フランク三浦裁判に思う
ちょっと前から「フランク三浦」という高級腕時計フランクミュラーのパロディネタ製品が話題になっていましたが、これに関して「<知財高裁>"フランク三浦"認める…ミュラーと区別できる」というニュースがありました。
とのことです。
テレビでは「フランクミュラーがフランク三浦を訴えた」と言っていましたが、正確に言うと、「フランクミュラー側がフランク三浦の登録商標に無効審判を請求して無効にしたのに対して、フランク三浦側がそれを取り消すよう訴え(審決取消訴訟)、勝訴した」ということです。フランクミュラー側は、最高裁に上告するか、別の理由で無効審判を請求するしかないため、フランク三浦商標の登録は揺るがない可能性が高そうです。
まだ判決文が公開されていないので、公開次第追記するかもしれません。
なお、もともとの無効審判の審決は特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の審決速報のメニューから審判番号2015-890035を入力すると見ることができます(固定リンクが張れないので大変不便です)。審決は「フランクミュラー」と「フランク三浦」が商標として類似することを前提にしていますので、審決取消訴訟で類似性が否定されると全部ひっくりかえってしまいます。
商標の類似・非類似の判断は「取引の実情を考慮する」こととされていますので、今回の知財高裁の判断もあり得るものです。とは言え、不正競争防止法では、シャネルのマークを使ったスナックが敗訴したケース(場末のスナックを高級ブランドと混同するわけがないという主張が認められなかった)もありますので、不正競争防止法だとまだ戦う余地があるかもしれません。(追記:今回のケースでは両製品の外観がかなり類似しているので文字商標の話とは別に類似性が認められる可能性が高いと思います)。
ここまでは法律的議論ですが、以下は私の個人的感想です。
パロディの権利、いわば、他人(特に権威ある他人)を茶化す権利は表現の自由のひとつとして重要です。なので、フランク三浦というネタ商品が存在すること自体は健全な状況であると思います。
しかし、パロディをする側が商標登録をするとなると話は別です。権威を茶化すための模倣をしていた側が、商標制度という権威によって他人の模倣を防ぐことを目指すことになるからです。「俺がパロディをするのは表現の自由、ただし俺以外の他人は真似するな」ということで、ダブスタであり、少なくともカッコワルイ行為であると思います(個人の感想です)。