「働きがい」「やりがい」ある会社にするために! 社風を100%変える「メルコサイクル」とは?
「働きがい」や「やりがい」は組織で準備しようがないファクター
近年、「働きがいのある会社」「やりがいを覚える会社」というフレーズを、ニュースでよく目にします。しかし「働きがい」とか「やりがい」というのは、個人によって受け止め方が違うものですし、そもそもそのような感情を抱くのは「過去を振り返ってから」です。
まだやってもいないのに「やりがい」を考えてもしかたがありません。まだそこで働いてもいないのに「働きがい」を計測しようとしても、理論上不可能です。
「働きがい」「やりがい」というフレーズを使うから、多くの人は迷います。その指標を高めようとしても、会社で準備することができないためです。
多くの人から「働きがいのある会社にするにはどうしたらいいか?」「やりがいを覚えられる会社はどんな会社ですか?」と質問されます。しかし先述した理由から、「そのような言葉をストレートに受け止めてはならない」と私は提案するようにしています。
拠り所は客観的データです。実態として、若い人が「やりがい」「働きがい」を覚える会社は「社風」のいい会社であることは判明しています。統計的に判明しているのですから、会社サイドが努力できることは「社風」をよくすること。この一点です。
現代において「社風」は大きなキーワード
会社の目標を達成させるために「社風」というファクターを無視することはできません。「社風」とは、組織の「風土」といったり「文化」「カルチャー」と表現したりする、目に見えない空気のようなもの。
とくに現代は、影響力の大きなキーワードだと言えます。
「社風」がよければ、組織のパワーを最大限に引き上げてくれます。「1+1=2」ではなく、「1+1=3」や「1+1=4」のような組織にすることも可能です。
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。目標を常に達成できている会社は、例外がなく「社風」がいい。組織の目標はひとりで達成できるものではありません。全員で協力し合って成し遂げるもの。したがって、同じ目的のためにみんなで力を合わせ、がんばろう、うまくいかないときがあっても乗り切っていこう、と励まし合える風土が不可欠なのです。
「社風」がいい会社は、「本来の組織機能」を兼ね揃えています。一般的に言われる組織の「3要素」とは、
●共通の目的をもっていること(組織目的)
●お互いに協力する意思をもっていること(貢献意欲)
●円滑なコミュニケーションが取れること(情報共有)
これら3つです。
組織は組織であって、単なる集団ではありません。メンバーが組織の共通目的に向かって互いに協力し、活発にコミュニケーションをとっている状態が組織のあるべき姿、と言えるでしょう。
「社風」を変えるメルコサイクル
社風のいい会社にするために、私は「メルコサイクル」という改善手法を提唱します。
メルコサイクルの「メルコ」とは、「メッセージ」「ルール」「コミュニケーション」の頭文字をとった造語。それをこの順番でまわしていくことを「メルコサイクル」と私は名付けました。
「メルコサイクル」を解説する前に、現状どのような組織が多いかを「組織の3要素」を意識しながら紹介します。
●「メのみ組織」
「メのみ組織」とは、リーダーが「メッセージ」しか出さない組織です。リーダーは組織の目的をキチンと理解しています。ですから、その目的を果たすために貢献しないメンバーを見ていると黙っていられません。
しかし「メのみ組織」のリーダーは、「もっと生産性を高めていこう」「今期こそは意識改革していこう」といったスローガン、心掛けのようなものを、朝礼や会議で、社長や部長が言い続けて終わり。
リーダーの「メッセージ」は非常に大事です。これがないと何もはじまりません。ただ、リーダーが「メッセージ」しか出さなければ、具体的にどのように動いていいかは当事者まかせ。当事者の主体性や意識の高さによって、メンバーの動きや成果にばらつきが出てきます。
リーダーが「当事者意識に欠けている」「もっと自主的に動いてほしい」と愚痴をこぼすようになったら、社風をよくするどころか、逆に悪くしていきます。リーダーは張り切っているのに、何となく、ギスギスした感じになっていたら要注意です。
●「ルのみ組織」
組織の目的を果たすため、情報共有するためのルールや仕組みはあるが、ルールが形骸化している組織です。ルールがあるのはわかっているが、それを守らなくてもいい「空気」が蔓延しています。
こういう組織は、質問を投げかけることで、すぐにわかります。
「こういうケースは、情報を誰にどう共有化するか、決まってますか?」
「ええっと……。決まってますね」
「決まってる? 決まってるんですか?」
「そうですね……。決まってます。みんな知ってるとは思いますが。いや……最近入った新人は知らないかもしれません」
「ルールが徹底されてない、ということですか」
「そういうことになりますね……」
ルールを守らない理由は単純に「何となく」です。やらなくても許される空気があるから、それだけです。
