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43歳。お金はあっても心がなければ、私も子ども達も幸せになれません~40歳からの婚活入門(14)~

大宮冬洋フリーライター
東京・目黒のエスニック料理店にて。中川さんはキリッとした顔立ちの美人です

 アラフォーの独身女性は生きづらいと思う。出産のリミットを感じながらの婚活は苦しいし、既婚者とはその辛さや孤独感を共有しにくい。話が合う友人知人がだんだん少なくなる。シングルマザーの場合はより深刻だ。幼い子どもがいると仕事・恋愛・趣味のいずれにも時間を取れず、母子で孤立することもある。

 筆者は昨年末に電子書籍『40歳は不惑ですか、惑ですか』を自費出版した。既婚未婚それぞれの40歳男女に偏りなくインタビューしてポートレート撮影をさせてもらう予定だったが、独身女性からは取材を断られることが多かった。「今の自分を書いてほしくないし、人からも見られたくない」といった理由がほとんどである。

 だからこそ、彼女たちの話を聞きたい。匿名でいいから、その状況と胸の内を教えてほしい。同じ40代として、腹を割って語り合う気持ちで本シリーズを続けている。

***フリーのデザイナー、中川里奈さん(仮名、43歳)の話**

「亡くなった奥さんの身代わり」では私自身があまりにかわいそう

 5年前に別れた夫とは「動物的直感」でくっつきました。付き合っていたときに、前を歩く彼の背中を見て、「あ、私、この人の子どもを産まなくちゃ」と強く感じたんです。結婚相手としては危険だということはわかっていました。だからこそ、離婚してもいいように、私の旧姓にも合う字画の名前を子どもたちに付けたんだと思います。今はもう会っていません。

 2015年の秋からは婚活を始めました。一人であくせく働くのではなく、少なくともあと10年間ぐらいは余裕を持って子どもたちをみてあげたいからです。だから、私だけでは相手を選べません。私、長男、次男はセットであり、チームだから。夫になる人も含めて、家族全員の心と経済が潤うような再婚をしたいです。

 結婚相談所に入ってすぐに紹介された男性は、バツイチの経営者でした。年齢は一回り上です。前の奥さんとは死に別れていて、子どもはすでに成人しています。すごく積極的な人で気も合ったので付き合い始めて、半年後には一緒に住む話も出ていました。

 でも、彼は奥さんのことを思い出すたびにひどく落ち込んでしまいます。躁鬱症気味なんです。「雨が降っているから」なんていう理由でデートをドタキャンされたこともあります。自分から「オレは病んでいるかも」と言うので、受け入れるつもりで「そうだね」と返したら怒り出してしまいました……。

 急にLINEが入り、「明日、出張なのでこのブランドの下着を用意して」なんて指示されたこともありました。専業主婦だった奥さんはやってあげていたのでしょう。彼と結婚したら同じことを求められるんだな、と思いました。

 彼はお金があります。優しいときはとても優しい。でも、亡くなった奥さんの身代わりにされるのは私があまりにかわいそうだと思いました。私の心が満足しなければ、子どもたちも幸せにはなれないでしょう。

私物(サングラス)を撮影しようとしたら、「この場所がいいよ」と配置してくれました
私物(サングラス)を撮影しようとしたら、「この場所がいいよ」と配置してくれました

自分と家族にとって心地良い人として好きになり、愛が始まる

 経営者の彼とは2016年の夏に別れました。しばらく婚活をお休みしたら元気が出て来たので、再開したのは去年の春先です。「動物的直感」ですぐに付き合うのはもうやめて、できるだけ多くの人に会おうと思っています。すでに10人以上とお見合いしました。

 その中の1人がバツ2の会社員男性です。私の10歳上。動物としてビビッとは来ないけれど、子どもたちだけでなく、ずっとお世話になっている姉家族とも仲良くしてくれそうだと感じています。映画や買い物に行ったり、ドライブをしたりと5回ほどデートしたところです。

 以前に婚活で会った他の男性にもドライブに誘われましたが、「無理」と感じてしまいました。万が一でも事故に遭ったら、その人が人生最後の男性になりますよね。それは困ります。でも、いまデートしている彼が運転する車の助手席にはすんなり座れるんです。

 彼とはまだ男女関係にはなっていません。男性的なものを彼にはまだ感じていないので、迫って来られないのはありがたいと思っています。もう少し時間をかければ自分と家族にとって心地良い人として好きになり、そこから愛が始まるのかもしれません。

 彼には2度の結婚でも子どもがいません。私の家族に憧れを持ってくれています。今後どうなるのかはタイミング次第だと思います。焦らずゆっくり付き合っていきたいです。

***筆者より中川さんへ**

激しい恋愛よりも静かな家族愛。「動物的直感」をアテにし過ぎるのはやめましょう

 僕たちフリーランサーには産休も育休もありません。もちろん仕事を休んでかまわないのですが、復帰後も同じ仕事を受注できることはむしろまれです。別の仕事を獲得しようとしても、女性の場合は「子育てで大変だろうからハードな仕事はお願いできない」と敬遠されがち。シングルマザーはなおさらです。

 しかし、中川さんは仕事への執着はありません。独身時代に全身全霊を傾けて働き、自分なりの目標に達したという思いがあるからだと思います。今、情熱を注ぐ対象は2人の息子たち。だからこそ、ちゃんと働いて稼いでくれて、子育ても一緒に楽しめる男性を探しているのです。

 何度かデートをしている10歳年上の会社員男性との相性は良さそうですね。「動物的直感がビビッとは来ない」と中川さんは言いますが、はっきり言ってその直感はアテになりません。それは前夫や前彼で証明済みですよね。

 勢いがあって面白いけれど精神的に不安定もしくは不誠実な異性に心惹かれてしまうことは誰にでもあります。一緒にいると不幸になる予感や背徳感になぜか興奮する。不倫と同じです。それは恋というよりも、自傷行為に近いのではないでしょうか。

「自分と家族にとって心地良い人として好きになり、そこから愛が始まるのかもしれません」と語ってくれた中川さんに僕は成熟を感じました。激しい恋愛よりも静かな家族愛。中川さんは新たなステージに進もうとしています。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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