ポケモンGOが科学界に与えた影響
科学者もプレイ
7月に公開されたポケモンGO。さすがにひところの熱狂は失せた感じだが、まだまだ続けている人が多い。
かくいう私もそうで、8月20日に記事「ハマってみて分かった~ポケモンGOは科学への興味を促すか?」を書いてからちょうど3か月、筆者は11月20日、国内で捕獲できるポケモン142種類をすべてGETした。
その後も地味に続けており、新たに投入された「メタモン」を探して右往左往している。
夢中になっている人のなかには、科学者や医師、博士号を持った人もいて、私のフェースブックのタイムラインにも楽しむ様子が投稿されてくる。ひそかにやっている大学教授がいるという話も聞く。
論文、記事が出始めた
こんなポケモンGOに、生物学者、医学者が注目している。
医学・生命科学のデータベースであるPubMedを用いて「Pokemon GO」のキーワードで検索すると、16本の記事、論文がヒットした(2016年11月25日現在)。
たとえばこんな感じだ。
- Can "Pokemon GO" rescue shut-ins (hikikomori) from their isolated world?(ポケモンGOはひきこもりを隔離された世界から救い出せるか)
- Pokemon Go: A game changer for the physical inactivity crisis?(ポケモンGO:身体不活動の危機を変えるゲーム?)
- Pokemon GO May Increase Physical Activity and Decrease Sedentary Behaviors.(ポケモンGOは身体活動を高め、座りがちな行動を減らすかもしれない)
- A walk in the park: Is Pokemon Go foreshadowing the future of biodiversity research and scientific outreach?(公園を歩く:ポケモンGOは生物多様性研究の世界と科学的アウトリーチの未来の前兆?)
運動不足の中高年やひきこもりの人を野外に出す力に注目が集まっている。
10月からポチポチ出はじめ、11月には数本出ている。今後増えていくだろう。
現段階では疑問形のものが多く、「かもしれない」レベルではあるが、研究者がポケモンGOに注目していることは分かる。
ポケモントレーナーは市民科学者になる
Nature誌の投書欄には、こんな文章が掲載された。
生態学者の父親が、娘と野外に出かけ、父は鳥を、娘はポケモンを追った。ポケモンの横に鳥が映り、父親に「これは何?」と聞いたところ、珍しい鳥だった、という話。
これだけ人を野外に促すのだから、そのデータを科学に使えないだろうか、という声も。
ポケモントレーナーは科学を担う市民科学者になるかもしれない、ということだ。
ポケモンGOそのものでなくても、中高年やひきこもりの人も含めた多くの人を継続してプレーさせ、野外に促した仕組みを応用すれば、様々なことができる。いずれビッグデータ解析などされて、何かが見えてくることだろう。
マイナス面も
もちろん良いことづくめではなく、事故も気になるところではある。
日本でも運転者が事故を起こし、亡くなられた方がいる。ご冥福をお祈りしたい。
おそらく事故の率で言ったら、運転中にLINEを見るといったような、ほかの原因のほうが高いと思うが、亡くなられた方がいるのは厳然たる事実だ。習慣化するような単純な行為、たとえばメールやLINEを見るといった行為は、車の運転中でもやってしまう可能性があるのは知られていたが、ポケモンGOもその一つだということだ。
現在ある速度以上の移動中の物体のなかでは、ポケモンもGETできないし、ポケストップからアイテムも取れないようになっているが、停止していたときに捕獲を始めていたポケモンは、その後移動中になっても捕獲を続けることができるなど、いろいろあらがある。改善の余地はあるので、関係者の方はぜひその点ご考慮いただきたい。
いずれにせよ、科学者も注目するポケモンGO、まだまだ注目の存在だ。