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【吉報】今年のサンマは、去年よりサイズが大きく、量も多く獲れそうです!

勝川俊雄東京海洋大学 准教授、 海の幸を未来に残す会 理事
(ペイレスイメージズ/アフロ)

秋といえばサンマですが、ここ数年、漁獲量の減少が続いています。今年も7月からサンマ漁が始まったのですが、出だしは不調でした。

今年のサンマ漁の第一弾となる道東沖の小型船(10トン未満)流し網漁が解禁され、釧路市の釧路港副港に10日未明、約700キロが初水揚げされた。不漁を反映し、1キロあたり3万3千円の高値がついた。

出典:朝日新聞 デジタル 2018年7月11日

サンマは普段は太平洋の中央の公海に生息しています。産卵のために回遊してくる群れの一部が日本周辺を通過し、日本漁船に漁獲されています。サンマの来遊量は年によって大きく変動し、回遊メカニズムなどが不明なことから、去年までのデータから今年の来遊量を予測をするのが難しくなっています。そこで、日本の研究機関、水産研究・教育機構が毎年6月~7月に船を出して、サンマの来遊量のモニタリング調査をしています。太平洋の広いエリアを実際に操業して、日本の方に向かっているサンマの来遊量を調べます。平成30年度の調査結果が7/31に公開されたので、報告書の内容について整理をして、今年のサンマ漁について考察してみましょう。

報告書はこちらからダウンロードできます。

今年の6~7月に行われたサンマの漁期前調査の結果によると、今年のサンマの来遊量は、大型個体(1歳)が多いのが特徴です。漁期序盤(9月中旬まで)の来遊量は前年並と低調に推移するものの、その後、回復します。三陸海域への魚群の南下時期は、例年よりも遅く、漁場の形成は10月中旬となりそうです。

調査の規模を理解するために、報告書の図をより大きな地図を重ねてみるとこんな感じになります。

マップ
マップ

ミッドウェイ諸島を越えて、ハワイに迫る勢いです。こんな遠い所からはるばるサンマは回遊してくるのは驚きですね。サンマは、主に公海に生息する国際資源なのです。

今後の見通しについては、以下のように書かれています。

(1)来遊量:漁期を通じた来遊量は、昨年を上回る。漁期序盤(9月中旬まで)の来遊量は前年並みに低調に推移するものの、漁期中盤以降(9月下旬以降)は前年を上回る。

(2)魚体:漁期を通じて1歳魚の割合が前年より高い (1歳魚の体長は、6月~7月の漁期前分布量調査時に27cm以上、8月以降の漁期中は29cm以上)。

(3)漁期・漁場:大型船出漁直後(8月下旬) の漁場は択捉島以北の海域に形成される。9月中旬に色丹島付近まで南下するが、その後は親潮第1分枝から第2分枝にかけて漁場は分散する。三陸海域への魚群の南下時期は例年より遅く、漁場形成は10月中旬となる

それでは、レポートの中味を見ていきましょう。今年の来遊量を過去の来遊量と比較したのが次の図になります。

来遊量調査の結果
来遊量調査の結果

2018年の来遊量推定値は205万トンで、昨年よりは多いことがわかります。2010,2012、2015、2016と近い水準になっており、これらの年の漁獲量は10-20万トン程度でした。今年もそれぐらいの水準になると思われます。

外国の漁獲の影響についても考えてみましょう。ここしばらく、サンマの漁獲量は40万トン前後をキープしてきました。来遊量が100万トンを割るようだと漁獲量の削減が必要になってくるのですが、今年の来遊量は200万トンあるので、仮に40万トン獲ったとしても、漁獲率は2割に過ぎず、八割の個体が産卵回遊を続けることが出来ます。どこかの国が大幅に漁獲を増やさない限り、他国の漁獲の影響は軽微と云えるでしょう。

外国船よりも気がかりなのは、日本近海の水温が高いことです。こちらの図がサンマの分布図に表面水温をいれたものです。

画像

12度ぐらいの温度を好んでいることがわかります。15度を超えるとほとんどサンマが分布しなくなります。この水温帯が日本近海まで続くかどうかが、サンマが日本の漁場にどれぐらい入りやすいかを決めることになります。

日本近海の8/3現在の水温はこんな感じで、全体的に高くなっています。

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択捉島周辺の水温が、サンマの適温の12度前後になっています。この冷たい水が北海道の方に入り込んで、三陸の側を通ってくれると、豊漁の期待が高まります。逆に高温の水塊が張り出したままだと、サンマは日本には接近せず、日本の漁獲量は伸びないでしょう。

ということで、今年のサンマ漁は去年よりは少し上向きそうです。冷たい水が日本沿岸に入り込んでくれることを祈りつつ、10月中旬を待ちたいと思います。

東京海洋大学 准教授、 海の幸を未来に残す会 理事

昭和47年、東京都出身。東京大学農学部水産学科卒業後、東京大学海洋研究所の修士課程に進学し、水産資源管理の研究を始める。東京大学海洋研究所に助手・助教、三重大学准教授を経て、現職。専門は水産資源学。主な著作は、漁業という日本の問題(NTT出版)、日本の魚は大丈夫か(NHK出版)など。

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