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「残業代ゼロ」法案~各政党の賛否は?

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 さて、前回は長時間労働について各党の公約を見てみましたが、では、いわゆる「残業代ゼロ」法案に対する態度はどうでしょうか?

 これについては、そもそもそれを含む法案を出している、自民党公明党賛成していることは明らかです。

 共産党は、公約で、

「高度プロフェッショナル制度」(「残業代ゼロ」制度)は、休憩・割増賃金・労働時間管理などの労働時間規制を完全になくしてしまう制度であり、文字通り日本の労働法制を根幹から覆すものです。何時間働いても同じ給料しかはらわれない「裁量労働制」の拡大もねらわれています。今回の法案は、どの点をとっても過労死促進法案そのものです。

としており、反対が明確です。

 また、社民党公約で、

〇「残業代ゼロ」制度創設や裁量労働制の拡大を柱とする労働基準法改正案に断固反対します。

としており、断固反対を強調しています。

 では、希望の党はどうでしょうか?

 希望の党は、公約では触れていません。この点は前の記事をご覧ください。

 ただ、報道によると、

 政府の働き方改革について、同党事務局は「党としての統一見解はない」と説明している。

出典:<比べてみよう公約点検>(5)働き方 長時間労働 どう是正

とのことなので、政党として意見は持っていないようです。

 ただ、同党には、民進党に所属していた際に、「残業代ゼロ」法案に対し強く反対していた議員(京都の山井さんとか、兵庫の井坂さんたち)も所属していますので、彼らが当選すると、党の政策に影響を与え、政党として反対に回る可能性があります(希望の党が選挙後も存在しているならば)。

 立憲民主党は、公約はシンプルなため、「残業代ゼロ」法案に対する見解を載せていませんが、枝野代表の演説では反対を表明していますので、反対の立場は鮮明です。

 日本維新の会は、公約で、

 既得権と戦う、維新流の経済・財政改革

との項目の中で、

○ 労働時間規制を見直し

と言っていますので、労働者を保護する労働時間の規制を既得権益だとして攻撃目標としていることが分かります。

 また、

 労働時間ではなく仕事の成果で評価する働き方を可能とする労働基準法の改正。

とも公約に明記していますが、これはマスコミが報道する「残業代ゼロ」法案の言い回しと一致します。

 ちなみに、議員立法でも、政府の「残業代ゼロ」法案に似たものを提案しようとしていました。

 したがって、維新の党は、「残業代ゼロ」法案に対して賛成ということになります。

 日本のこころは、公約にも書いていないし報道ベースでも意見が見当たらないのでです(情報があれば教えてください)。

「残業代ゼロ」法案への賛否

 まとめると、次のとおりとなります。

賛成

 自民党 公明党

 維新の会(類似の制度を提案)

反対

 共産党(公約に明記)

 社民党(公約に明記)

 立憲民主党(代表が明言)

議員による(?)

 希望の党

 日本のこころ

 今度の選挙のご参考となれば幸いです。

弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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