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『知ってるワイフ』の銀行員役で注目のハーフ女優・安藤ニコ 「日本のドラマは独特な雰囲気があります」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『知ってるワイフ』で広瀬アリスの同僚役の安藤ニコ(撮影/松下茜)

恐妻家の主人公がタイムスリップして、妻が入れ替わったドラマ『知ってるワイフ』。広瀬アリスが演じるヒロインの同僚で、美形が目を引く銀行の窓口係を演じているのが安藤ニコだ。父親がアメリカ人というハーフの20歳。モデルとしてデビューして、最近はドラマ出演が続いている。素顔を探るべく話を聞くと、独自のハイブリッドな感性を持っているようだった。

学校で男子とアメフトをやってました

――お父さんがアメリカ人だそうですが、ニコさんも向こうに住んでいたことがあるんですか?

安藤 オレゴン州とハワイに家族で住んでいました。

――日本とどっちが住みやすいですか?

安藤 断然日本です。便利だし、人との接し方が私には合っています。アメリカはフランクですけど、意外とどう振る舞えばいいのかわからないときがあって、日本のほうが落ち着きます。私にはアメリカ人の要素も日本人の要素も入っていて、説明しにくいところもありますけど、生活するには日本のほうがいいなと思います。

――一方で、アメリカの文化にも慣れ親しんでいるようですね。

安藤 インターナショナルスクールに通っていたので、いろいろな国の友だちがいて、カルチャーに関してはアメリカや海外の話題は多いかもしれません。

――アメリカンフットボールもお好きとか。

安藤 アメフトは学校で友だちに「やろう」と誘われて、男子と一緒にやっていました。

――えっ? アメフトを観るのが好きなのでなく、自分でやるんですか?

安藤 はい。女子がやるのはあまり聞いたことがないですけど、私の学校では「やってもいいよ」と言われたので。本気でやっていたらアザができたりして、母に「ケガするからやめて」と言われて、やめました(笑)。でも、体を動かすのは好きです。

――音楽や映画はレトロなものが好きなようですね。

安藤 親の影響が大きくて、小さい頃から家で昔のロックが流れていて、ビートルズを好きになったり、昔の映画もたくさん観ました。でも、最近は新しい曲もいろいろ聴いています。

――最近はどんな音楽を?

安藤 エレファントカシマシさんはずっと大好きで聴いています。あと、フジファブリックさんを聴き始めました。ジャンル的にはロックが一番多いですけど、洋楽ではDestiny's Childとかヒップホップも聴きます。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

目立ちたいけどグイグイ行くタイプではなくて

――スカウトされたのは中3でしたっけ?

安藤 そうです。お母さんと髪を切りに初めて三茶(三軒茶屋)に行って、駅に下りたところで声を掛けてもらいました。電車の中で見掛けて、一緒に下りてくれたみたいです。

――当時はどんな中学生だったんですか?

安藤 インターナショナルスクールだったこともあって、今と比べて日本語がちゃんとしゃべれなくて、会話はずっと英語寄りでした。大阪から東京に出てきたところだったので、カッコつけていた時期でもあって(笑)。ファッションは頑張って背伸びして、ほぼ黒しか着ない感じでした。

――日本の学校のように部活はあったんですか?

安藤 それでアメフトをやっていたんです。でも、日本の学校と違って、いろいろなことを短期間ずつやる感じだったので、ヨガやクイズクラブもやりました。

――人前に出ることは好きだったんですか?

安藤 小さい頃から目立ちたがりでした。だから、英語で劇をやるドラマクラブにも入りました。でも、グイグイ前に行くタイプではなくて、本当は主役をやりたいけど恥ずかしいから言えない……という(笑)。

――スカウトされたときは即やりたいと?

安藤 すごくうれしかったです。母と一緒のときにスカウトされたのは初めてで、安心して話を進めてもらいました。1人だったら「よくわからないので」と断っていた可能性が高いです。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

ファッションショーでコケてゴマかそうと(笑)

――最初はモデルとして活動していました。

安藤 苦手意識があった日本語でお芝居するなんて、私にはできないと思っていました。ファッションは大好きで、目立ちたい気持ちもあったので、最初はモデルをやってみたいと思ったんです。

――ファッションショーでランウェイを歩くと、それこそ目立ちたい願望が満たされて?

安藤 まだ緊張のほうが大きいかもしれません。「コケたらダメ!」と繰り返し考えていました。でも、音楽が大音量でかかって、カッコイイ服を着て歩く幸せはいつもあります。

――実際コケたことはあるんですか?

安藤 あります(笑)。最初の頃、お客さんが部屋の中にいて、その周りを音楽に乗って歩くディスコ系のショーがあって。ちょっと踊りながら歩いていたら、フィナーレで調子に乗りすぎて、階段でヒールがグサッとなって、思い切りコケてしまいました(笑)。

――お客さんが観ているときに?

