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伊藤隼太選手が復調アピール!満塁走者一掃の逆転二塁打《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
20日のヒーロースピーチは伊藤隼選手。監督を巻き込んでの話にみんな笑っています。

 ウエスタン・リーグ首位の座を保っている阪神は、18日から鳴尾浜に2位の広島を迎えて3連戦を行いました。始まる前に3.5ゲームの差があったので、いわゆる“首位攻防戦”とは言えませんが、それでも3つとも落とせばゲーム差は0.5と一気に縮まります。しかも初戦は1点差ながら13安打もされて負けたため、嫌な感じがしたのは確かですね。

 19日は阪神が5安打、広島が4安打と投手が頑張った試合で、江越選手の2点タイムリーで先制した阪神が逃げ切った形。16日の中日戦(甲子園)から調子が上向いてきた江越選手は20日に1軍昇格しました。また広島もドラフト1位ルーキー・小園選手が20日に昇格して初打席で初安打。鳴尾浜でも初戦に3安打、翌19日には二塁打を放っています。

 さて20日、1勝1敗で迎えた3戦目は1軍から植田選手と長坂選手が出場。呂投手とモンティージャ投手の先発で始まり、1回に阪神が先制します。ところが5回にサンタナ選手の満塁弾で逆転され、そのまま終わるかと思いきや8回に打者9人の猛攻で再逆転!代打で満塁の走者を一掃する二塁打を放った伊藤隼選手が、この日のヒーローです。9回に1点返されるも、飯田投手の三振締めが最高でした。

 なお21日からはタマスタ筑後と久留米でソフトバンク3連戦に臨んでいる阪神ファーム。きょう21日のナイトゲームは、1回に1点を取られたものの9回に押し出し四球で追いつきました。しかし…その裏にサヨナラ負けを喫したようです。1軍もファームも疲れる試合が多いですね。

 では20日の広島戦を振り返ります。

《ウエスタン公式戦》6月20日

阪神-広島 17回戦 (鳴尾浜)

 広島 000 040 001 = 5

 阪神 100 000 05X = 6

◆バッテリー

【阪神】呂-歳内-尾仲-○高橋聡(1勝)-福永-S飯田(2勝2敗2S) / 長坂-小宮山(8回~)

【広島】モンティージャ(7回)-●矢崎(1勝2敗)(1/3回)-高橋樹(2/3回) / 坂倉-白浜(8回裏)

◆本塁打 広:サンタナ2号満塁(呂)

◆二塁打 神:陽川2、熊谷、伊藤隼、ナバーロ 広:下水流

◆盗塁 広:赤松(2) 

◆打撃  (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]二:植田  (3-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .222

〃遊:小幡  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .224

2]遊二:熊谷 (2-1-0 / 0-2 / 0 / 0) .226

3]中:俊介  (4-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .271

4]左一:陽川 (4-3-2 / 0-0 / 0 / 0) .279

5]右:中谷  (3-1-0 / 1-1 / 0 / 0) .238

6]指:坂本  (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .180

〃打指:伊藤 (1-1-3 / 0-0 / 0 / 0) .214

7]一:ナバー (3-2-1 / 1-1 / 0 / 0) .168

〃走左:板山 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .205

8]捕:長坂  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .237

〃捕:小宮山 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .125

9]三:森越  (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .184

 ※伊藤=伊藤隼

 ※ナバー=ナバーロ

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ※

呂  4.2回 94球 (9-7-3 / 4-4 / 3.91) 146

歳内 1.1回 20球 (0-1-0 / 0-0 / 2.50) 149

尾仲  1回 21球 (1-1-0 / 0-0 / 5.14) 148

高橋聡 1回 10球 (0-1-0 / 0-0 / 7.50) 141

福永 0.2回 24球 (2-0-2 / 1-1 / 0.72) 152

飯田 0.1回 4球 (0-1-0 / 0-0 / 2.70)(125)

         ※チーム測定の最速

       

