なぜネイマールに“移籍の噂”があるのか?エムバペの残留とパリSGのビッグイヤー獲得に向けた野望。
再構築のためには、何かを変更する必要があるのかもしれない。
2021−22シーズン、パリ・サンジェルマンはリーグ・アンで優勝した。だがチャンピオンズリーグでは、決勝トーナメント1回戦でレアル・マドリーに敗れ、ベスト16敗退が決定した。
■チャンピオンズリーグ制覇の野望
パリSGがビッグイヤー獲得を欲しているのは明らかだ。そのためにチームを再び作り直す必要がある。そこで、移籍の可能性が浮上しているのがネイマールだ。
「我々は若い選手を求めている。才能があり、貢献ができて、勝者のメンタリティーを備えている選手だ。パリSGのエンブレムのために死ねるような選手を欲している」とはナセル・アル・ケライフィ会長の弁である。
「メディアに対して、我々の選手の移籍について話すことはできない。加入する選手がいれば、去っていく選手もいるだろう。しかし、それは私的な交渉だ」
■エムバペの契約延長
パリSGは、2011年にQSI(カタール・スポーツ・インベストメンツ)に買収された。カタール投資庁の子会社である企業の参入で実質上の「国家クラブ」となった。
そのパリSGにとって、重要だったのが2017年夏のネイマールとキリアン・エムバペの獲得である。契約解除金2億2200万ユーロ(約308億円)を支払いネイマールを、移籍金1億8000万ユーロ(約252億円)を支払ってエムバペの獲得を決めた。
パリSGは今夏、エムバペと契約延長を行った。新たな契約は2025年夏までで、年俸は4890万ユーロ(約68億円)になると言われている。これはパリSGひいてはリーグ・アンで最高額だ。
パリSGがエムバペを中心にチームビルディングを行おうとしているのは間違いない。指揮官はマウリシオ・ポチェッティーノ監督からクリストフ・ガルティエル監督に代わることが濃厚とされている。補強に関しても、スポーツディレクターを務めていたレオナルドが解任され、新たにルイス・カンポスが入閣している。
■史上最大の移籍
エムバぺが重宝される一方で、厳しい状況に立たされているのがネイマールだ。
ネイマールは母国のサントスでプレーしていた頃から、将来を有望視されるプレーヤーだった。2013年夏に欧州挑戦を決意して、バルセロナに移籍。バルセロナでは、リオネル・メッシ、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタといったワールドクラスの選手が彼を待っていた。
2014年夏にルイス・スアレスがバルセロナに加入すると、メッシ、スアレス、ネイマールの3トップは破壊的な攻撃力を携えるようになった。「MSN」と称されたバルセロナの前線はアンストッパブルで、2014−15シーズンには、ルイス・エンリケ監督の下で3冠を達成。リーガエスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグで優勝を果たした。
ただ、メッシを核に据えたチームでは、ネイマールのエースの座が遠かった。そして、件(くだん)のパリSG移籍が成立した。2億2200万ユーロでの移籍は、いまもなお、フットボール史上最大の移籍として語り継がれている。
「私は以前、サントスでプレーしていた時のネイマールをビデオで分析していた。彼はサントスの王様だった。対戦相手は何もできていなかった」
「ネイマールがバルセロナに残っていれば、あと2、3回はチャンピオンズリーグで優勝していただろうね。メッシ、スアレス、ネイマールの3トップはベストだった。その後、パリに行ったが、悪い選択ではなかった。私は彼に敬意を抱いている」
これはマンチェスター・シティを率いるペップ・グアルディオラ監督のネイマール評である。
バルセロナに残っていたらーー。ネイマールのキャリアを顧みた時、そのような思いを抱く人は少なくないだろう。
現在、チェルシー、ユヴェントス、マンチェスター ・ユナイテッド、ニューカッスルと複数クラブがネイマールに関心を示している。ただ、扱いが難しい選手ではあり、高年俸というネックもある。ある種のジレンマが、そこには横たわっている。