Yahoo!ニュース

西高東低の気圧配置でも太平洋側で雪

饒村曜気象予報士
1月15日8時17分30秒の気象衛星「ひまわり」の赤外画像

日本付近は、冬の代表的な気圧配置である西高東低型で、等圧線は、ほぼ南北方向に走っています。

気象衛星から見た発達した雪雲

北日本から東日本の上空約5000メートルには氷点下39度以下の寒気が流れ込んでおり、日本付近は、等圧線がほぼ東西に伸び、東側で気圧が低く、西側で気圧が高い「西高東低の気圧配置」となっています(図1)。

図1 地上天気図(1月15日3時)
図1 地上天気図(1月15日3時)

そして、等圧線の間隔が狭く、北西からの強い季節風が吹いています。

気象衛星写真では、日本海にできる筋状の雲が、アジア大陸に近いところから筋状の雲が発生してしています。これは、強い寒気が日本に向かって入っていることを示しています。

寒気が日本海に入ると、相対的に暖かい日本海から大量の熱と水蒸気の供給を受け、対流雲が発生し、脊梁山脈によって上昇させられ、日本海側の地方では雪となります。

そして、太平洋側の地方では、脊梁山脈を超えて乾いた空気が吹きおりて晴れるというのが、一般的な「西高東低の気圧配置」です(図2)。

図2 西高東低の気圧配置のときの雪
図2 西高東低の気圧配置のときの雪

しかし、今回の寒気のように、寒気が非常に強い場合は、日本海の雪雲が発達し、脊梁山脈の低いところから太平洋側に雪雲が流出します。

気象衛星写真では、日本海で隙間なく発生した雪雲の列が脊梁山脈にぶつかって日本海側で大雪を降らせていますが、大西洋側でも、いくつもの雪雲の列が脊梁山脈の低いところから太平洋側に流出しています(図3)。

代表的なのは、若狭湾付近から流入する雪雲で、脊梁山脈が低い関ヶ原付近を通って、東海地方に流入しています。

図3 気象衛星「ひまわり」から見た雪雲(1月15日0時50分)
図3 気象衛星「ひまわり」から見た雪雲(1月15日0時50分)

関ヶ原の雪と伊勢の雪

東海道新幹線は、関が原付近で雪の影響をうけて遅れや運休することが多いのは、脊梁山脈が低く、太平洋側へ流出する雪雲の通り道になっているためです。

昔の東海道は、名古屋から関ヶ原付近を通らず、もっと南を通って京に向かっていたのは、冬の雪の影響を回避するためと思います。

もし、昔の東海道に沿って新幹線が建設されていたら、新幹線が雪による遅れは運休はずっと減っていたと思われます。

日本海側で雪を降らせ、乾燥した空気であっても、太平洋側の暖かい海の上にくると、日本海ほどではありませんが、雪雲が発達し、それがかかる場所では雪となることがあります。

関ヶ原付近から伊勢湾に入った気流は、そので少し発達してから伊勢湾入口にある志摩半島にかかります。

このため、伊勢神宮がある伊勢志摩は、太平洋側の他の地方に比べて、西高東低の気圧配置のときに雪が降りやすいといえます。

ほかの太平洋側の地方と違って、冬でも雪雲がかかりやすい志摩半島は、古代人にとって神秘の地だったのかもしれません。

脊梁山脈が高い関東地方の平野部でも雪

日本海にでできる雪雲がかなり発達しても、関東地方の脊梁山脈は高く、なかなか超えませんが、季節風が低い場所をすり抜けることで風が収束する場所(例えば、相模湾)ができ、そこで発達した雪雲によって、関東地方の平野部でも雪が舞うことがあります(図4)。

図4 中部日本における冬の地上風系
図4 中部日本における冬の地上風系

雪の量としては多くないのですが、普段は雪の少ない地方の雪ですので注意が必要です。

タイトル画像にあるように、日本海での筋状の雲の始まりは大陸から離れてきましたし、太平洋側へ流出する雲の列も少し少なくなっています。

しかし、日本付近の強い冬型の気圧配置は、16日にかけて続く見込みで、北日本から西日本では、日本海側を中心に降雪が続き大雪となる見込みですので、日本海側の地方で雪に警戒が必要です。

また、非常に強い寒気ですので、普段の西高東低の気圧配置のときと違い、太平洋側でも雪に注意が必要です。

最新の気象情報の入手に努めて下さい。

図4の出典:河村武(1966)、中部日本における冬の地上風系-とくに冬の季節風に関連して、地理学評論。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事