《試合経過》※敬称略

 打線は1回、植田が内野安打、熊谷の二ゴロで走者が入れ替わり、熊谷は二盗失敗。2死で走者がなくなりましたが、俊介の中前打と続く陽川の二塁打(センターが打球を見失う)で1点を先取しています。2回は三者凡退、3回は2死から四球を選んだ熊谷が二盗失敗で3人で終了。4回は1死から陽川と中谷が連打、2死後にナバーロの四球で満塁と攻めるも追加点はありません。

先発の呂投手。5回で7三振を奪いましたが、9安打で4失点。
先発の呂投手。5回で7三振を奪いましたが、9安打で4失点。

 先発の呂は1回、2回と2死からヒットを許しながらも、ともに変化球で三振を奪って無失点。3回は三者凡退でした。4回に1死からメヒア、サンタナ、坂倉の3連打を許したものの、後続は連続三振で断って0点!しかし5回、簡単に2死を取った呂が庄司に左前打されて崩れます。次の下水流に左翼線二塁打を浴び、メヒアを申告敬遠して2死満塁。続くサンタナは初球の真っすぐ(140キロ)をレフトへ…。第2号の満塁ホームランで4対1と逆転されました。

 次いで坂倉にも右前打を許し、暴投で二塁へ。正隋と林に四球を与え、再び2死満塁として呂は降板です。代わった歳内は永井を三ゴロに打ち取って打者一巡の攻撃を終わらせ、6回も続投。1番からをしっかり三者凡退で片付けています。7回は尾仲が登板して2死から坂倉に許した左前打のみで無失点。

試合後のヒーロースピーチは伊藤隼選手(右)。左端は勝ち投手となった高橋聡投手です。
試合後のヒーロースピーチは伊藤隼選手(右)。左端は勝ち投手となった高橋聡投手です。

 なお打線は逆転された直後の5回、連続三振で2死となってから、また四球を選んだ熊谷が3度目の盗塁を試みるも、坂倉に刺されてアウトになっています。今度こそセーフだろう!というタイミングだったので残念でした。6回は三者凡退、7回はナバーロの右前打のみで反撃の糸口をつかめません。しかし小宮山と高橋聡のバッテリーに代わり、ビシッと三者凡退で片付けた8回。その裏に打線は打者9人で計5安打(そのうち4本が二塁打)を集めて再逆転を成功させます。

9回に登板した福永投手。四球と連打で1点を失っています。
9回に登板した福永投手。四球と連打で1点を失っています。

 広島2人目の矢崎から1死後に熊谷がレフトフェンス直撃の二塁打!あと少しで第2号かという見事な当たりでした。俊介はショートへの内野安打で1死一三塁となり、陽川が三塁線を破るタイムリー二塁打で2点差。中谷は粘って11球目で四球を選び満塁として、ここで代打・伊藤隼がコール、広島は高橋樹に交代します。伊藤隼はカウント1-2からの4球目、142キロの真っすぐをレフトへ!走者一掃のタイムリー二塁打で逆転すると、ナバーロも左中間へのタイムリー二塁打を放って、この回5点!6対4となりました。

試合終了で呂投手(左)とタッチする飯田投手(左から3人目)。
試合終了で呂投手(左)とタッチする飯田投手(左から3人目)。

 9回は福永が登板。前日も最後を締めくくったのですが、この日は先頭の庄司に11球粘られ四球を与えてしまいます。下水流には初球を右前打、メヒアにも初球を打たれ左前タイムリーで1点差。サンタナは遊ゴロ併殺打で2死三塁となるも、坂倉に四球を与えたところで降板。代わった飯田は代打・岩本を変化球2つで追い込み、次のボールで坂倉の代走・赤松がスタート。二、三塁となって、最後はまた変化球(125キロ)で空振り三振!試合終了です。

「今年一番のゲーム」と監督

 試合後、平田監督の話はまず「ことしイチのゲームやね」という言葉から始まりました。殊勲の伊藤隼選手にも「やっとここに来て、隼太が“らしく”なってきた」と分析したあと「新井コーチが左ピッチャーでも代えないでくれって言うから。俺は代えたかったんやけど(笑)。左ピッチャーでも大丈夫だって(新井)良太が言うもんだからさ」と取材陣を笑わせ、再び「ちょっと上向いてきたわ」と伊藤隼選手の状況に言及しています。

