派手な演出デモをする彼らは何者か ノルウェーの石油政治を批判
「石油は殺す!」「真実を語れ」
ノルウェーの石油産業を批判し、政治家に責任ある行動を求める抗議運動が話題を集めた。
8月後半、約10日間の演出が派手な抗議を続けたのは、環境団体エクスティンクション・レベリオン (Extinction Rebellion)。
イギリスで創設されたこの団体は、活動家たちをノルウェーに集結させ、集中的に各地で道路を占拠、座り込み、交通をさえぎるなどの行為を行った。
「気候危機を止めるための、政治的な行動をせよ」と圧力をかける行為は、通り過ぎる市民の足を止めた。
警察によって大勢が連行される様子を市民やメディアに見てもらうことは、活動家たちの狙いのひとつだ。
デモ行進という手法よりも、道路などに座り込むことで街の機能を一部止まらせ、警察に連行・拘留され、罰金を払って開放されることまでが演出に入る。
8月23日には石油・エネルギー省の建物内にある受付を占拠。団体はティーナ・ブルー石油・エネルギー大臣(保守党)とも話し、大臣は「気候危機に関する懸念は理解できるが、このやり方には賛同できない」と回答した。
非暴力・不服従運動はノルウェーでは珍しいものではない
ノルウェーの石油産業は以前から国内・国外の環境派から批判されている。
ノルウェーの環境青年団体も非暴力・不服従運動をすることがあり、フィヨルド汚染につながる工事や石油施設の作業を中断させることがある。そのため、非暴力の抗議で警察に市民が連行・拘留される写真やニュースは珍しいものではない。
非暴力の抗議活動・警察の連行を市民の目の前で
ただ、ノルウェーの環境青年団体などが行う非暴力の抗議活動は、石油発掘や自然破壊が進む北極圏の海、工事中の山など、大自然の中で行われることが多い。一般市民は、活動家が警察に連行される光景を実際に目にすることは少ないのだ。
エクスティンクション・レベリオンの活動は全国各地、首都の王宮前、エネルギー省、国会前、一般道路など、日常生活の場で起きた。多くの人が目撃して、メディア側にも連日の報道やインタビューがしやすかっただろう。
ノルウェーでは警察を動かす事態にまでになった抗議の手を批判するよりも、「なぜ抗議活動をしているのか。目的はなにか」「賛同する政党や団体はいるのか」「なぜ参加する大学生がいるのか」という目的そのものを理解しよう目線のニュースが多かったと思う。
抗議が増える、ノルウェーの石油産業
エクスティンクション・レベリオンはノルウェーの石油活動を厳しく批判した。
9月13日にはノルウェーは国政選挙も控え、争点のひとつは気候だ。石油がなくなったらどのように経済をまわしていくか、石油産業で職を失う労働者をどうするかという議論もあるため、エクスティンクション・レベリオンの活動は話題にされやすかった。
右派「進歩党」のリストハウグ党首は同団体の人々に対して「もっとしっかりしなさい。(こんなことをしている暇があったら)職を見つけなさい」と言い放ったことも大きくニュースとなった。
「ノルウェーの石油政治は無責任」
オスロの道路を封鎖し、テントやソファを置いて、座り込みをしていた彼らの中にいた、ノルウェー人のコネリアさん(21)と話をした。
コネリアさん「私たちはノルウェーの無責任な石油政治に抗議するためにここにいます。石油産業は気候危機や自然破壊を起こしている」
「この道路は街の中心にあるから選びました。私たちは非暴力・不服従運動をしており、違法でもあるので、多くの者が逮捕されますが、メッセージを広げて届けることが重要だと考えています」
「罰金は一人10000~20000ノルウェークローネ(12~25万円)ほどです」
幅広い世代がメンバーだが、気候危機を心配している若者が多いという。
コネリアさん「警察に拘留され、たったひとりで留置所に入れられ、罰金を払う体験はおもしろいものではありません。それでも未来のためにする価値はあると思っています」
「多くのメンバーがすでに仕事をしている人たちなので、就職活動に影響するかどうかとかは心配していないと思います。ノルウェーでは抗議活動は小さい出来事として捉えられ、気にする人も少ないのでは」
「こんなことをするなら勉強しろ、働け」という批判
「職を見つけなさい」という発言をしたリストハウグ党首のような言葉を、彼らのような活動家は時に受ける。スウェーデンのグレタさんも「学校で勉強しろ」とどれほど言われただろう。
コネリアさんの思いを聞いた。
「無礼な表現だと思いますね。この団体のメンバーは全員が勉強し、働いている普通の市民です。私たちがこのような活動をしなければいけないのは。絶望を感じているから。お金や自由時間を犠牲にしているのはこっちです。だって政治家が責任ある行動をしないから」
国政選挙に期待することを聞くと、「全ての政党に責任をとってもらい、石油発掘をやめてもらいたい。ノルウェー人は自分たちのことばかり優先していて、ノルウェー人として恥を感じます」と答えた。
コネリアさん「そんなことをするなら勉強しろ、仕事をしろと言われたら、もちろん落ち込むこともあります。でも私は仕事もしているし、社会には貢献している。未来がどうなるのかという恐怖を私は感じていて、何かする必要があるからここにいるんです」