フランク三浦裁判の判決文が公開されました
昨日書いた「フランク三浦」商標の審決取消訴訟の判決文が裁判所サイトで公開されてました。
新聞報道では、「知財高裁は"三浦"が日本人を連想させることや、フランク・ミュラーの腕時計の多くが100万円超であるのに対し、"フランク三浦"は4000~6000円である点などから"混同は考えられない"と結論付けた」と書いてありました。これも論点ではあるのですが、判決のポイントは、外観(注記:文字商標としての外観の話です、時計の外観の話は関係ありません)が全然違うので「フランク三浦」と「フランク・ミュラー」は商標として非類似というものでした(商標の類似・非類似は、称呼・外観・概念を総合的に見て取引の実情を考慮して判断することになっています)。
また、ちょっと個人的に気になっていた、フリーライドや希釈化(ダイリューション)に対するフランク・ミュラー側の主張については、そもそもフランク三浦のパロディネタ時計の販売行為が商標の登録の後の話なので失当であると裁判所は述べています(商標の査定の是非の問題ではないので、争うなら不正競争防止法で争えと暗に言おうとしているようにも思えます)。
念のため再度説明しておくと、今回の裁判は、「フランク三浦」の登録商標(文字商標)の正当性が知財高裁でお墨付きを得たということです。フランク・ミュラーに外観がそっくりな時計を売ることについてお墨付きが得られたということではありません。
商標権を持っているからといってその商標を使って他の著名製品と類似した商品を販売することが自動的に認められるわけではありません。これは考えてみれば当たり前で、たとえば「ホゲホゲ」という登録商標を所有する人がホゲホゲという商品名を使いさえすれば高級ブランドそっくりの商品を自由に売れるかというとそんなことはありません。
実際、フランク三浦とフランク・ミュラーの製品は近くで見ればさすがにわかるでしょうが、遠目では間違えるくらいには似ています。フランク・ミュラー側が不正競争防止法(2条1項1号または2号)で争える余地は十分にあるでしょう。
1号ですと、フランク・ミュラー側は周知性と顧客の混同の発生を立証しなければなりません、2号ですと著名性(周知性より上のレベル)を立証しなければなりません。なお、周知性については、今回の訴訟で知財高裁に認定されていますので、不正競争防止法の裁判でも認められる可能性が高いかと思われます。
時計の商品形態そのものが商品等表示に当たるかについては、当たるとのが判例いくつかあります。たとえば、カルティエを原告とする裁判では不正競争防止法による差止めが認められています。
「フランク三浦」側は公式通販サイトで、製品バリエーションも増やしてかなり堂々と販売を行なっており、知る人ぞ知るネタ製品としてのレベルを超える状態になっています。フランク・ミュラー側としては、今回の審決取消訴訟により「今まではパロディ商品として大目に見てきたが、今後は厳格に対処させてもらう」と態度を変えてくる可能性もあるかもしれません。
まあ、大阪ギャグ感満載のフランク三浦側としては本家に訴えられて賠償金を支払うことになっても「ネタとしておいしい」と考えるのかもしれませんが。