8回に再逆転して広島に勝ち越し!試合後も笑みがこぼれます。
8回に再逆転して広島に勝ち越し!試合後も笑みがこぼれます。

 また「陽川はずっといいよ。ここんとこ。ああいう低いゴロ。フライじゃなくて、強いライナーやゴロを打つつもりでいいねん。そのうち角度が上がってくるから。俊介はずっと、いい仕事をしてくれている。春先からずっと、ここっていうところでいい仕事してくれている。つなぎやバントや、きのうもデッドボールやろ?そういうところも俊介のいい仕事」と、働き盛りの選手の仕事ぶりを評価。

満塁弾を浴びた時は、引っくり返せるとは思いませんでした。
満塁弾を浴びた時は、引っくり返せるとは思いませんでした。

 続いて投手陣について。「呂はまだ打たれてええねん。メヒアのところ、あえて歩かせてサンタナと勝負させたらボカーンといかれて。試合後に本人にも話をしたけど、インコースの真っすぐを自分で決めていって打たれたのも、それはもう勉強や。ただ呂には、そのあと切り替えてバッター3人を何とかしてほしい。ホームラン打たれたあと。しゃあないやん。そこを切り替えられずにいったところが、まだまだ。ショックを引きずっている」

 前日は9回に登板して三者凡退で締め、4セーブ目を挙げた福永投手ですが、この日は乱調でした。「福永も難しいとこやな。きょうは自分の出番ないと思っていたのかどうか、わからんけど。そのままだったら牧、1点差なら石井とか言われて、自分はないかな~と思っていて(出番が)来る時の気持ちの整理とか。福永もまだまだ勉強よ。先頭バッターのフォアボールだけ。打たれるのはええねん」と、課題を挙げています。

先発の呂、ピンチで好救援の歳内&飯田

調子がよかっただけに5回途中降板を悔やむ呂投手。
調子がよかっただけに5回途中降板を悔やむ呂投手。

 では選手のコメントです。呂投手は5回2死から、まさかの逆転満塁でした。「2アウトを取ってから次に打たれたので…早くアウトを取りたいと焦って、また打たれた。配球というか細かい部分で冷静に考えきれなかった」

 3回までは「ストライク先行で、変化球もバッター(のスイング)を誘うキレのあるボールを投げられていたので、楽にピッチングができていました」と本人も納得のようです。しかし5回は「あとは後ろのピッチャーに任せましたが、自分の調子がいい時に限って、小さなことをしっかりできないので長いイニングを投げられない」と呂投手。そこが自分でも悔しいところでしょう。

写真は5月29日のオリックス戦での歳内投手。
写真は5月29日のオリックス戦での歳内投手。

 その5回に呂投手をリリーフした歳内投手。厳しい場面での登板でしたが「2死だったので」と淡々。準備の時間はあった?「はい。きょうの、あれぐらいなら。満塁になったので、その段階から作っていました。急って感じではないですね」

 次の回も続投して三者凡退!「その(3人の)あと4番、5番、6番と続くので、前にランナーを出さないよう。メヒアの前に溜めないようにと。ストライク先行でいけたし、変化球でカウントを整えられたので、そこはよかったと思います」。そう振り返ってから「上でもそういう場面で投げることがあるので。1軍でやるために、と想定しながらできればと思っています」と締めくくりました。

こちらも5月29日のオリックス戦。飯田投手です。
こちらも5月29日のオリックス戦。飯田投手です。

 1点差に迫られた9回2死一、三塁で登板した飯田投手。投げたのは4球で、すべて変化球です。「結果はよかったですね。反応を見ながら、真っすぐはいらないかなと思って。スライダーを2つ使って追い込んだ段階でバッターの反応を見るんですけど、ないんじゃないかなと思って最後もスライダーでいきました」

 そして「上でもワンポイントの時にやっていたので。しっかり冷静な考えで投げられたのはよかったかなと思います。あくまで状況を見ながら、ですけどね」と話す飯田投手。ここぞの時、頼りになる技と経験と言えますね。1軍での出番が待ち遠しいです。

