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横浜ー東北 履正社-高川学園  夏の甲子園組み合わせ決まる

森本栄浩毎日放送アナウンサー
夏の甲子園の組み合わせが決まり、横浜は東北と。履正社は高川学園と初戦でぶつかる

好投手が多く、ハイレベルな熱戦が期待される夏の甲子園。4日午後、大阪市内で組み合わせ抽選会が行われ、初戦のカードが決まった。

優勝候補同士がいきなり初戦で当たることはなく、ひとまず強豪が分散した印象だ。ただ、試合日によって強豪集中もあり、勝ち上がればかなり早い段階で強豪同士が激突する可能性がある。初日から個々の試合を展望する。

=智弁は春に続く初日登場 ~1日目=

開幕戦は佐久長聖(長野)と鳴門(徳島)。鳴門の左腕・河野竜生(3年)は、1年から甲子園を経験するが、いずれも初戦敗退。3度目の正直に燃える。長聖の藤原弘介監督(41)は、「(開会式直後で)通常の入り方とは違うのでそのあたりがどうか」と困惑気味だった。長聖の投手陣の踏ん張りが勝負のカギだ。第2試合にはセンバツの覇者・智弁学園(奈良)が登場し、初出場の出雲(島根)の挑戦を受ける。智弁の岡澤智基捕手(3年=主将)は、「村上(頌樹=3年)は、疲れはあると思いますが、気持ちが出せるのでやってくれると思います」とエースへの信頼を口にした。センバツで、開幕戦に勝って優勝した智弁にとって、初日の試合は吉兆だ。出雲の原暁(3年)が、中盤まで粘って王者を追い詰められるか。第3試合は3年連続の九州国際大付(福岡)が盛岡大付(岩手)と。昨夏より長打力は劣るが、相変わらずの得点力を誇る九国は、課題だった投手陣も安定してきた。盛岡大付は、小刻みな継投で失点を防いで終盤勝負に持ち込みたい。

履正社・寺島、東邦・藤嶋が登場 ~2日目

2、3日目は強豪が相次いで登場する。2日目はます春夏連続のいなべ総合(三重)と2年連続の鶴岡東(山形)から。いなべはセンバツで投手陣が踏ん張れず惜敗したが、水谷優(3年)が柱に成長し、失点を計算できるようになったのは大きい。鶴岡東はクリーンアップトリオが予選で本塁打を放っていて、打線の力は互角だ。第2試合は中京(岐阜)が大分と。大分は春の九州大会で秀岳館(熊本)を破るなど上り調子。中京はチーム打率こそ.269と低調だが、強打・今井順之助(3年)の前に走者を置いて攻めたい。

健闘を誓い合う高川・相田主将(左)と履正社・四川主将
健闘を誓い合う高川・相田主将(左)と履正社・四川主将

そして第3試合で履正社(大阪)が高川学園(山口)と。履正社の寺島成輝(3年)は予選29回で43三振。高川の山野太一(3年)は145キロの速球を武器に予選47回で51三振と今大会屈指の左腕の力勝負に注目。山野が本調子なら強打の履正社といえども大量点は見込めない。機動力も高川の持ち味で、走者が寺島にプレッシャーをかけて揺さぶれれば面白い。履正社の岡田龍生監督(55)は、「勝って当たり前と思われるのは辛いです。きちっとした野球をしたい」と初戦を前に控えめだった。第4試合にも優勝候補の東邦(愛知)が登場して、24年ぶりの北陸(福井)と。エース・藤嶋健人(3年)が好調の東邦がスケールで上回る。攻守に粘り強い北陸がどこまで食い下がれるか。

横浜は東北と 常総ー近江は投手戦か ~3日目

3日目の第1試合は、33年ぶりの市尼崎(兵庫)と常連の八戸学院光星(青森)の興味深い一戦から。予選で報徳学園を完封し、センバツ8強の明石商の吉高壮(3年)に投げ勝った市尼崎の平林弘人(3年)の投球が大きなポイント。光星は東北勢トップのチーム力で、投手陣や攻撃パターンも多彩な試合巧者。平林がどこまで踏ん張れるか。山梨学院と長崎商も興味深い。山梨学院の吉田洸二監督(47)は長崎出身で、清峰をセンバツ優勝に導いた。長崎商の西口博之監督(55)とは旧知で、「こんなことがあるんですね」と顔を見合わせて苦笑い。西口監督が、「試合が(長崎原爆の日の)9日ですし、こんな日に試合ができる喜びを感じています。胸を借りるつもりで頑張りたい」と言えば、吉田監督も、「今年は関東勢が強いですが、ウチは一番弱いのでご安心ください」と笑顔で応じていた。

