6月にメジャーデビューした20歳の選手が「11年1億8200万ドル」の契約を得る。それでも安い!?
タンパベイ・レイズとワンダー・フランコが、契約の延長に合意したようだ。ESPNのジェフ・パッサンやジ・アスレティックのケン・ローゼンタールらによると、契約は11年1億8200万ドル(2022~32年)。12年目の2033年は2500万ドルの球団オプションとなっていて、MVP投票で5位以内に入った際のボーナスもあるという。
フランコは、6月22日にメジャーデビューした、20歳のドミニカン・ショートストップだ。来年3月に21歳となる。今シーズンは70試合に出場し、打率.288(281打数81安打)と出塁率.347を記録した。長打は、ホームランが7本、三塁打が5本、二塁打が18本だ。
7月25日から9月29日にかけては、故障者リスト入りを挟み、43試合続けて出塁し、65年前にフランク・ロビンソンが打ち立てた、20歳以下の最長ストリークに並んだ。ポストシーズンの4試合は、打率.368(19打数7安打)、2本塁打(二塁打も2本)、4打点。新人王の投票では、チームメイトのランディ・アロザレイナとヒューストン・アストロズのルイス・ガルシアに次ぐ、3位にランクインした。テキサス・レンジャーズのアドリス・ガルシアを僅差で凌いだ。
フランコのデビューと連続出塁については、それぞれ、「全体1位のプロスペクトが早くも球史に名を刻む。初出場でこれをやってのけたのは、他に福留孝介だけ」と「この選手が継続中の「36試合連続出塁」が注目される理由。史上最長は84試合」で書いた。後者は継続中の記事だ。
これまで、レイズから総額1億ドル以上の契約を得た選手は、2012年のオフに6年1億ドル(2017~22年)の延長契約を交わしたエバン・ロンゴリア(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)しかいなかった。延長契約だけなく、FAとの契約を含めても、フランコが2人目だ。また、球団を問わず、メジャーリーグのサービス・タイムが1年未満の選手が手にした契約は、こちらも、1億ドルが最高額だった。2019年の開幕直後にアトランタ・ブレーブスとロナルド・アクーニャJr.が締結した、8年1億ドル(2019~26年)の延長契約がそうだ。フランコの契約総額は、そのどちらも大幅に上回る。
ただ、この時点で契約を延長せず、順調にキャリアを積み重ねていけば、フランコはさらに大きな契約を手にしていた可能性もある。プエルトリカンの遊撃手、フランシスコ・リンドーア(ニューヨーク・メッツ)は、FAまで1年となった昨オフに、クリーブランド・インディアンズからメッツへトレードされ、開幕直後に10年3億4100万ドル(2022~31年)の延長契約を交わした。この契約が始まる時点で、リンドーアは28歳だ。一方、フランコの契約は31歳まで続く(球団オプションの12年目は含めず)。32歳のフランコに対し、リンドーアのような大型契約を提示する球団はないだろう。
また、フランコと同じドミニカンの遊撃手で、フランコより2歳上のフェルナンド・タティースJr.(サンディエゴ・パドレス)は、今年2月に14年3億4000万ドル(2021~34年)の延長契約を得た。この2人は、20歳でデビューしたことも共通する(リンドーアは21歳でデビュー)。あと1~2年経てば、フランコはタティースJr.と同水準の契約を求めるかもしれない。資金が乏しいレイズは、そうなる前にフランコを囲い込んだというわけだ。
契約のスケールは違うが、レイズは過去にもこの手法を用いている。一例を挙げると、2020年に福岡ソフトバンク・ホークスで投げたマット・ムーアとの契約がそうだ。2011年のオフに、レイズはムーアと5年1400万ドル(2012~16年)の延長契約を交わした。ムーアのメジャーデビューから、3ヵ月後のことだった。
なお、それぞれの球団が交わした最高総額の契約(2021年3月時点)は、「オールスター捕手が球団史上最高額の契約をゲット。各球団の最高額は? 次に球団記録を塗り替えるのは?」にリストを掲載した。