ノート(103) 検事が検事に語るという異例中の異例の供述調書
~整理編(13)
勾留61日目(続)
「被疑者」か「参考人」か
検察側が公判で証拠として使おうと考え、弁護側に開示した関係者の供述調書は、最重要証人である國井君のものが7通であり、このほか、白井君のものが2通、塚部さんのものが2通、林谷君のものが1通、小林検事正のものが1通、玉井次席のものが1通だった。
犯人隠避の容疑で市民団体などから告発されていた小林検事正と玉井次席を除き、國井君らの供述調書は、いずれも「被疑者」ではなく「参考人」として録取されていた。
検察庁の供述調書は、被疑者とそれ以外の参考人とで書式が異なる。取調べの中で黙秘権が告知され、あるいはその存在を認識していたとしても、書式が参考人であれば、その立場で取り調べられていたということになる。國井君らも同様だった。
中村孝検事が「最高検は本気で、徹底的にやる」と啖呵を切っていた以上、少なくとも隠ぺいに関わった関係者は共犯の疑いありとして最高検に犯人隠避罪で認知立件された上で、被疑者として取調べを受けているに違いないと思い込んでいた。
その上で、大坪さんらが起訴された際、併せて不起訴という正式処分が下されており、少なくとも國井君は「嫌疑不十分」ではなく、上司に逆らえなかったといった理由から「起訴猶予」になっているものとばかり思っていた。
とは言え、最高検は大坪さんや佐賀さんを悪人とするストーリーで突っ走っているわけだから、それ以外の全員を被疑者ではなく参考人として取り扱うというのも、うなづける話ではあった。
取調べ官の個性が出る
また、関係者の取調べを担当したそれぞれの検事の個性もよく出ており、興味深かった。
例えば、取調べ室の中で出ていたであろう國井君のナマの供述を取捨選択し、上手く供述調書にまとめているなと感心しつつも、どうでもいいような余事記載も目立つ伊藤栄ニ検事。逆に、白井君を取り調べ、供述調書に余事記載が一切なく、事件の流れも実に美しくまとめている石島正貴検事。
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