Yahoo!ニュース

「予想外のことが起きた」山本由伸1回5失点のメジャーデビュー戦を上原浩治が分析

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 メジャーリーグの韓国シリーズ、ドジャースVSパドレスが21日、ソウル・高尺スカイドームで第2戦を迎え、ドジャースは、今季から新加入の山本由伸投手が公式戦初登板で先発マウンドに上がった。メジャーの投手では史上最高額で契約した右腕だが、この日は制球が定まらずに1回5失点。厳しいデビュー戦となったが、アメリカでの開幕までにはまだ時間がある。気持ちを切り替えて、仕切り直せばいいと思っている。

 この日はスプリットの制球が定まらず、捕手もカーブやカットボールなど使える球種を探る苦しい投球が続いた。

 私は「初球」が全てだったとみる。

 メジャーのデビュー戦の初球ということで、山本投手も直球を見逃してくれると思って投じたはずだ。前日の会見では初球に何を投げるかを聞かれ、「打者に狙われるから言えない」という趣旨の話をしており、実際に見逃すという決めつけはできないにしても、なんとなく初球はセレモニー的に、打者も見逃して“記念球”として手元に戻ってくると考えていても不思議ではない。

 その初球をいきなり中前へ運ばれた。リズムが狂ってもおかしくないだろう。繰り返すが、デビュー戦の初球だから見逃すという決まりはないものの、まさにメジャーの洗礼ともいえる。球場で見ていた私も驚いたが、マウンドの山本投手にとってはもっと予想外だったのではないだろうか。

 2番打者はスプリットの制球が安定せず、抜けた死球を与えてピンチを広げた。この場面で中軸を迎えると、やはり制球が甘いスプリットを打たれて、いきなり2点を失った。その後も四球を出すなど、球数がかさんだ。全体を通して、本調子には遠かった。

 スプリットの制球については、韓国で、しかも無風のドーム開催という点を前向きにとらえればいいのではないだろうか。もちろん、ドームは汗をかきやすく、手もしっとりしてボールを握りやすい利点はある。ただ、アメリカの気候とは違い、屋外でもない。大事なのは、アメリカで安定できるか、どうかである。今回は一長一短がある中で、アジャストできなかったという程度にとらえ、気持ちを切り替えればいいだろう。

 オープン戦から3試合続けて打たれているが、オープン戦の結果は関係ない。この日のマウンドは結果が出なかったが、大事なのはアメリカでの本格開幕だ。メジャーの公式戦であり、記録も全て残るが、まだまだ両チームの雰囲気とも、レギュラーシーズンという雰囲気にはなっていないようにも見えた。山本投手についても、大事なのはシーズントータルでの成績である。

 ただ、以前のコラムに書いたように「期待値」は高い。シーズンを通じて15~20勝しても当然の評価を得ている。アメリカに戻ってからの時間をうまく調整にあて、次の登板、次の次の登板では、結果が求められるという覚悟は必要になるだろう。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

上原浩治の最近の記事