台風14号が福岡県に史上初の上陸、珍しい九州の西海上からの東進台風は北日本まで雨に警戒
台風14号が福岡県初上陸
九州の西の東シナ海にあった台風14号は、東進して9月17日19時前に福岡県福津市付近に上陸しました(タイトル画像参照)。
台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を「台風の上陸」といいますが、これまで、台風8号が宮城県石巻市付近に、台風9号が鹿児島県枕崎市付近に上陸していますので、今年3個目の上陸となり、平年の上陸数と並びました(表)。
台風が福岡県に直接上陸するのは、昭和26年(1951年)の台風統計開始以降初めてです。
福岡県への台風接近は、ほとんどが南西方向からのもので、先に長崎県や鹿児島県などに上陸します。
台風14号は、東シナ海から東進したため、福岡市と北九州市という2つの政令指定都市のほぼ中間に位置する福津市に直接上陸しました。
台風は、今後も東進を続け、四国を通って近畿地方から東海沖へと進み、温帯低気圧に変わる見込みです(図1)。
過去に海域別に台風の進行方向を調べたことがありますが、9月に九州の西海上にある台風は、ほとんどが北上であり、私の調査期間では東へ進む台風はありませんでした(図2)。
令和3年(2021年)の8月末までの台風発生数は12個と、平年の13.6個と平年より若干少なく推移していました。
これは、8月に台風の発生と接近が若干少なかったことが影響しています。
また、台風の中心が国内のいずれかの気象官署から300キロ以内に入った場合を「台風の接近」といいますが、8月までに8個接近しており、これは、平年の7.1個より若干多くなっていました。
9月に入っては台風が2つ発生し、14号が接近と上陸にカウントされます。
一般的な台風の雨
台風のよる降雨を大きく分類すると、台風中心のうず性降雨、地形性降雨、前線による雨、らせん状に台風を取り囲む降雨帯(アウターバンド)による雨の4つに大別できます。
このうち、台風中心のうず性降雨というのは、台風の規模にもよりますが、一応中心から200から300キロの範囲で強く降る雨で、台風中心のうずが強まれば(中心付近の風が強くなれば)、それだけ中心付近の上昇気流が強まり、その結果として強い雨が降ることから名付けられています。
また、地形性降雨は、地形の起伏によって、大気が強制上昇させられることにより、山の風上側に降る雨のことで、風速が強ければ強いほど、地形の傾きが急であればあるほど強い雨となります。
台風の上陸または接近により、この4つの雨が重なって台風の雨になるわけですが、このうち主たる雨であるうず性降雨と地形性降雨は、台風の進路が似ていると似た降り方をします。
したがって、台風の降雨分布は、台風の進路が似ていると似た分布になることが多いといえます。
筆者は、明治25年(1892年)から昭和53年(1978年)の330台風について、台風の進路別に総降水量を調べたことがあります。
九州の西海上から東進した台風には例数が少ないので、九州から北東に進む台風(タイプ8-2)と、九州の南海上から北東に進む台風(タイプ8-3)を参考にしてみました(図3)。
紀伊半島や四国南岸、宮崎県で200ミリ以上の雨が降る確率が60パーセントと高いのですが、東北地方も10パーセント以上と、意外と確率が高くなっています。
台風14号の雨
台風14号の中心付近に雨が降る前から、西日本に停滞していた前線の影響で高知県窪川で400ミリなど、四国の太平洋側や宮崎県ですでに200ミリ以上の雨が降っています(図4)。
台風14号の東進により、今後、近畿から東海、関東、北日本の太平洋側で100ミリ以上、所により200ミリという雨が加わるという予報です(図5)。
台風14号が温帯的圧に変わりながら東進する予報ですが、台風から離れている北日本でも大雨の可能性があります。
台風は足早に通過します。
しばらくは、最新の気象情報の入手に努め、警戒してください。
タイトル画像、図1、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。
図2の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計―月別発生数・存在分布・平均経路―、研究時報、気象庁。
図3の出典:鈴木義男・饒村曜(昭和56年(1981年))、台風の進路別降雨分布について、研究時報、気象庁。
表の出典:気象庁ホームページ。