明治、R-1の文字商標登録に成功:アップルのM1はどうなのか?
「明治 ”R-1”の文字商標、”例外的に認定” 知名度の高さアピール」というニュースがありました。「明治は、ヨーグルトの商品名に使う”R-1”と”LG21”の文字を商標登録した」とのことです。
このニュースのポイントは、明治つながりの例で言えば、「きのこの山」の形状の立体商標登録に成功したパターン(参考過去記事)と同じです。商標としての自他商品識別力を発揮できない(ゆえに拒絶になる)ような商標であっても、市場での長年の使用により識別力(識別性)を獲得していることを立証できれば登録できるという規定により、登録されたということになります。
”R-1”は、「欧文字と数字とをハイフンで結合した標章は、商品の種別、品番等を表示する記号又は符号として、一般に使用されるものであり、識別力を欠く」ことから、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」(商標法3条1項5号)とされました。また、”LG21”については、乳酸菌の名称であるところ、そのような乳酸菌を含むヨーグルトと認識されるに過ぎず「商品原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」(商標法3条1項3号)とされました。このままでは登録できないので、使用による識別力を、販売の歴史、市場シェア、消費者の認知度、広告宣伝、メディアでの扱い等々の証拠により立証する必要があるわけです(結構大変な作業です)。
今回のケースは”R-1”も”LG21”も、審査段階では審査官の意見を覆せず、拒絶査定となったあとに、不服審判において証拠を追加提出して登録を認められる形になっています。「きのこの山」のケースよりもさらにハードルが高かったと言えるでしょう。私見ですが、一消費者として見れば、”R-1”も”LG21”も十分(使用による)識別力はあると思います。
一般に、このように使用による識別力の立証により商標登録できれば、商標権を独占できるという本来のメリットに加えて、特許庁に十分な周知性があることのお墨付きをもらったということによる、宣伝効果上のメリットもあると思います。
話は跳びますが、R-1からM1への連想(笑)で、アップルのM1プロセッサの商標登録はどうなっているのか気になったので調べてみました。日本では、登録も出願もありません。これは、米国でも同じですが、米国では”APPLE M1”が登録されています(6906811号)。M1単独で登録は厳しいという判断の上でしょう。”APPLE M2”も出願されていますが、まだ登録されていません。”APPLE M3”以降はまだ出願されていません。APPLE部分には(少なくとも指定商品"computer"との関係において)十分な識別力がありますので、APPLEを付ければほぼ何でも確実に登録できます。また、”APPLE M1”については、国際商標登録出願(マドプロ出願)も行われていますが、今のところ中国しか指定されていません。模倣品のリスクを考えるとまずは中国というのは理解できます。