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するなら今月中に、何かと話題の「ふるさと納税」

浅田里花ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ・1級FP 技能士)
財政が厳しく人口も少ない自治体に、お金を回す方法があります。(ペイレスイメージズ/アフロ)

好きな地域に、実質2000円の負担で寄附できる

 話題になっているのは知っているけど、実際に行ったことはないという人が多いという「ふるさと納税」。これは自治体への寄附を後押しする制度で、現在はふるさとを離れて働いているけれども何か地元に貢献したいとか、あこがれや思い入れのある地域を盛り上げたいとか、地震や台風などで大きな被害を受けた地域に寄附したいといった思いを、制度の利用で実現することが可能となります。

 それならば普通に寄附すればいいようなものですが、この制度の利用には大きなメリットがあります。 

 まずは、寄附金の実質負担額を2000円で済ませられること。一般的に自治体に寄附した場合は「寄附金控除」の対象となり、確定申告することで寄附金額の一部が所得税・住民税から控除されます。つまり、控除された税額分、寄附金額の実質自己負担額が下がるわけです。

 それが「ふるさと納税」では、原則として寄附金額から2000円を除いた全額が控除の対象と大きく、制度利用へのモチベーションが上がるというものです。

 ただし、年収と家族構成によって、全額控除対象となる年間上限額が違います(2000円は負担)。たとえば、「ふるさと納税」を行う本人の年収(給与収入の場合)が600万円で配偶者の給与収入が141万円以上、大学生と高校生の子どもがいるというケースでは、目安として5万7000円が年間上限額です。わが家の場合は目安がいくらくらいなのか、総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」で確認しておくとよいでしょう。http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html

 「ふるさと納税」で所得税・住民税の控除を受けるためには手続きが必要です。個人事業主や年収2000万円以上の給与所得者、年間20万円以上の副業収入がある給与所得者などは確定申告を行います。確定申告が不要の給与所得者のうち、寄附先が5団体以内の場合については、確定申告が不要になる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が利用できます。「ふるさと納税」を行う際、寄附先の各自治体に申請書を提出すればOKです。

 税金は1月1日~12月31日の所得を元に計算されますから、12月中に「ふるさと納税」を行えば2017年の税額計算に間に合います。ですが、年末ギリギリだと事務処理等が追いつかない可能性もあるので、すると決めたなら早めに手続きしたほうがいいでしょう。

バラエティに富んだ「返礼品」の特典も

 「ふるさと納税」のメリットとしてよく取り上げられるのは、何といっても「返礼品」がもらえることです。寄附してくれた人に地域の特産品などをプレゼントする自治体が多く、それが「ふるさと納税」をするひとつの楽しみとなっています。

 ですが、実質負担額の2000円をはるかに超える返礼品もあって、本来の趣旨である「どこに寄附したいか」ではなく、「どこが何をくれるか」で寄附先が選ばれる傾向が出てきました。自治体の間でも寄附獲得のための返礼品競争が過熱し、やはり寄附金を地域のため有効に使ってもらいたいという本来の趣旨を逸脱しています。

 そんなこともあって、今年4月には返礼品のルールの見直しが行われました。返礼品目当ての人には残念でしょうが、返礼品は寄附先からの「ちょっとしたお気持ち」程度に考えておいたほうが、制度を長続きさせるためにいいかもしれません。

 もうひとつ知っておきたいのは、寄附が集まる自治体がある一方で税収の減る自治体があることです。「ふるさと納税」は、住んでいる自治体に納めるのが基本の住民税を、寄附先の自治体に振り替える効果があるためです。

 今、住んでいる自治体の状況はどうなっているでしょうか? もし、「ふるさと納税」をする人が多くて税収が減っているという状況なら、いずれは行政サービス低下の要因となりかねません。寄附により貢献したいという思いを大切にしつつ、暮らしている自治体の財政にも目を配る必要がありそうです。

ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ・1級FP 技能士)

㈱生活設計塾クルー取締役、個人事務所リアサイト代表、東洋大学社会学部 非常勤講師。同志社大学文学部卒業後、大手証券会社、独立系FP会社を経て現職。一人ひとり・家庭ごとに合った資産設計、保障設計、リタイア前後の生活設計等のコンサルティングのほか、新聞・雑誌等への原稿執筆、セミナー講師などを行う。著書に『50代からの「確実な」お金の貯め方、増やし方教えて下さい』、『住宅・教育・老後のお金に強くなる!』、『お金はこうして殖やしなさい』(共著)など。生活を守り続けるにはマネーリテラシーを磨くことが大切。その手伝いとなる情報を発信していきたい。

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