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両陛下の仲睦まじい地方公務 「お二人のお召し物」に込められた気遣いとは?

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
「国民文化祭」などの開会式に出席された天皇皇后両陛下(写真:毎日新聞社/アフロ)

今月は「国民スポーツ大会」や「国民文化祭」と「全国障害者芸術・文化祭」の開会式に出席され、天皇皇后両陛下は地方公務が相次いだ。

令和になってから両陛下がご一緒に公務にお出ましになる時は、決まって陛下のネクタイの色と雅子さまのスーツの色を合わせていらっしゃり、お二人の姿から仲の良さが伝わってきて、こちらまで微笑ましくなる。

たとえば、一口にグリーンと言っても、落ち着いた深緑なのか、若葉のような萌黄色なのか、それとも淡いパステル調のミントグリーンなのか、たくさんの種類があるが、両陛下は色味も全く同じ。お二人でいろいろ話し、色を決められていることが伝わってくる。

この“お召し物の色”には、実は訪問される地域に配慮された気遣いが隠されているように思うのだ。

◆「国民スポーツ大会」開会式での明るいグリーン

10月5日、両陛下は佐賀県で開催した「国民スポーツ大会」の開会式に出席されたが、その時の陛下のネクタイと雅子さまのスーツの色は、明るいグリーンであった。

筆者が調べたところ、佐賀県のシンボルカラーは明るいグリーンで、色味が合致する。この色は「佐賀シンフォニーグリーン」と名付けられており、豊じょうな佐賀の平野、豊かな広がりの輪づくりのエネルギーなどを表現しているという。

両陛下が事前にこの情報をお知りになって、装いを通して佐賀県の人びとに敬意を示そうとこの色を選ばれたのかもしれない。

そう思ったのは筆者だけではなく、山口祥義知事が「佐賀県のシンボルカラーの緑色をイメージしていただいたのかな」と喜んでいたことが、地元の新聞記事に載っていた。

両陛下が身に着けていらっしゃった明るいグリーンの色は、ご本人たちはそのことについて話されてはいないものの、佐賀県のシンボルカラーを意識されたことは間違いなさそうだ。

◆「国民文化祭」と「全国障害者芸術・文化祭」開会式での鮮やかなブルー

では、10月14日に両陛下が出席された、岐阜県で開催した「国民文化祭」と「全国障害者芸術・文化祭」の開会式では、どんな色をコーディネートされていたのかというと、陛下はブルーのネクタイ。そして雅子さまも同じく色鮮やかなブルー、いわゆるロイヤルブルーのように感じた。

この色も岐阜県と何かゆかりがあるのではないかと思い、早速、調べたところ、岐阜県にはシンボルカラーはなく、県章はグリーンなので色が異なっている。

しかし、岐阜県といえば、長良川の鵜飼いが広く知られており、皇室とのつながりも深い。鮎が生息する長良川の清流は、秋の紅葉を映し様々な色を映すのだろう。そうした豊かな鏡のように透き通った清流をイメージしたのではないだろうか。

今回の行事は「清流の国ぎふ」文化祭2024という名称であることからも、清流を思わせるブルーにされたのかもしれない。

しかし、陛下のネクタイの色も、雅子さまのスーツの色も、見れば見るほど、少し紫がかっているように感じる。報道される写真によって色は微妙に違って見えることがあるが、濃くて紫がかった青色に見えるのだ。

岐阜県に関してリサーチしているうち、羽島市に樹齢300年以上といわれる、県天然記念物の藤棚があることが分かった。5月初旬に美しい紫色の花をつけるようだ。こうした岐阜県に関する情報をいろいろ調べて、お二人で話し、今回のお召し物を選ばれたのだろうか。

とは言っても、あくまで推測の域を出ず、無理にこじつけていると言われてしまいそうだが、何かしらの意図がなければ、あのハッと目を奪われてしまう鮮やかなブルーのスーツをお召しにはならないはずだ。

◆翌日は淡いピンクのスーツだった雅子さま

岐阜県を訪れた二日目の15日は、子どもたちが木に親しむ教育施設「ぎふ木遊館」を訪問し、名誉館長の竹下景子さんが案内していたが、その際の雅子さまのスーツは淡いピンク色。まさに岐阜県の県花である「れんげ草」の色であった。

やはり雅子さまは、岐阜県の人びとへ寄り添い、親しみと敬意を示されていたのだろう。

来月10日には、両陛下は「全国豊かな海づくり大会」に出席するため、大分県を訪問される予定である。

その時、陛下のネクタイの色と雅子さまのスーツの色は、どんな色をチョイスされるのだろうか。

ちなみに、去年、北海道で開催された全国豊かな海づくり大会では、両陛下は大会のテーマである海にちなんで、紺と白のマリンカラーでコーディネートされていた。

お召しになった色から、そこに込められた意味を探っていくことも、皇室の方々のご活躍とともに、筆者にとって楽しみとなっている。

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2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。西武文理大学非常勤講師。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)などがある。

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