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週末は京都西山の絶景紅葉へ!散紅葉も美しい

山村純也京都の魅力を発信する「らくたび」代表
西山の光明寺の表参道。別名女人坂と呼ばれている(※以下の写真も全て著者が撮影)

 アクセスが厳しいこのエリアだが、それだけに穴場感は京都随一と言える。公共交通機関で行くのなら阪急バスが便利だ。JR向日町駅からスタートし、阪急電車の東向日駅を経由して南春日町のバス停まで30分弱。南春日町のバス停で降りると徒歩600メートルで右手には大原野神社、左手には正法寺が見えてくる。こちらは後で立ち寄るとして、そのまま進むと勝持寺の入口に到着する。

勝持寺は、白鳳8(679)年に天武天皇の勅によって役小角が創建、延暦10(791)年に最澄によって再興された古刹だ。階段を登るとすぐに、応仁の乱での焼失を唯一免れた仁王門が迎えてくれる。仁王門を過ぎると竹林の坂道が続き、寺院の塀に突き当たって右に曲がると、鮮やかな紅葉が目に飛び込んでくる。

勝持寺の門前。1本のカエデが紅葉のトンネルを演出
勝持寺の門前。1本のカエデが紅葉のトンネルを演出

受付を済ませると、「花の寺」と呼ばれる桜の名所にもかかわらず、カエデの数も桜と同数あるため、圧倒的な紅葉の量と質に驚くはずだ。特に発色の濃さでは、京都有数の場所と言っていい。

勝持寺の境内(2022年11月30日撮影)
勝持寺の境内(2022年11月30日撮影)

 本堂横にある宝物館では本尊の薬師如来坐像を始め、胎内仏、日光菩薩、月光菩薩、十二神将、仁王像、西行像など見ごたえ充分の仏像群が拝観できる。

 その後、紅葉のテーマからは逸れるが隣の願徳寺にはぜひ立ち寄りたい。こちらは、寺伝では如意輪観音像と伝わる本尊が国宝に指定されている。寺院の方による宝物館での説明は、流暢でわかりやすく、照明を落としたあとに厨子内がライトアップされるため、観音様の荘厳さ、尊さをより実感できる。

 その後、来た道を戻りつつ、途中で左にそれると大原野神社の境内に到着する。平安時代以前から鎮座する藤原氏ゆかりの古社で、藤原氏に娘が誕生すると天皇への入内を願って祈願し、それが叶うと行列を仕立てて一族で参拝するのが慣例となっていた。

 参道は紅葉のトンネルとなっており、奈良の猿沢の池を模した鯉沢の池があり、大伴家持が愛飲したという瀬和井の清水も境内に湧く。

池に映り込む紅葉が、平安後期の華やかな時代を彷彿とさせる
池に映り込む紅葉が、平安後期の華やかな時代を彷彿とさせる

 最後に訪れたいのは、「西山のお大師さん」の呼び名で親しまれる正法寺(しょうぼうじ)だ。「石の寺」とも呼ばれる理由は、ペンギン、象、浜千鳥など通常は庭園には配されない15種類の動物を象った石庭があるためで、こちらは春には一本のしだれ桜が圧倒的な存在感を放つ。紅葉という観点では、門前に立つ地蔵菩薩がポイント。紅葉とセットでお姿を写真に収めてみよう。

写真奥の真っ赤なカエデ越しに眺めるのも絵になる
写真奥の真っ赤なカエデ越しに眺めるのも絵になる

 今回紹介したエリアは、点在する西山の寺社の中で、四つの社寺が固まるお薦めのエリアだ。もちろん西山エリアでの紅葉の大本命ともいうべき粟生光明寺にも足を運んでほしい。

 駅前でアクセス至便な場所でいうと、長岡天満宮をお勧めしたい。阪急電車の長岡天神駅から徒歩5分。こちらはキリシマツツジの名所のため、紅葉の時期は穴場となっている。平成19年に整備された紅葉庭園である「錦景苑」もぜひ訪れてみてほしい。

紅葉庭園は無料開放されているのも嬉しい
紅葉庭園は無料開放されているのも嬉しい

京都の魅力を発信する「らくたび」代表

1973年、京都生まれ。立命館大学在学中にプロの観光ガイドとして京都・奈良を案内。卒業後は大手旅行会社に勤務。2006年4月、京都観光を総合的にプロデュースする「(株)らくたび」を創立。以後、ツアープロデューサー、ツアー講師として活躍。2007年3月に「らくたび文庫」を創刊。現在、NHK文化センター、大阪シティーアカデミー、ウェーブ産経、サンケイリビング新聞社の講師、京都商工会議所の京都検定講師も務める。著書・執筆に『幕末 龍馬の京都案内』、『京都・国宝の美』、『見る 歩く 学ぶ 京都御所』(コトコト)など。京都検定1級取得。

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