下剋上はなぜ起きた!?DeNA26年ぶり日本一の最大の勝因を上原浩治が分析
プロ野球の日本シリーズは、セ・リーグ3位からクライマックスシリーズ(CS)を勝ち上がったDeNAが、パ・リーグ覇者のソフトバンクを4勝2敗で下し、26年ぶり3度目の日本一に輝いた。
レギュラーシーズンの成績が71勝69敗、3分け。貯金2のチームが日本一になったのは、90年の歴史がある日本のプロ野球界でも過去に例がないという。
まさに史上最大の下剋上であり、レギュラーシーズンを貯金42と圧倒的な強さで勝ち上がったソフトバンクからすれば、短期決戦の怖さを見せつけられた結果だっただろう。
2007年のクライマックスシリーズ(CS)導入後、レギュラーシーズンの優勝と日本シリーズ進出チームは分けて考えられるようになった。とはいえ、シーズンの優勝チームが日本シリーズへ勝ち上がることが多く、リーグ3位からの日本一は、2010年のロッテ以来となる。CSなどのルールがあり、CS第1ステージ、最終ステージと敵地での戦いを勝ち上がっての日本シリーズで、4勝2敗という結果での日本一は、胸を張れる結果だろう。1998年の日本一から長らく低迷した時代を乗り越え、DeNAになってつかんだ栄光は、スタジアムの外にまで広がったファンの歓喜がその価値を証明している。
一方で、レギュラーシーズンの終盤の戦いを制してリーグ優勝を成し遂げた巨人のファンからすれば、“下剋上”に釈然としない思いもあるかもしれない。これは、ルール上のことであり、現行では1勝のアドバンテージの議論を深めるしかないだろう。リーグ優勝したチームが80%くらいの確率で日本シリーズへ進出できる仕組みはあってもいいだろうが、勝ち上がることが可能なシステムである以上、100%ということはない点も踏まえないといけない。
DeNAが短期決戦を制した要因は、投手出身の目線で言えば、中継ぎ陣の奮闘だと言いたい。
救援陣が失点したのは、2連敗した最初の2試合だけで、4連勝の間は2番手以降の投手はいずれも無失点で抑えている。4連敗中に20失点したソフトバンクの中継ぎ陣とは明暗を分けた。
3、4、5戦目に先発した東克樹、アンソニー・ケイ、アンドレ・ジャクソンの3投手はいずれも7回を無失点で救援陣にバトンを託した。後ろが頼もしいと、最初から飛ばしていけるので、気持ちも楽になる。強固な救援陣が先発の好投を呼び込んだともいえる。
第6戦もDeNAは先発の大貫晋一投手を2点リードの4回で下げて、継投策で勝ちに行った。勝負どころでベンチワークがさえた。
救援陣をみていると、球速よりもコントロールの大切さを改めて認識させられた。
スピードガンが当たり前のように150キロ以上を表示する時代になってきたが、プロの打者はコースの失投を待っているケースもある。スピードがあっても、コースを間違えれば打ち返される。DeNAの救援陣は6戦での四死球が5個で、4戦目以降は一つも出していない。対するソフトバンクの2番手以降の投手は6戦で14個。もちろん、スピードは魅力的な武器でもあるが、四死球に限らず、制球力に大きな差が出ていた。
短期決戦は一つのプレーで流れが変わる。投手の生命線は何か-。野球少年たちにも参考にしてほしい。