アドリブで監督賞を要求?伊藤隼選手

平田監督の方を向いて「何かいい物がもらえると聞いたんで」と監督賞を要求する伊藤隼選手。
平田監督の方を向いて「何かいい物がもらえると聞いたんで」と監督賞を要求する伊藤隼選手。
「おいおい!何を言ってるんだ。俺は知らないぞ」と突っ込む平田監督(もちろんアテレコです)。
「おいおい!何を言ってるんだ。俺は知らないぞ」と突っ込む平田監督(もちろんアテレコです)。

 野手編にまいりましょう。伊藤隼選手はヒーロースピーチに指名され、さすがの話術を披露しています。

 「えー皆さん、本日は暑い中、応援ありがとうございました。これまで、まったくと言っていいほどチームに貢献できていなかったので、このように勝利に貢献できて嬉しいです。とても緊張した場面だったんですけども、ここで打ったら監督から何かいい物がもらえるというふうに聞いたので、打つことができました」

 そこまでしゃべって、平田監督が立つ方を見てニヤニヤ。すると監督は、伊藤隼選手の方を指差して何か突っ込みました。おそらく「そんなこと言ってないよ~」ってところですかね?もちろん2人とも笑っています。「今後とも鳴尾浜の方にも足を運んで、応援してください。ありがとうございました」と締めたあとも平田監督が突っ込み、伊藤隼選手が笑い、という感じで終了。

してやったり?の伊藤隼選手(左)。大笑いしていた陽川選手(右)もヒーロー級の活躍でした。
してやったり?の伊藤隼選手(左)。大笑いしていた陽川選手(右)もヒーロー級の活躍でした。

 囲み取材で伊藤隼選手は「左ピッチャーが苦手っていうわけでもないので、そんなに意識していなかった」と言い、初戦の三塁打や前日のマルチヒット、この日の二塁打と調子が上がってきたのでは?という問いに「感覚的なところも、やっとではありますが…よくなっているので継続して。こっちでキッチリ結果を出し続けることが上にいく近道だと思う」と答えました。「やっと」という言葉に力が入っていたような気がします。

 そうそう、スピーチで言っていた「あそこで打ったら監督から何かもらえる」というのは?「あれはノリです(笑)」。そんな話があったわけではないんですね?「ないです。ノリで言っただけなので」。そこでもまた、とても楽しそうに笑うヒーローでした。

陽川選手と熊谷選手も逆転に貢献!

 タイムリー二塁打2本を含む3安打の陽川選手。「最初にラッキーなヒットがあって、流れというか。最後は負けていて、みんながつないでつないで回ってきた場面だったから、僕も何とかつなごうと思っていた」。先の2本は真っすぐを打ったもので、最後はカウント2-1からの変化球(133キロ)に対応しています。「ストライクゾーンに来たボールを真っすぐのタイミングで待っていて、というのを今やっているので、それができたと思います」

走攻守でいいアピールを続けている熊谷選手。写真は5月7日の中日戦のものです。
走攻守でいいアピールを続けている熊谷選手。写真は5月7日の中日戦のものです。

 8回の逆転劇は、1死ランナーなしで放った熊谷選手のレフトフェンス直撃二塁打から始まったもの。ナイスバッティングでした。この日は1回、3回、5回と塁に出て、すべて二盗を試みるも失敗。ただし2つ目と3つ目はきわどいタイミングで、本人も「セーフだと思いましたねえ」と苦笑です。特に5回はアウトの判定に必死でアピールし、しばらく二塁ベースから離れなかったほど。よほど手応えがあったんでしょう。

 でも、なかなか3打席連続で企てる機会もないので、いいトライでしたね。また走りまくってください。そう告げると熊谷選手は「あの(二塁打の)打球がフェンスを越えるように頑張ります!」と言ってニヤリ。そっちですか(笑)。5月25日に放ったプロ初ホームランはナゴヤ球場での中日戦だったので、今度は鳴尾浜か甲子園でお願いします。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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