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試合が始まる前にレッズの監督が退場。過去には、試合前の退場を2度経験している名将もいる

宇根夏樹ベースボール・ライター

監督が退場になった……試合が始まる前に。

5月23日、ラインナップ・カードの交換に現れたブライアン・プライス監督(シンシナティ・レッズ)が、主審のジム・レイノルズに何かを言い始めた。レイノルズがそれに対して答えるが、プライス監督は納得できないらしく、話はなかなか終わらない。とうとう、レイノルズはプライス監督に退場を宣告した。

話の内容は、前日の試合で球審のマニー・ゴンザレスが下した、ストライクとボールの判定についてだった。審判4人は前日から時計回りに位置を入れ替わり、ゴンザレスは三塁へ。この日の球審は、前日に一塁で審判を務めたショーン・バーバーだったが、プライス監督は文句を言わずにはいられなかった。チームが6連敗中ということも、プライス監督のフラストレーションをかき立てていたと思われる。レッズは23日の試合にも敗れ、昨シーズンのチーム最長記録に並んだ。

試合前の退場は滅多に起きるものではないが、過去にも例はある。2013年8月25日には、現在もシカゴ・ホワイトソックスでベンチ・コーチを務めるマーク・ペアレントが、試合前に退場となった(ロビン・ベンチュラ監督がいなかったわけではなく、ラインナップ・カードの交換にはコーチが出てくることもある)。この時も、原因は前日の判定だった。ホワイトソックスのアレクシー・ラミレスがホームインしたかに見えたが、球審はアウトを宣告。テキサス・レンジャーズのA.J.ピアジンスキ(現アトランタ・ブレーブス)によってブロックされ、ラミレスの足はプレートに触れていないと判断した(試合はホワイトソックスがサヨナラ勝ちした)。

1986年6月6日には、前日の判定に不服を抱くサンディエゴ・パドレスのスティーブ・ボロス監督が、ラインナップ・カードを交換する際に、そのプレーを収めたビデオテープを審判に渡そうとして、退場を宣告された。現在はオークランド・アスレティックスの指揮を執るボブ・メルビン監督も、2004年8月7日の試合前に退場となった。メルビンは当時、シアトル・マリナーズの監督だった。

彼らの他にも試合前に退場させられた者はいるが、誰よりも印象深いのは、アール・ウィーバー監督だろう。1968~82年と1985~86年にボルティモア・オリオールズで采配を揮ったウィーバーは、1975年8月15日と1985年9月29日に、試合前の退場を経験している。これらは2度ともダブルヘッダー第2試合の開始前。先立って行われた第1試合の途中に退場となった点も共通している。

オリオールズが1970年のワールドシリーズ優勝40周年を記念し、当時の復刻版ユニフォームでプレーした2010年6月26日の試合前には、ユニフォーム姿のウィーバーが、ラインナップ・カードを持って登場した。もちろん、審判はウィーバーに退場を宣告した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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