5都市の大気汚染の球がノルウェーに登場、もわっとした空気に耐えられる?
ノルウェー中部にあるトロンハイムに、世界都市の大気汚染を体験できるドームが立ち上がった。
5つの世界都市の大気は、5つのドームの中で再現されている。ノルウェー科学技術大学NTNUと、英国のアーティスト マイケル・ピンスキー氏によって作られた。ヴィジュアルアートによって気候変動における人々を意識を変えることができるかを問う気候芸術「クライマート」だ。
最初の円の中には、トロンハイムの綺麗な空気が詰まっていた。違和感は感じなかった。「新鮮な大気 数字レベルは7」とパソコンのスクリーンに大気情報が記載されていた。
次の部屋に移動すると、そこはロンドンの世界。「大気汚染度・高め」とされ、数字は72に上昇。空気はこもっており、急に視界がぼやけた。まるで生暖かい霧の中にいるようだ。
3つ目はインドのニューデリー。パソコンには「Airpocalypse」(最悪の大気汚染)の文字が。画面の色も真っ黒になっており、数字は340。重々しい空気に、長くそこにいる気にはなれなかった。
4つ目の部屋は中国・北京。数字は289と多少下がったが、居心地の悪さは変わらない。そして奇妙な匂いが鼻につく。先ほどのニューデリーと同様、アウトドアスポーツ、サイクリング、赤ん坊を連れての外出、外食の4項目における屋外活動をする場合は「注意」の文字が浮かび上がっている。
最後の部屋はブラジル・サンパウロ。数字は60へと一気に下がり、呼吸しやすくなった。視界もはっきりとする。赤ん坊を連れての外出は注意とされているが、そのほかの活動は「適度に」だそうだ。先ほどよりもスモッグなどがないので「綺麗な空気」と一瞬思い込んでしまったが、パソコンでは「大気汚染度・高め」と表示されている。
2人の学生はドームを次々と周り、汚染状況が表示されたパソコン画面をスマートフォンで撮影して記録に残していた。
科学技術大学NTNUで経営学を学ぶマヤさん(22)は、「わくわくする実験。違う都市の大気を体験できて面白いです。トロンハイムは冬は一時的に大気が汚れたこともありましたが、通常は綺麗。ここに住めて幸運だと思います」。
物理学を学ぶベンさん(24)は、「いいコンセプト。僕たちで大気を守っていかなければいけないと改めて思いました。自分の住むトロンハイムの大気が綺麗なのは偶然ではなく、そのために人々が行動してきたから。いろいろと考えさせる挑発的な展示だと思います」。
この展示は科学と音楽の祭典STARMUSにあわせて開催されていた。
「気候変動と大気汚染は関係があると思うか」、「改善のために自分でなにかしらの行動を起こそうと思うか」などの出口調査が大学生たちによっておこなわれており、結果は今後発表予定。
Photo&Text: Asaki Abumi