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動物を愛する天皇ご一家がプライベートで参加されたフォーラム 耳慣れない「伴侶動物」とは?

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
天皇ご一家と愛犬・由莉(写真:読売新聞社/アフロ)

先月24日、天皇ご一家は「一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム」主催のイベント、「どうぶつとの暮らしを考えるフォーラム」に私的に参加された。

以前もご家族でこのフォーラムに参加されており、動物と人間の関わりについて強い関心を持っていらっしゃることが分かる。

天皇ご一家が参加されたこのイベントがどのようなものだったのか、参加された方々に取材し、具体的な内容を伺ったところ、興味深い事実を知ることが出来た。

◆天皇ご一家がお聞きになった講演とは?

このフォーラムは、人と動物との絆をテーマに、専門家による各種の講演やシンポジウム、実習などが行われる学術大会で、9月23日・24日の2日間にわたって開催された。

その中で天皇ご一家が出席されたのは、88歳の現役獣医師であり「赤坂動物病院」名誉院長の、柴内裕子先生の講演だったという。

テーマは、愛玩動物としてのペットという枠を超えて、人間と動物が心を通わせ、大きな信頼関係で繋がることの意義。それは、家族の一員、社会の一員として、大切な役割を担っている、あるいは唯一無二の家族と定義する、「伴侶動物」の日本での、そして世界での活躍、将来への願い等を述べるものだったという。

その講演の中心を成すのは、柴内先生の幼い頃の経験であった。

小学生の時に終戦を迎えた柴内先生は、戦時中、動物好きの家族だったことから、家で犬や猫、鶏、孔雀、アヒルなどと暮らしていたが、戦火が激しくなるにつれ、飼っていたポインターやシェパードといった大型犬は、軍用犬と称して強制的に徴用され、鶏小屋にいたチャボは空襲で焼け死んだ。

家族に寄り添ってきてくれた動物たちは、まさに家族に欠かせない「伴侶動物」であったという。悲しい別れをしなければならなかった戦争体験は、柴内先生が獣医学の道を選ぶきっかけとなった。

こうしたお話に熱心に耳を傾けておられた天皇ご一家にとって「伴侶動物」は、すぐ身近で暮らしている。

その始まりは、赤坂御用地に暮らしていらっしゃった皇太子同妃時代にさかのぼる。ある日、御用地内に野良犬が迷い込み、産んだ子犬のうちの2頭を、皇太子ご夫妻が飼うようになられた。

名前は「ピッピ」と「まり」。この2頭が天寿を全うした後は、天皇ご一家は現在も御所内で暮らしている愛犬の由莉や猫たちに、愛情を注いで育てていらっしゃる。いずれも保護された動物たちだ。

◆天皇ご一家の「伴侶動物」たち

平成10年12月、お誕生日に際して行われた記者会見で、雅子さまはこんなことを話された。

「今、犬がおりますけれども、この犬がいるというのも夫婦の仲にとって、とても良いように思います。よく『夫婦喧嘩は犬も食わぬ』と申しますけれども、喧嘩の種は割とよく拾って食べてくれるような気がいたします」

愛子さまご誕生前のお二人にとって、ワンちゃんたちの話題は心に平穏をもたらしてくれる存在だったことが伝わってくる。

そして愛子さまもまた、学習院初等科の卒業文集で、身近な動物たちについて次のように綴られた。

「私の家では、犬を一頭と猫を二頭飼っています。みんな保護された動物です。前に飼っていた二頭の犬も保護された犬でしたが、どのペットも、可愛がって育てたらとても大切な家族の一員になりました。動物がいることで癒されたり、楽しい会話が生まれたりして、人と動物との絆は素晴らしいものだと実感しています」

天皇ご一家の団らんには犬や猫たちが加わり、和やかで笑顔あふれる時間が流れているのだろう。ともに暮らす動物たちは、家族同然の存在であり、まさに「伴侶動物」として支えてくれているのだ。

◆日本は「伴侶動物」への理解が進んでいない

しかし、日本はまだ「伴侶動物」という考え方が、社会的に立ち遅れているという。たとえばアメリカでは、飛行機に乗る時に、その乗客にとって精神安定上必要だと認められれば、「伴侶動物」のヨークシャーテリアを抱いて乗っても問題ない。

ただし、その犬は適切な訓練を受け、人に迷惑をかけないよう教育を受けていることが前提となる。日本で理解を進めるためには、飼い主がただ可愛がるだけでなく、犬に必要なトレーニングを行うことも求められるだろう。

2019年、両陛下は秋田県を訪問した際、動物保護センターで保護犬たちと触れ合われた。リードをつけてのお散歩体験をする時、雅子さまはシーズーに「みよちゃん」と名前を呼びかけながら、息をぴったり合わせて歩かれた。

日頃から愛犬の由莉を教育し、育ててこられたご経験が生かされたのかもしれない。

天皇ご一家は講演をお聞きになって、人と動物との絆についてより考えを深められたことだろう。動物をペットとして可愛がるだけでなく、生涯の大切な伴走者として捉えることで、動物と人間の心豊かな物語が育まれていくはずだ。

天皇ご一家が今回のようなイベントに参加されたことで、「伴侶動物」に対する国民の認識も高まっていくのではないだろうか。

「天皇陛下と愛子さまが鑑賞された「雅楽演奏会」 筆者も味わった古式ゆかしき世界とは?」

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b8b5eefc4eb8f20738c61f1e321c4e0244838e90

「愛子さまの『海外留学』はどうなる? 『いつから』『期間は』 ヒントは『両陛下の留学経験』」

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/bc7a8f12c5cf6d9e9ce5fe9693a64208f8918b11

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。西武文理大学非常勤講師。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)などがある。

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