安藤 そうです。「どうってことないわよ」みたいな顔をして、踊りの一部のようにゴマかそうとしたら、ゴマかしきれないくらいコケました(笑)。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

ウソのないお芝居に影響を受けました

――最近は女優の仕事が増えてきましたが、ニコさんが希望したんですか?

安藤 最初はマネージャーさんや社長から「お芝居に挑戦してみない?」とお話をいただきました。レッスンやワークショップに通って、事務所の他の子たちと練習していくうちに、楽しさを知った感じです。

――ドラマや映画はよく観ていたんですよね?

安藤 映画は週に何本かは絶対観ます。昔は家族で「ムービーナイト」と言って、土曜か日曜にみんなで1本観ることになっていました。

――公式HPのプロフィールでは、好きな映画に『ミッドナイト・イン・パリ』が挙がっていますが、映画の好みもご両親の影響を受けていますか?

安藤 映画は自分で海外の監督さんとか調べて、観ることが多かったです。一番好きな監督はウェス・アンダーソン。コミカルだけどダイレクトでない回りくどいコメディで、意外と奥深いストーリーラインもあって、キャラクターはみんな個性がユニーク。現実とはちょっとかけ離れていて、ファンタジーだけどリアルな絵本のような世界観で、その世界に入ってみたい想いがあります。

――女優として刺激を受けた作品もありますか?

安藤 『17歳のカルテ』というウィノラ・ライダーとアンジェリーナ・ジョリーのW主演の映画です。精神科の病院に入院している女性の話で、2人の感情の出し方がすごくて、観ているだけでこっちも感情を動かされるくらいの表現力でした。

――日本の作品だと?

安藤 たくさんありますけど、日本の映画の魅力を一番感じたのが『ハッピーフライト』で、2007年、2008年くらいに公開された作品が大好きです。説明しにくいんですけど、小さい頃に日本の映画を観てなかったからこそ感じる、独特な雰囲気があるのかもしれません。

――コミカルとシリアスのバランスとかですかね?

安藤 日本のドラマもそうで、今だと『知ってるワイフ』はもちろん(笑)、綾瀬はるかさんと高橋一生さんが入れ替わる『天国と地獄』は、最初から「これはハマるな」と思いました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

台詞がなくても接客する意識を持っています

――『知ってるワイフ』でニコさんが演じる樋口静香は銀行員の窓口係です。

安藤 学生ではない、お仕事をしている役柄は初めてでした。私は銀行にあまり行かないので、知らないことがたくさんありました。銀行員だけでなくデパートとかで働く女性は、何でもちゃんとできて女子力が高いイメージで、私とかけ離れているので、そこはすごく意識しました。

――実際の銀行の窓口とかで、そういう人を見てみたりも?

安藤 接客業をしている女性の方ってマナーとかしっかりしているので、そういうところを観察しました。ドラマで後ろに映りこんでいるときも、「お客さんが来るから対応して」という演出があって、どんな接客をするか知らないと困ってしまうので。台詞がないときも姿勢や振る舞いが出るので、そこを意識しないと成立しない気がしました。

――静香のキャラクターについてもいろいろ考えました?

安藤 台本に出てこないことも、たとえば「部屋はこうなんじゃない?」とか、マネージャーさんと一緒にすごく考えて現場に入りました。たぶんお弁当は毎日ちゃんと作っているけど、忙しいから作り置きばかりとか、細かく考えました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

カットがかかるまでボコボコにし続けて(笑)

――番組HPにも静香の詳細な人物紹介が出ていますね。「普段は物静かだか、自分の信念をしっかり持っていて」とか。

安藤 監督から「こういうシーンのときはこんな感じ」というのを細かく教えていただきました。物静かでおとなしいけど、スピンオフの『知ってるシノハラ』を観ていただくと、予想外な部分もあります。

――「自分もこういうことはする」というところもありました?

安藤 監督とお話するうちに私に寄せていただいたみたいで、「バンド好きで休日はライブによく通っている」というのを取り入れてもらったりして、自分と似ている部分はたくさんあると思います。

――静香は恋愛となると「意識しすぎて、相手とうまく意思疎通できないのが悩み」とも出ています。

安藤 私もそういうことでは緊張したり、意識しすぎちゃう気がします。不器用な部分は似ていると思います。

――そういうところも、アメリカ育ちだと積極的に行くイメージがありますが。

安藤 そう思われがちですけど、私は全然そんなことはなくて。そういう部分は日本人っぽいというか、国はあまり関係ないかもしれませんが、グイグイ行く感じではないです。

――『知ってるシノハラ』の1話では、静香が篠原(末澤誠也)に床ドンみたいにされて、殴ったりもしていました。

安藤 パンチが効いたシーンでした(笑)。「エッ、そんなこと言うの?」みたいな台詞も多いので、観ている方もすごく面白いと思います。

――スピンオフを撮っていて、特に楽しかったシーンというと?