抽選のクジを引く横浜・公家主将。予選で3本塁打を放ったスラッガーでもある
抽選のクジを引く横浜・公家主将。予選で3本塁打を放ったスラッガーでもある

打線は山梨学院に一日の長があり、予選を一人で投げ抜いた長崎商のエース・本田一政(3年)に期待がかかる。そして第3試合が横浜(神奈川)と東北(宮城)に決まり、抽選会場が一番沸いた。豪腕・藤平尚真(3年)と予選14本塁打の強打線を誇る横浜は、履正社と並ぶ優勝候補。東北の変則左腕・渡辺法聖(3年)が、うまくタイミングを外して失点を食い止められれば好試合が期待できる。昨年の決勝が神奈川ー宮城の対決で、今大会はそのライバル校によるリマッチになった。初采配となる横浜の平田徹監督(33)は、「選手たちを信じ、力を出せるようにサポートしたい」と気負いは感じられない。第4試合も好投手対決になった。

近江の京山は予選無失点と絶好調。常総・鈴木との投げ合いは必見だ
近江の京山は予選無失点と絶好調。常総・鈴木との投げ合いは必見だ

常総学院(茨城)の左腕・鈴木昭汰(3年)と近江(滋賀)の本格右腕・京山将弥(3年)は大会を代表する逸材。近江の多賀章仁監督(56)は、「投手で勝負できる展開に持ち込みたい。そのためには中盤まで競り合わないと」と僅差勝負を望んだ。総合力は常総に分があるが、1年生4番・北村恵吾ら、下級生が好調の近江打線は勢いに乗ると怖い。2日目、3日目に強豪が集中した。この勝者8校が2回戦で激突する。

第4試合に徳栄・高橋昂が登場 ~4日目

4日目は常連校対決から。昨夏4強の関東一(東東京)は、昨夏も活躍した堀瑞輝(3年)が健在の広島新庄と。

昨夏も投げた新庄の堀は球速が大幅にアップ。狙って三振を奪える
昨夏も投げた新庄の堀は球速が大幅にアップ。狙って三振を奪える

センバツで打線が沈黙し、東邦に完敗した関東一は、夏になっても打線は湿りがちだった。広島予選44回で63奪三振の堀を攻略するのは容易でない。粘りを発揮できるような展開になれば、関東一にも勝機が生まれる。第2試合は打線好調の京都翔英と鹿児島予選決勝の引き分け再試合を勝ち抜いた樟南が対戦。樟南の左腕・浜屋将太(3年)も予選で投球回数を大きく上回る三振を奪っていて、試合の焦点がわかりやすい。主砲・石原彪(3年=主将)ら長距離打者が浜屋の低めのスライダーを見極められれば翔英打線が優位に立てる。第3試合の星稜(石川)と市和歌山も星稜打線と市和歌山の左右好投手の対決が焦点。星稜の2年生4番・寺西建は、長打力では今大会随一。市和歌山は、センバツでも好投した右腕の赤羽陸(3年)と左腕・栗栖拓巳(3年)が安定感を増し、頼もしい。第4試合では、寺島と並ぶ好左腕・高橋昂也(3年)擁する花咲徳栄(埼玉)が、初出場の大曲工(秋田)と。秋田大会のチーム打率が2割を切る大曲工打線が、高橋昂を打ち崩すのは至難の業。ただ、昨センバツで不利とみられた英明(香川)相手に逆転勝ちするなど大曲工の粘りは侮れない。投手を中心にしっかり守って僅差で終盤を迎えられるか。

