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カタールW杯検証(3)ベスト16入りの原動力となった選手交代。森保監督はなぜその概念を変えたのか

杉山茂樹スポーツライター
写真:Shigeki SUGIYAMA

 続投が決まった森保監督。カタールW杯で驚かされたことは2点ある。前回述べたように事実上の5バックを多用したこと。そして早めの選手交代だ。

 5バックは、2019年12月に釜山で行われた東アジアE1選手権以降、封印された状態にあった。復活したのはその2年半後。今年6月に行われたキリン杯で、それ以降、本番直前のテストマッチまで数試合で使用された。しかし試合終盤の数分間に限られていたので、5バックでの逃げ切り策に前時代性を覚えながらも、目を瞑ろうとする余裕があった。ドイツ、スペイン戦を終盤リードで迎えた時の予行演習だろうと高をくくっていた。森保監督が抱いていたそれ以上の構想を、筆者は不覚にも見抜くことができなかった。

 それをベスト16入りの要因とする声は少なくないが、筆者はそう思わない。奏功したのは選手交代の方で、その“戦術的交代”に相手は目を眩まされた。視角的ショックを受け慌てたと見る。

 5バックの多用が、筆者には歓迎しかねぬネガティブな事象になるのに対し、選手交代はこれまでの経緯を踏まえると、歓迎すべき画期的な事象に映った。

 別人かと言いたくなる変節ぶりだった。東京五輪が終わった後、会見で「選手をなぜローテーションで戦わなかったのか」と、問われた森保監督はこう答えたものだ。

「先を見越して戦うことはまだできない。世界の中で日本が勝ち上がろうとした時、1戦1戦フルで戦いながら次に向かっていくことが現実的である」

 だが、カタールW杯本大会が近づくと森保監督は「1試合ずつチームを入れ替えながら戦えるように準備しておかないと、我々が目標にしているベスト8以上に進出することは難しい」と、過去を否定するような言葉を吐いた。

 本大会では、東京五輪が嘘のような、何というか、筆者がちょうど2ヶ月前、10月28日発行の本欄「W杯に臨む森保Jが、中継ぎを惜しげもなくつぎ込む日本シリーズから学ぶこと」で、指摘した通りの采配をした。

 日本が戦った4試合を振り返って見たい。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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