【ガザ侵攻現場ルポ】イスラエル軍、国連の学校の避難民を攻撃ー散乱する肉片、立ちこめる血の匂い
イスラエル軍のガザ侵攻へ国際的批判が高まる中、またしてもショッキングな出来事が起きた。現地時間30日早朝、パレスチナ自治区ガザ北部のジャバリア難民キャンプで、国連が運営する学校がイスラエル軍に攻撃を受けたのだ。ガザで取材中の筆者も、知らせを聞いて現場に急行した。
◯国連の避難所への攻撃、流血の現場
ジャバリア難民キャンプは、中東戦争以降、多くのパレスチナ人が流れ着いて出来た街で、ガザの中でも最も人口密度の高い地域の一つ。同地区にある「ジャバリアA&B女子学校」は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営するもので、現在はベイトハヌーンなどガザ北部の戦闘の激しい地域から避難してきた人々の避難場所となっている。現場に駆けつけた筆者を待ち受けたのは、むせ返るような血の臭いだ。犠牲者の肉片や血糊、頭蓋骨の破片などが破壊された教室の周囲に散乱していた。犠牲者は周囲の二つの病院へ搬送され、両病院に筆者が確認したところ、死者は22人、負傷者は140人ほどだという*。しかも、死者のほとんどが未成年だった。安全を求め我が家を捨て逃げてきた人々にとって、避難場所である国連の学校への攻撃は非常にショックだったらしく、「なぜ、この様な非道が許されるのか!」と、筆者に興奮気味にまくし立てる避難者も少なくなかった。
- 30日午前の暫定的な統計
今回のガザ侵攻では、先週24日にも北部ベイトハヌーンで、やはり国連の運営する学校が攻撃され、避難していた200人以上が死傷、潘基文・国連事務総長がその声明で強く批難したばかり。筆者はガザ中心部にある主要病院「シファ病院」で、24日のベイトハヌーンでの国連避難所攻撃の被害者に会うことができた。マナール・アルシンバリさん(14歳)は、イスラエル軍の攻撃で、両足と脾臓を失った。さらに彼女の母親と二人の妹(それぞれ、8歳と12歳)など親族5人が死亡したという。イスラエルは、今回のガザ侵攻に関して、イスラム組織ハマスの活動などから「自衛するため」と主張しているが、避難民が集中する国連施設をたて続けに攻撃、多数の死傷者を出したことは、もはや「自衛」の範疇とは言い難いだろう。
◯繰り返される非人道的行為、日本とイスラエルの関係
国連施設への攻撃は、今回にかぎらず、イスラエル軍の「悪しき伝統」と言えるのかもしれない。筆者の取材経験の中でも、レバノン侵攻(2006年)、2008年末から2009年頭のガザ侵攻(「鋳られた鉛」作戦)で、イスラエルによる国連の避難施設や食料・医薬品庫への攻撃の被害を見聞きしてきた。こうした行為はジュネーブ条約等、国際人道法に違反するもので、戦争犯罪として、その責任が追及されるべきものだが、イスラエルの肩を持つ米国の強い抵抗もあり、責任追及は現在まで実現していない。
イスラエル軍による非人道的な行為は日本にとっても人事ではない。安倍政権は昨年3月、米国の最新鋭戦闘機F-35の開発に日本企業も参加できるよう、武器輸出三原則の対象外とした。さらに今年4月、武器輸出三原則そのものを見直した。イスラエルはF-35 の導入を決定しており、今後、日本産の部品を組み込んだF-35が今回のようにガザの一般市民を殺すことにもなりかねないのだ。
ジャバリア難民キャンプでの取材中も、イスラエル軍による砲撃や爆撃の音が鳴り響いていた。この緊張感を日本の人々が共有するのは難しいことだろうが、現場で取材する者として、せめてガザ侵攻で何が起きているのか、関心を持って注視していただければ、と願うばかりだ。