのアーティストがカバーしているが、城も念願かなって実現した。33人という大編成のバンドが奏でる音は、幾重にも重なるストリングが美しく、城の歌に寄り添いながらまるで光を当てるような演奏だ。城は<ぼくらが昔見た星と ぼくらが今見る星と なんにも変わりがない それがうれしい>という歌詞を、ひと言ひと言丁寧に愛おしむように伝える。まさに沁み渡るように感動が広がる。「バンドの皆さんが奏でる音一つひとつが星のようで、満天の星々を漂っているような感じで歌うことができました」と感激した様子だった。

初めて歌詞を手がけた、故郷・奄美大島への思いを込めた「紅」を、本間昭光の郷愁感薫るアレンジで披露

二曲目は城が初めて作詞を手がけた「紅」(2009年)を、本間昭光のアレンジで歌った。この曲は城が上京してきて初めて観に行ったケルティック・ウーマンのコンサートで、ケルト音楽と奄美の音楽が似ていると感じ、アイルランド民謡に歌詞を付けた。アイリッシュ・ハープとティン・ホイッスルを使った郷愁感漂うアレンジで、「島を離れる時の気持ちや島の風景を懐かしみながら書きました」という歌詞を歌うと、奄美の柔らかな風を運んでくるような、そして誰の心にもある故郷を思い出せてくれるような、極上の気持ちよさを感じさせてくれる。歌い終えた城は「ポップスとケルトがミックスして心地よかったです」と語っていた。今回が城と初共演の本間はその歌について「声も楽器のひとつで、城さんの声はしっかりとした音程感の、完成された楽器。そこに言葉が伝わる表現力が加わって素晴らしいのひと言。どんなアレンジでも歌ってくれるだろうという安心感しかない」と絶賛していた。

これまで城は、故郷・奄美大島のよさをたくさんの人に知って欲しいと、奄美民謡、奄美の集落ごとに存在するシマ唄と共に、様々な歌を歌ってきた15年だった。以前インタビューした際、15年間の中で大きなターニングポイントとして『THE カラオケ★バトル』(テレビ東京)に出演したことを挙げてくれた。あの番組で当時最高得点を叩き出し“絶対女王”として城 南海の名前と音楽が、お茶の間に浸透していった。「“奄美代表”と言ってもらって、そこでグイン(コブシ)を使って歌うと、奄美の人に喜んでもらえるし、島のよさを伝えられると思いました」と語っていた。

そして「カバーって難しくて、でも番組スタッフやファンの方の期待に応えたいという思いだけで頑張りました。そこからカバーアルバムを出したり、ライヴでも歌ったりしていたら、逆に城 南海のオリジナルをもっと聴きたいと言って下さる方が増えてきました」と、キャリアの中で大きな“きっかけ”になったと教えてくれた。

カバー曲でさらに表現力を鍛え、2019年頃からは「それまでは大きな愛や人生について外に向けて歌っていた気がします。でももっと自分と向き合って、自分の内側と対話して歌っていきたい」と感じ、“自分らしさ”にフォーカスしていった。そんな中で15周年の今年、大切な曲と巡り合った。

リスペクトする笹川美和から贈られた「爛漫」を、船山基紀のアレンジで披露

それがこの日3曲目に披露した「爛漫」だ。城が「ずっと励まされてきた」とリスペクトする笹川美和が、城の15周年記念アルバム『爛漫』(1月24日発売)のために書き下ろした作品で、この日は船山基紀のアレンジで披露した。この曲は笹川の目に映る城 南海という一人の人間、シンガーのリアルな姿が描かれている。城も「笹川さんが、これからも爛漫の花が咲くように歌い続けてねっていう思いを込めて書いてくださったので、今日はバンドの皆さんの音がまるで花が咲くような華やかな感じで、楽しく歌わせていただきました」と語っているように、まるで大切なものを抱きしめるように情感豊かに歌った。

昭和、平成、令和と3つの時代に渡って数々のヒット曲を生み出してきた名匠・船山基紀が思わず「なんでそんなに歌うまいの?」と本人に聞いてしまうほどのパフォーマンスだった。そして「ピッチが完璧で、そこに乗せる感情が豊かで天才的。感激しました」と、この日が初対面だった城の歌を絶賛していた。

全てのセッションを終えた城は「音楽ってこういうことだなって改めて感じました。みなさんと音で会話して一緒に奏でて、この楽しさがひとつの形になって、たくさんの人に届くといいな」と感動した様子だった。

城 南海のパフォーマンスが楽しめる『Sound Inn S』は7月20 日(土)、BS-TBS(17時30分~)で放送される。またTVerでは未公開部分を追加した特別バージョンが見逃し配信される(配信期間7月21日12:00~8月17日17:29)。

『Sound Inn S』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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