「500人死亡」#ガザ 病院を攻撃したのはどちら?―イスラエルの空爆か現地武装勢力のロケット弾か
パレスチナ自治区ガザのアル・アハリ病院が、17日に爆発し、ガザ保険省によれば「500が死亡した」という問題で、イスラエル軍の空爆によるものとの報道に対し、イスラエル側は否定。「(現地武装勢力の)イスラム聖戦が撃ったロケット弾が病院に落ちた」と主張している(イスラム聖戦側は否定)。現在、外国人ジャーナリストはガザに入れないため、筆者も公開されている情報をもとに状況を分析するしかないのだが、現地の状況から言っても、過去の実例から言っても、イスラエルの主張には、無理があるように思われる。
〇ロケット弾にしては威力が大きすぎる
ハマスの大規模襲撃を受けての、今回のイスラエルのガザへの攻撃開始以来、最大の惨事となったアル・アハリ病院の「爆発」被害。イスラエル側は、「イスラム聖戦によるロケット弾発射の失敗によるもの」と説明し、ネット上では「ガザ側から発射されたロケット弾がイスラエルの防空システムに迎撃されたもの」或いは「ロケット弾が空中で爆発し落ちていったもの」とみられる映像から、イスラエル側に同調する投稿もいくつもある。ただし、この映像を見ても、空中で炸裂し、落ちていった「ロケット弾」とは別のところで大きな爆発があり、この映像をもって「イスラム聖戦によるロケット弾発射の失敗によるもの」というのは、証拠としては不十分だろう。
また、被害を受けたアル・アハリ病院の状況を報じる現地メディア等の映像や、CNNなどの国際メディアの報道を総合すると、爆発の規模はかなり大きく、少なくとも病院の一部が倒壊し、がれきの下敷きとなっている被害者達がいるとのことだ。ガザ現地の武装勢力のロケット弾としては、あまりに威力が大きすぎるというのが、筆者の率直な感想である*。イスラエル側に着弾したロケット弾の被害映像を見ても、病院を一部倒壊させ、500人もの人々の命を奪う様な破壊力は、空中で爆発したロケット弾の残骸には無いと考える方が自然だ。
*追記:イスラム聖戦の新型ロケット弾には大型の弾頭を持つものもあり、これが地上に直接落ちた場合は被害が大きくなることはあり得る(関連情報)。
〇これまでもイスラエルは避難所や病院を攻撃してきた
単純な確率論で言えば、ガザの武装勢力のロケット弾誤射がたまたま病院に当たったより、イスラエル軍がわざと攻撃した方が可能性が高い。イスラエルのこれまでのガザ攻撃を振り返れば、国連関連の施設や医療関係の施設を攻撃し、民間人を死傷させた「負の実績」がある。筆者が現地で取材していた2014年のガザ攻撃では、一般市民の避難所となっていた国連管理の学校が3回もイスラエル軍に攻撃された(関連記事)。この攻撃で、イスラエル軍は当初、「ハマスのロケット弾が誤って落ちた」と主張したが、その後、攻撃の事実を認め、国連も米国もイスラエルを強く批難した。
2014年ガザ戦争から約1年後にまとめられた「国連人権委員会報告書」でも、上述の国連管理の学校への攻撃に加え、「1つの病院と12の一次医療施設が全壊、15の病院と51の一次医療施設が攻撃により大小の被害を受けた」と報告されており、これらは戦争犯罪だと指摘されている。
関連↓
https://www.ngo-jvc.net/activity/news/palestine_20150826.html
〇一時停戦して調査を!
こうした事例からも今回の「ガザ側のロケット弾による被害だ」というイスラエル側の主張をそのまま受け入れることは非常に問題がある。いずれにせよ、ここまで深刻な被害があった以上、一時的にでも停戦して、負傷者への支援、生存者の救出を行うと同時に、国連等による事実確認のための調査を行うことが必要ではないか。
(了)