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4年前に別れた恋人を今でも忘れられません。楽しい思い出が多すぎるから~40歳からの婚活入門(17)~

大宮冬洋フリーライター
東京・九段下の蕎麦屋にて。松本さんは読者モデル風の美人です(筆者撮影)

 アラフォーの独身女性は生きづらいと思う。出産のリミットを感じながらの婚活は苦しいし、既婚者とはその辛さや孤独感を共有できない。話が合う友人知人がだんだん少なくなる。シングルマザーの場合はより深刻だ。幼い子どもがいると仕事・恋愛・趣味のいずれにも時間を取れず、母子で孤立しやすい。

 筆者は昨年末に電子書籍『40歳は不惑ですか、惑ですか』を自費出版した。既婚未婚それぞれの40歳男女に偏りなくインタビューして撮影をさせてもらう予定だったが、独身女性からは取材を断られることが多かった。「今の自分を書いてほしくないし、人からも見られたくない」といった理由がほとんどである。

 だからこそ、彼女たちの話を聞きたい。匿名でいいから、その状況と胸の内を教えてほしい。同じ40代として腹を割って語り合う気持ちで本シリーズを続けている。

***有名企業の秘書、松本由佳さん(仮名、41歳)の話***

持病を明かしたら、「オレと今まで付き合ってきた時間を返せ」と言われた

 4年前に別れた恋人のことを今でも忘れられません。2年間付き合って、そのうち1年間は同棲もしていました。

 出会いは異業種交流会みたいなワイン会です。彼は私より3歳年下で、IT系の会社に勤めています。ヒゲ&眼鏡で細マッチョな外見が私の好みで、ワインや音楽の話でも盛り上がりました。

 私は気に入った人には自分から連絡を取ります。彼にメールをしたらすぐにレスしてくれて、毎週会うようになり、1か月後にはお付き合いが始まりました。

 彼とは本当に相性が良くて、ケンカをしたことはほとんどありません。私は結婚したかったし、彼の子どもがほしかった。何度か気持ちを伝えて、同棲する話も私から切り出しました。趣味が多すぎる彼には「自由が捨てられない」と言われましたが……。

 関係性が急に悪化したのは、同棲した年のGWです。私には遺伝的な持病があることを思い切って打ち明けたら、彼の態度が豹変したんです。

「オレにはそんな由佳の人生を背負えない。2人の子どもも作りたくない。今まで付き合ってきた時間を返せ」

 こんなことを言われました。彼はいわゆる毒親の家庭で育ったので、結婚して家族が支え合うというイメージを持てなかったのかもしれません。心が冷たいなと感じることはあったけれど、一緒にいることが楽しかったので気にしないようにしていました。最後にひどいことを言われたのはショックでしたが、いい思い出が多すぎるので今でも引きずっています。

シェアハウス内恋愛。好きになった5歳年下の男性からの驚きの告白

 同棲を解消してからはシェアハウスに住んでいます。男女それぞれ4人ずつの一軒家で、男性はキラキラしたアラサーのオシャレ男子ばかり。「私があと15歳若ければ…」と思うことも少なくありません。

 本気で好きになった人もいます。私と同じ年にシェアハウスに入居した5歳年下の専門職の男性です。背が高くて、頭が良くて、面白い。ちょっと情けないところもあって母性本能をくすぐられました。

 私は惚れっぽいので、外見が好みで頭がいい男性と2人きりで話す機会があるとすぐ好きになってしまいます。彼とも何度か飲みに行き、打ち解けやすい人柄にも惹かれました。彼は土日もシェアハウスにいることが多いので「彼女はいないだろう」と思っていたんです。はっきりと聞く勇気はありませんでしたが……。

 驚きの告白があったのは2年前のクリスマスです。恋人がいない入居者だけで食事をしていたら、夜遅くに彼が帰って来ました。そして、「彼女にプロポーズしてきました!」と明かしたんです。

 彼によれば、彼女は箱入り娘で週末もお泊りなどはできなかったそうです。彼には昔の失恋経験があって、ちゃんと結婚が決まるまでは交際していることをみんなに言いたくなかったとのこと。まさか婚約者がいるなんて……。完全にカウンターパンチでした。

 私たちが住んでいるシェアハウスは、場所柄なのか魅力的でフレンドリーな男女が集まりやすいんです。シェアハウス内恋愛もあって、結婚して「寿退室」するケースもあります。私が好きだった彼も昨年の秋に出て行きました。もちろん告白などはできず、「きょうだいみたいに思っていたので、別れるのは辛いよ」とだけ伝えました。

 私は寂しがりなので一人暮らしはできません。学生時代は妹と一緒に住んでいたし、その後も友だちとルームシェアをしていました。家にいるとき、他の誰かの気配がすることが大事です。だから、シェアハウスはすごく楽しいし、本当の家族みたいに思っています。そのせいで婚活に本腰を入れられないのかもしれません。

 同棲していた彼と別れたトラウマと自分の病気のことがあるので、結婚願望は正直言って薄れました。でも、恋愛はしたいし、好きな男の人と一緒に暮らしたい気持ちはあります。最近は英語ができる人が集まるSNSのコミュニティに参加して、私と同い年の独身女性と出会い、失恋体験で意気投合したりしています(笑)。

***筆者より松本さんへ***

「病めるとき」も支え合えるのなら、シェアハウスも一つの家族なのかもしれません

 筆者も松本さんと同じぐらい寂しがりなので、一人暮らしには戻りたくありません。愛知県の自宅では妻と二人暮らしで、月の半分ほどは東京の仕事部屋に滞在しているのですが、毎日5分間でも妻と電話で話しています。物理的には一人暮らしの期間があってもいいけれど、「帰る場所がある」「自分だけの家族がある」という前提が必要なのかもしれません。

 その家族とは、親きょうだいをはじめとする肉親ではありません。不安定な未来を楽しく生き延びるには、赤の他人と家族になり、異なる文化を融合させて補完し合うことが必要だと筆者は思います。親きょうだいとは精神的に健全な距離を置かなければ、赤の他人としっかり向き合って結びつくことはできません。親離れ子離れすることが、新しい家族を作る前提なのです。

 松本さんの話を聞いていると、夫婦だけが家族の形ではない気もしてきます。単なる友達関係とは違って、シェアハウスの住民は同じ屋根の下で暮らしているので、リアルな「家族」ですよね。結婚などで退室するメンバーがいても、新たな人を家族として迎え入れればいいのです。松本さんの「家」では、退室したメンバーもLINEグループでつながっているとのこと。

 元気なときに楽しく過ごすだけでなく、「病めるとき」も支え合えるのであれば、シェアハウスもまた一つの家族なのでしょう。そして、恋愛は家族とは別のところで楽しんでもいいのかもしれません。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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