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372セーブのクローザーではなく、350セーブのクローザーを手に入れた理由。年齢と年俸は2人とも同じ

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケンリー・ジャンセン Oct 23, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 アトランタ・ブレーブスは、ケンリー・ジャンセンと1年1600万ドルの契約を交わした。ジ・アスレティックのケン・ローゼンタールによると、ブレーブスはジャンセンを手に入れる前に、クレイグ・キンブレル(シカゴ・ホワイトソックス)のトレードについて、ホワイトソックスと話し合っていたという。

 ホワイトソックスは、昨年の夏にキンブレルをシカゴ・カブスから獲得し、シーズンが終わると、年俸1600万ドルの球団オプションを行使した。けれども、この動きは、トレードで放出しないということではない。ホワイトソックスのクローザーは、リーアム・ヘンドリクスだ。また、今オフは、ブルペンにケンドール・グレイブマンジョー・ケリーを加えている。

 ジャンセンとキンブレルは、どちらも2010年にメジャーデビューした。ジャンセンの通算350セーブは歴代13位、キンブレルの372セーブは9位に位置する。今シーズンの年齢(6月30日時点)は、ともに34歳だ。

 昨シーズンは、ジャンセンが69登板で69.0イニングを投げ、奪三振率11.22と与四球率4.70、防御率2.22とFIP3.08、キンブレルは63登板の59.2イニングで、奪三振率15.08と与四球率3.47、防御率2.26とFIP2.43を記録した。

 セーブは38と24。キンブレルは、夏に移籍後、セットアッパーとして登板した。防御率も、移籍前の0.49に対し、移籍後は5.09と悪化した。奪三振率は15.71→14.09、与四球率は3.19→3.91、FIPは1.10→4.56だ。

 2人のうち、ブレーブスがジャンセンを迎え入れたのは、昨夏以降の成績ではなく、入手方法の違いだと思われる。キンブレルをトレードで獲得するには、交換に選手(あるいは金銭など)を差し出す必要がある。一方、FAのジャンセンは、それまで在籍していたロサンゼルス・ドジャースからクオリファイング・オファーを申し出られていないので、契約を交わしてもドラフト指名権などを失うことはない。キンブレルの年俸と同額で手に入れられるなら、ジャンセンのほうがいいと考えても、不思議ではない。

 キンブレルは、通算セーブのちょうど半数に当たる、186セーブをブレーブスで挙げている。4度のセーブ王は、いずれもブレーブス時代だ。新人王に選ばれた2011年から、4年続けてタイトルを獲得した。ただ、そういったことは、今回のブレーブスの判断には影響を及ぼさなかったはずだ。

 なお、ブレーブスには、ウィル・スミスがいるが、今シーズンはジャンセンがクローザーを務め、スミスはセットアッパーに回る予定だ。一方、キンブレルがホワイトソックスで開幕を迎えるかどうかは、まだわからない。もっとも、ホワイトソックスは、何が何でもトレードを成立させたい、とまでは思っていないのではないか。キンブレルが復調すれば、ブルペンはより強固になる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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