メッシとアルバの連携力が向上中。ネイマール移籍で、災い転じて福となす。
災い転じて福と為す。何が起こるか分からないのが、フットボールの醍醐味だ。
バルセロナは今季開幕前にネイマールがパリ・サンジェルマンへの移籍を決断。これは理事会にとって、「災い」となった。
契約解除金2億2200万ユーロ(約290億円)という大金を置き土産に移籍を決めたネイマールだが、バルセロニスタが納得するはずもなかった。怒りの矛先はスペインを去ったネイマールではなく、ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長をはじめとする理事会に向けられた。
昨年9月には、過去2度会長選に立候補した経験があるアグスティ・ベネディト氏を中心に、理事会の不信任動議を求める署名活動が本格的に行われた。一歩間違えればバルトメウ会長の首が飛びかねない状況まで、クラブは追い込まれていたのである。
■アルバのアシストが急増
「福」とは、ネイマールの退団で、恩恵を受けた選手のことである。
その筆頭が、ジョルディ・アルバだ。アルバは昨季、一時3-4-3へのシステムチェンジを真剣に検討していたルイス・エンリケ前監督の下で、定位置を失いつつあった。
だが今季のアルバは見違えるようなパフォーマンスを披露している。リオネル・メッシとの連携力は日に日に向上しており、ここまでメッシの23得点中7得点がアルバのアシストによるものだ。
これまでメッシとアルバのコンビネーションは特筆すべき点ではなかった。メッシに対するアシスト数ではダニ・アウベス(現パリ・サンジェルマン/42アシスト)、アンドレス・イニエスタ(34アシスト)、シャビ・エルナンデス(アル・サッド/31アシスト)、ルイス・スアレス(25アシスト)、ペドロ・ロドリゲス(チェルシー/25アシスト)に次いで、アルバ(15アシスト)は6位に位置している。
■「MSN」への依存
メッシ、スアレス、ネイマールの「MSN」をメインエンジンとしたバルセロナの攻撃は、カウンターに傾倒していった。
シャビが2015年夏に退団してからは、その傾向がより強くなった。遅攻を選択するまでもなく、圧倒的な決定力を誇る3トップが、試合を決めてしまう。3シーズンで364得点を叩き込んだ「MSN」に異論を挟む者はいなかった。
あまりにも速い攻撃に、サイドバックが上がる時間は作られなかった。後方から上がってくる選手を待って局面で数的優位をつくるより、相手の陣形が整う前に個々の能力によって1対1で打開を試みた方が、効率が良かったのである。
だが今季から就任したエルネスト・バルベルデ監督は、守備から基礎を固めていくことを決意する。ネイマールの退団を受け、何かしらの変化を起こさなければチームが崩壊すると指揮官は予見していた。
■バルベルデの就任で生じた変化
今季のバルセロナの最大の特徴は連動したプレスであり、攻守の切り替えのスピードだ。
ただ、バルベルデ監督はそれだけでは不十分だと感じていた。そこで4-4-2を敷くチームで、サイドバックが虚をついて相手ディフェンスラインの裏に飛び出す「偽ウィング」という役割がアルバに与えられた。
メッシのリーガでの得点パターンを見ると、左サイド(17%)、中央(48%)、右サイド(35%)と振り分けられる。左サイドでの得点数が少ないのはそのスペースをアルバに譲っているからであり、そこからの折り返しを中央でフィニッシュする形が多いのも数字が示している。
ネイマールの移籍で戦力ダウンが目に見えていたチームが、半年後にリーガエスパニョーラの首位を独走しているなど、誰が想像しただろう。災いさえも追い風にしたバルセロナが進化を続けている。