富山第一ー中越の隣県対決 ~5日目

5日目は3試合。まず、早稲田実を破って初出場の八王子(西東京)が、春夏連続の日南学園(宮崎)と。日南の160センチ左腕・森山弦暉(3年=主将)はセンバツでも好投していて、経験値で上回る。八王子は機動力を絡めて、好機を得点に結びつけたい。安藤徳明監督(55)は、「相手は伝統校ですが、初めての甲子園なので自分たちの力を出すだけです」と無欲を強調した。第2試合は、富山第一と中越(新潟)の今大会唯一の隣県対決。予選決勝で富山商を完封した森圭名(もり けいな=2年)が軸になる富山第一が投手力で上回るか。中越は小柄な左腕の今村豪(3年)が力強い球を投げる。第3試合から2回戦に入り、日程的にはこのクジが理想的だ。ここに入ったのが嘉手納(沖縄)と3年前の覇者・前橋育英(群馬)だ。前橋育英の伝統の守備力は健在で、予選6試合で失策はわずか3。春季関東大会でも、今大会出場の横浜、関東一、徳栄を破って優勝している。嘉手納もエース・仲地玖礼(3年)を中心に予選は4失策で乗り切っていて、守りあいでは譲らない。

秀岳館と菊川が打ち合いか ~6日目

2回戦4試合が行われる6日目は、北海道勢が相次いで登場する。10年連続の聖光学院(福島)に挑むのは創部3年目のクラーク国際(北北海道)。経験の差はいかんともしがたいが、「チームワークはどこにも負けない。高校生らしいプレーを見せたい」とクラーク・阿部勇斗主将(3年)は一丸野球で強敵に挑む。続いて南北海道の北海が、初出場の松山聖陵(愛媛)と。北海のエース・大西健斗(3年=主将)は打っても4番の大黒柱。昨夏は鹿児島実戦で不本意な投球をし、雪辱に燃えて再び大舞台に立つ。聖陵の196センチ右腕・アドゥワ誠(3年)との投手戦が期待できる。第3試合はかつての常連で9年ぶりの夏となる尽誠学園(香川)が6年連続の作新学院(栃木)と。香川予選で小豆島、高松商のセンバツ出場校を破った尽誠は、技巧派左腕の渡辺悠(3年)が原動力。手堅い攻めと粘りが、作新の速球派・今井達也(3年)にどこまで通じるか。第4試合は大型打線の対決。センバツ4強の秀岳館は、予選チーム打率.405。対する常葉菊川(静岡)が同.

410。打ち合いは必至だ。予選で投げなかった堀江航平(3年)も含め、5人の力のある投手を擁する秀岳館が総合力ではやや上で、菊川は投手の交代機に畳みかけたい。秀岳館の鍛冶舎巧監督(65)は、「相手打者との相性などを見極め、誰をどのタイミングで使うか」と自身の采配をポイントに挙げた。

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木更津総合・早川、創志・高田が登場 ~7日目

7日目の第1試合は、これまた好左腕の早川隆久(3年)擁する木更津総合(千葉)が唐津商(佐賀)と対戦。予選決勝で佐賀商から16得点した唐津商打線が、早川のボールになる低めの変化球をどこまで我慢できるか。第2試合に明徳義塾(高知)が登場し、境(鳥取)と。昨夏、今春と初戦で強豪に敗れた明徳は雪辱を期す。日程運も良く、上位進出のチャンスだ。そして対戦相手が決まらなかったのが創志学園(岡山)で、長澤宏行監督(63)は、「予選決勝で、あんなこと(併殺で一旦試合終了もファウルに判定が変わり、逆転勝ち)があって、この大会は何か変な感じですね」と苦笑い。それでも予選で154キロを出したエース・高田萌生(3年)については、「予選の決勝でも150キロを超えていたし、甲子園でも154を超えるんじゃないですか」と期待の大きさをのぞかせた。創志の相手は、初日の3勝者のいずれかになる。

選手宣誓に決まった市尼崎の前田主将。「みんなで宣誓文は考えたい」と意気込む
選手宣誓に決まった市尼崎の前田主将。「みんなで宣誓文は考えたい」と意気込む

また、選手宣誓は、立候補20人で抽選し、市尼崎の前田大輝主将(3年)に決まった。前田主将は、「当たると思っていなかったのでびっくり。でも嬉しい」と笑顔。地元ファンで埋まったスタンドで、最高の晴れ舞台が用意された。

強豪が2回戦で激突

2,3日目に強豪が集中し、ここでの8勝者による2回戦でのつぶし合いが優勝争いの焦点。初戦を突破すれば、履正社、東邦、光星、山梨学院、横浜、常総、近江などの直接対決が見られる。4日目から5日目第2までの6勝者が2回戦で当たるが、この中では徳栄がリードか。創志も含めた2回戦からの登場組では、秀岳館、作新、前橋育英などが8強に近い。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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