『源氏物語』と紫式部ゆかりの地を巡る~宇治編~
『源氏物語』と紫式部ゆかりの散策の一番のおすすめは宇治エリアです。
まずは紫陽花から蓮へと見頃が変わる時期となる花の寺・三室戸寺へ。京阪電車の三室戸駅から徒歩20分ほどで前へ到着します。境内の紫陽花は2万株を数えて京都随一のボリュームを誇り、この時期から本堂前の鉢植えの蓮が午前中を中心に見事に花を咲かせます。本堂の奥にある鐘楼の脇には、「宇治十帖の石碑」の一つである「浮舟古蹟碑」も立てられています。
三室戸寺を出て土色に舗装されたアスファルトを辿っていくと、蜻蛉石が見えてきます。こちらは「蜻蛉古蹟碑」も兼ねており、石の上には線刻された阿弥陀三尊を拝むことができます。平安時代に遡ることができる貴重な尊像です。
その後は、宇治市源氏物語ミュージアムへ。平成10年の開館以来、充実した常設展と特別展が展開されており、今年まさに注目の施設です。
さらに与謝野晶子の歌碑が立つ「早蕨の道」を通って、世界遺産の宇治上神社へ。本殿の建築が1060年代と判明しており、日本最古の本殿建築として世界文化遺産に認定されています。門前の道を辿ると宇治の氏神として信仰を集める宇治神社にもつながっており、宇治上神社とともに、神様の使いである可愛らしい兎たちが迎えてくれます。
宇治神社の門前には宇治十帖のモニュメントとして、匂宮と浮舟が小舟に乗って宇治川へ出ていくシーンが再現されています。さらに宇治神社を出て左側には恵心院があり、『源氏物語』でも横川の僧都として登場する恵心僧都が創建したと伝わります。
朝霧橋を渡っていよいよ浮島へ。渡った場所が橘島、その上流が塔の島と呼ばれ、日本最古にして最大の十三重の石塔が目に飛び込んできます。
最後に訪れた平等院は、藤原道長の別荘を子の頼通が寺院に改めました。その年はまさに末法元年である永承7(1052)年。この世の栄華を誇るというよりも、この世の荒廃を歎き、せめて来世は極楽浄土に行きたいと願っているところが、この時代の華やかな影に隠れた深刻さを表しているのかもしれません。
最後は平等院表参道でお買い物をお楽しみください。平等院門前から宇治橋まで続いており、宇治橋の橋詰には紫式部の石像があります。宇治は京都市内と違い、自然が豊かに残り、山並みや川、橋に至るまで平安時代当時に想いを馳せることができる絶好の場所です。
京阪宇治駅の北側に2021年に完成した体験型施設「茶づな」ではNHK大河ドラマ展も開催中です。そちらもぜひお立ち寄りくださいね。