安藤 恵海(佐野ひなこ)と静香が篠原くんを取り合うシーンがあって、結果的に篠原くんがボコボコになるんです(笑)。監督が全然カットを掛けなくて、私たちは続けないといけないから、私と佐野ひなこさんが末澤さんを永遠にロッカーにボンボン押し付けてました。やっていても映像を観ても面白かったです(笑)。

――撮影時期的には初の連続ドラマということで、全体的に戸惑いはありませんでした?

安藤 キャストの皆さんがすごい方ばかりで、最初のほうは緊張して、あまり記憶にありません(笑)。でも、皆さんが本当にやさしくて気さくで、わりとすぐ打ち解けて、楽しみながら頑張れました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

俳句は自由な言葉のアートだと思います

――BSドラマから地上波で深夜に放送中の『どんぶり委員長』では、主人公の委員長(伊原六花)の恋を気にする同級生の3人組の1人、中嶋を演じています。

安藤 高校生に戻れた気持ちもありつつ、私は日本の学校にちゃんと通えたことがなかったので、青春を味わえました。噂話をして「フーッ!」みたいなことも経験なくて、同じ事務所の六花とか、みんな普通の学校の友だちみたいに仲良くて楽しかったです。

――前・後編で放送される『あんのリリック』で演じる川本すみれは、句会のメンバーで清楚な女子大生。

安藤 俳句に人生を捧げているような子で、私は俳句にあまり触れてこなかったから、ちゃんと役作りをしたくて、たくさん勉強しました。自分でも俳句を書いたら、本当に好きになって、撮影が終わってからも書いています。

――良い句ができました?

安藤 私的には納得していて、お母さんは誉めてくれますけど、おばあちゃんは厳しいです。おばあちゃんは自分でも俳句を書くので、「イメージしにくい」とか「そもそも意味がわからない」と言われます(笑)。だから、いつか「良いね」と言ってもらいたいです。

――自信作をちょっと披露してもらえませんか?

安藤 そんな、言えません(笑)。人にお聞かせするほどのものではないので。でも、このドラマを撮影して思ったのが、俳句は厳しいルールがあるイメージでしたけど、自由な言葉の表現のアートなんです。表現する楽しさを味わえるので、たくさんの方にお薦めしたいです。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

うまさを超えて何かを動かせるお芝居ができたら

――今は家にいるときは何をしていることが多いですか?

安藤 映画かドラマを観ているか、俳句を書いているか。『あんのリリック』で歳時記もいただいたので、季語とか調べて「こんな日本の言葉があるんだ」と知るのがすごく面白いです。漢字の勉強にもなるし、大学の日本語の授業にも役立ちます。

――最初は演技の壁だった日本語も、もう普通に話していますよね。

安藤 普通の方より全然しゃべれませんけど、最近は日本語により興味が湧いてきました。『あんのリリック』で「こんなに美しい表現の仕方があるんだ」と知って、今いろいろと関心が広がっているところです。

――アメリカ育ちだけに、日本語も客観的に見られるところがあるのかも。

安藤 確かに、小さい頃から日本語が当たり前ではなかったので、なおさら「英語ではこういう表現はできないな」と思って、よりきれいに聞こえたり、すごいなと感じることは多いです。

――2月末には21歳の誕生日を迎えますが、20歳になってからの1年で変わったことはありますか?

安藤 20歳になったからというより、お芝居をたくさんやらせていただいたのが大きくて、人生で一番成長できた1年でした。自分のいろいろな面を知れたり、前より自信を持って自分を出せるようになりました。何がしたいか、どう成長したいか、自分の意志も理解できたので、21歳ではもっと結果に繋げていきたいです。

――長い目で目指すこともありますか?

安藤 大きく言うと「ハッピーなら何でもいい」という性格です(笑)。何をやっても楽しめるという意味でもあるので、いろいろなことに挑戦していけたらと思います。私自身がドラマや映画からたくさん影響を受けてきたので、自分もお芝居を通じて他の方に影響を与えられるくらいになって、ゆくゆくはうまさとかを超えたところで何かを動かせるようになるのが目標です。あとは日本だけでなく、海外でも活躍できるように成長したいです。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

Profile

安藤ニコ(あんどう・にこ)

2000年2月28日生まれ、B型、167cm。

モデル活動を経て、2018年に映画『カレーライス Curry and Rice』のヒロイン役で女優デビュー。ドラマ『終わらない世界』、『ペンション・恋は桃色』などに出演。『知ってるワイフ』(フジテレビ系)、『どんぶり委員長』(テレビ東京系)に出演中。『あんのリリック』(WOWOW/前編2月27日、後編3月6日)に出演。

『知ってるワイフ』

フジテレビ系/木曜22:00~

公式HP https://www.fujitv.co.jp/shitteruwife/

『知ってるシノハラ』

FOD/毎週『知ってるワイフ』放送後に最新話を配信

公式HP https://fod.fujitv.co.jp/s/genre/drama/ser4t00/

(C)フジテレビ
(C)フジテレビ

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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