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松島幸太朗はなぜアイルランド代表戦で「2トライ取る」と言ったのか。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
練習中の松島。愛称は「マツ」。(写真:ロイター/アフロ)

 有言実行、再現なるか。

 ラグビー日本代表の松島幸太朗は9月28日、ワールドカップ日本大会・予選プールAの2戦目をおこなう。相手は世界ランク2位のアイルランド代表。22日の初戦ではスコットランド代表に27―3で勝っている。

 史上初の8強入りを目指す日本代表は9月20日、東京スタジアムでの開幕戦で2大会ぶり出場のロシア代表に30―10で勝利。ウイングで先発の松島は3トライを決めたが、試合前にはインサイドセンターの中村亮土が「松島は3トライすると言っていた。有言実行してくれると思います」と明かしていた。

 次戦に向けても、「松島は2トライを、マノ(ロマノ レメキ ラヴァ)に聞いても2トライを獲ると言っていました。4トライは確実です」と中村。淡々とした口ぶりで報道陣を笑わせていた。

 27日は、会場の静岡・エコパスタジアムで試合前日練習を実施。会見した松島は、「2トライ」発言の背景や根拠などについて語る。

 

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――次戦へは「2トライを取る」と宣言しているようですが。

「前回のロシア代表戦ではアタックでうまくいかないところがあった。明日は緊張も取れてもっといいアタックができると見越して。外までボールが回ればチャンスがあるので、ウイングの役割として、2トライを」

――トライは3でもなく1でもなく2。

「そんな特別な理由はないですけど、自分たちのラグビーができれば自然と僕だけじゃなく、ウイングまで回ってきてトライが取れるというチャンスが出てくる。自分たちのラグビーをして崩すことをしないと、勝てない相手。そこをしっかりやっていくってことです」''''''

――対面はジェイコブ・ストックデイル選手。防御の対策は。

「2年前(2017年6月に対戦)も彼とやっている。映像を見ても、左足のチップキックなどが得意でそこからもトライも重ねています。彼にプレッシャーをかける、自由にさせないことを、対面としてはしていきたい。止めに行きたいと思います」

――キック処理で大事にすべきことは。

「バックスリー(ウイング、フルバックの総称)として、やはり相手もプレッシャーをかけてくると思うので、それに耐えるのが第一。たとえこぼれたとしてもしっかりバックスリーでコネクションを強くして、お互いサポートできる立ち位置にいて、相手に簡単にボールを渡さない状況にしたい。まずは(キックを)キャッチする人がキャッチすることから始めいたい」

――アイルランド代表とは2017年6月に対戦して2連敗。当時と比べ、チームと個人はどう成長したか。

「前回とは戦術的に違う部分もありますし、理解度がいまはすごい深まっていると思う。単純にチーム一丸となっているところが前回とは違う。あとはアタックの継続の部分で成長している、自分たちがアタックで繋がって、我慢して(トライを)獲り切れるかがキーポイントになる。チームとしてアイルランド代表に立ち向かっていきたい」

――世界ランク2位のアイルランド代表が相手。4年前のイングランド大会では南アフリカ代表を倒しているが、それに近い雰囲気がある。勝って勢いをつけたいか。

「それはもちろんありますけど、雰囲気に流されるんじゃなく、自分たちの実力を見せたいので、しっかり自分たちの戦術通りにやっていくのがポイント。今週やってきたことを、練習、試合で出していきたいです」

――アイルランド代表はフォワードが強い。バックスから見て気を付けるべきことは。

「ミスで(相手ボールの)スクラムが起きたり、ペナルティで自陣に入られてモールを組まれるのは嫌。自分たちがいかに精度の高いプレーができるかは、フォワードの疲労に関わってくる。不用意なパス、ミスを避けていきたいと思います」

――今回はリーチ マイケル主将がベンチスタート。経験者のベンチ入りはどんな意味合いがあるか。

「(控え選手は)ハプニングが起きて誰かが怪我してすぐに入る場合もありますし、試合中も皆、安心して100パーセントの力を出すこともできるので。経験値の高い人間が後から入ってくることで、いい試合の締め方もできる。もっとリーダーシップを発揮して前に出てくれると思うので、そうした戦術も選手にはいいと思います」

――準備の仕方で違いは。リーダー陣の自信は。

「今週の練習では、リザーブメンバーにプレッシャーをかけられました。その時に自分たちがミスをしたこともあった。プレッシャーがかかった経験はアイルランド戦に向けていい準備になる。リザーブメンバーが準備してくれたことを活かしてやっていきたいです」

――会場のエコパスタジアムの印象は。静岡でどんなプレーを見せたいか。

「今回2度目ですけど、でかいスタジアムですし、選手にとってはこういう大きなスタジアムでやれるのは楽しみでわくわくしている。選手として大きな歓声のなかでプレーできるのはいい経験にもなります。楽しみなところです。明日はしっかりチームでインパクトのある試合をしたいので、最初から全力でやっていきたいです」

――きょうの公開練習時、チームで円陣を組んでいたが。

「『ミスもある。その後、自分たちがどうミスに対してリアクションするか。チームとして落ちない。次に向かっていく』という話はしました」

――ロシア代表戦の3トライで注目されているが、世界に自分をアピールしたい思いはあるか。

「自分の実力というのを出せれば世界にも認められると思いますし、今大会は――個人スポーツじゃないのでまずチームで勝つこと(が大事)ですが――ボールが回ってくれば自分のフットワークで勝負できればと思う。そこをアピールしたい。

(ロシア代表戦の)最初の2トライは取らせてもらった形。もっとボールをもらった時にラインブレイクをしていきたいという気持ちも強い。ボールを持った時のインパクトを大きくしていきたいです」

――ロシア代表戦後、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは「(松島は)外からフェラーリが走ってくるようだ」と話していた。自身は自分を何に例えるか。

「僕のなかでのフェラーリは福岡堅樹です。自分…難しいっすね。あんまりちょっとわかんないです」

――「間違った方向にアタックしているところがある」と課題を話していました。

「外からのスペース空いているというコールが、歓声とかで伝わりにくいところがあるので、そこはバックスリー、外にいる人間はもっと早く内側に的確に情報を伝えたい。そこを意識してやらないと強豪には通用しないと思うので、正確な情報を伝えるためにはまず、コミュニケーションを取っていきたい」

――チームが勝つために一番大事なことは。

「アタックもディフェンスも絶対に切れないこと。我慢し続けないと、簡単にミスをしてしまうし、アタックでは最後、獲り切れるところで獲り切れないし、ディフェンスでは簡単に抜かれる。アタックもディフェンスもコネクションを持って、隣の人間と話していく」

――いいパフォーマンスをするために気にしていること。

「ルーティーンとかはないですけど、個人的にはできるだけリラックスする。その時に思って、行動する。リラックスをするというのは決めています」

――自身への報道はチェックするか。

「見ないというのは、この時代に不可能。うーん、自分のSNS、LINEで連絡はすごい来るので。自分のなかで切り替えることしかできない。切り替えは早くするようにしました」

 松島の言葉通り、日本代表はアイルランド代表の堅牢な防御を組織的な攻めで崩し、空く傾向のある大外のスペースでフィニッシャーを走らせたい。

 組織が有機的に動くスタイルで、世界中のファンを楽しませられるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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