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カタールW杯検証(2)森保式3バックのなぜ。守備的サッカーを筆者が嫌う一番の理由

杉山茂樹スポーツライター
写真:Shigeki SUGIYAMA

 敵を欺くにはまず味方からという諺があるが、カタールW杯に臨んだ森保監督がそれだった。4-2-3-1メインだった布陣を一転、5バックになりやすい3バックで長い時間、戦った。ドイツ戦、コスタリカ戦は試合の途中から。スペイン戦、コスタリカ戦では最初から使用した。使用時間の割合は25対75ぐらいの関係にあった。

 サンフレッチェ広島時代がそうだったように、森保監督はもともと5バック(よく言えば3バック)愛好家として知られていた。日本代表監督に就任した当初も5バックで数試合戦っている。しかしほどなくすると、4バック(4-2-3-1、4-3-3)に移行した。批判を恐れたのか、空気を読んだのか、保身に走ったのか、いま振り返れば、どこか確信犯的だった。森保監督はそこから約2年間、まさに世を忍ぶ仮の姿で、采配を振った。

 しかし本番の半年前、森保監督は再び5バックに手を染め始める。幾試合か終盤の数分間を3バックで戦っている。5バックで戦う気配はあったと言えばあった。

 ドイツ、スペインという強豪と同じ組になったことも追い風になった。弱者という日本の立ち位置が明確になり、後方に人員を多く割く守備的なスタイルで臨むことに説得力が生まれた。5バックで戦う条件が整うことになった。5バック愛好家には、むしろ歓迎すべき組み合わせだったのかもしれない。その時を森保監督はひたすら待った。

 この欄でも幾度となく述べているが、一口に3バックと言っても、5バックになりやすいものもあれば、その状態を維持しやすい(5バックになりにくい)ものもある。サイドで数的不利を招きにくい3バックがそれだ。

 サイドは片側がタッチラインなので、相手からプレッシャーを浴びる範囲は、ピッチ中央の半分になる。360度の中央に対し、サイドは180度。技術の低い選手にとってはタッチラインも障害になるが、ラインを割っても相手ボールのスローインだ。時間を数秒間、稼ぐことができる。中央で奪われ、逆モーションとなり、入れ違いになるよりリスクは100倍低い。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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