リーダーに質問しても、「確かにそういうルールになっていたっけ? おい、そういえば、徹底できてないのか?」と、他人事のように言います。
組織の目標に焦点を合わせている人、常に組織の成果を出そうとする人は不満です。心の底では「ルールがあるんだから、みんな徹底してほしい」と思っているからです。
●「コのみ組織」
「コのみ組織」とは、コミュニケーションだけある組織です。「働き方改革」「ワークライフバランス」……といった、時代のキーワードを先取りし、積極的に組織横断型の「飲みニュケーション」「社員旅行」「社内座談会」、上司と部下との「1on1ミーティング」……なども取り入れ、社員が仲良くなるような施策を次々と取り入れます。
役職や部署という垣根を越えてコミュニケーションが活性化していますので、表面的な「社風」はとてもよくなります。
しかし「コのみ組織」の特徴は、何らかの要因で業績がよく、恵まれた環境に依存していることです。
そのため外部環境が変化し、ひとたび業績が落ちはじめると、組織が空中分解することもあります。組織とは名ばかりで、仲のいい「集団」になっていることが多いからです。
手始めはリーダーの強烈なメッセージ
まず「社風」をよくするうえでしなければならないことは(当然のことながら)、リーダーが熱いメッセージを組織全体に発信することです。1回や2回ではなく、何度も何度も、「しつこい」「くどい」と思われるほどに続けます。
メッセージには2種類あります。
1)あり方
2)やり方
「あり方」は、「あるべき姿」「ありたい姿」です。組織としてこうあるべきだ、ありたい、とリーダーは何度も何度も伝えます。これがいわゆる「組織目的」に直結する部分です。「目標を絶対達成する組織にする」とか「何でも言い合える組織にしていく」とかでいいでしょう。
もっと具体的な「方針」「スローガン」でもかまいません。
「生産性の高い組織にする」「離職率の低い会社に変えていこう」
抽象的であろうが、具体的であろうが、いずれも「あり方」です。「あり方」を、朝礼や会議の冒頭、メール……ありとあらゆるコミュニケーション媒体を使いながら発信していきます。
そして最も重要なことは主語を「私」にすること。いわゆる「アイメッセージ」です。したがって、「私は、目標を絶対達成する組織にする」「私は、何でも言い合える組織に変えるまであきらめない」――と、このように。
「社風」のよくない会社のリーダーは、「あなた」「あなたたち」を主語にメッセージを発します。いわゆる「ユーメッセージ」。「もっと意識改革をしていこう」「もっとコミュニケーションを密にしてくれないか」――と、このように。
主語が「私たち」もよくありません。「みんなでやろう」「みんなで協力しあってやっていこう」という、「レッツ~」という言い方です。
そもそも、「社風」がイマイチの組織のメンバーは「主体性」に欠けることが多い。何事も自主的に行わない。そんなメンバーに対して「レッツ~」という声掛けをしても虚しいだけです。
そういう言い方は「社風」がそれなりによくなってから発すればよいのです。
社風がよくないのは、間違いなくリーダーの責任。「みんなで変えよう」というメッセージを発している以上、「私だけでなく、みんなにも責任があるよね?」というメッセージを出しているようなものです。
相手の考え方を変えたいのなら、まずは自分を「変える」こと。この手順を守るべきです。
「ルール」を徹底させる取り組み
最初のうちは、どんなにリーダーが強いメッセージを発しても「また言っている」「どうせ今だけ」と受け取られる恐れがあります。「社風」がよくない状態なのですから、しかたがありません。
しかし、顔を合わせるたびに、何度も何度もリーダーが言い続けると、「今度は本気かも」「従わないとマズイ気がする」という空気ができあがっていきます。まずは、社風革命の空気、雰囲気作りが先。場を暖める行為は、リーダーの姿勢、熱いメッセージの繰り返しが必要なのです。
少し雰囲気が変わってきたら、次にすべきことは「ルール」を徹底させるプロセス。組織の目的が「あり方」であるとすると、ルールは「やり方」です。
存在するのに、守られていないルールは「守れ」とリーダーが言えばいい。もしも未整備なルール、見直すべきルールがあるなら、メンバーたちと話し合って決めていきます。
社風のよくない組織メンバーは、このプロセスを冷めた目で接することでしょう。
「ルールを作っても、どうせ守られない」
「社長は張り切ってるけど、今だけだ」
と、このように。
しかしリーダーは気にせず、淡々と進めます。まだまだ「社風」が発展途上の段階だからだと受け止めましょう。
大切なのは「仕組み」に依存しないこと。
昨今、やたらと「仕組み」という言葉を聞くようになりましたが、「仕組み」は「ルール」を守るために存在するものであり、「ルールなき仕組み」に意味はありません。
「ルール」を作らず「仕組み」だけを導入すると「社風」はかえって悪くなっていきます。
(※「仕組み」とは、新しいルールや制度にはじまり、組織体制そのもの、管理手法や電子デバイス、情報システムにいたるまで、さまざまなものがあります)
「ルール」を作っても守らないメンバーが出てきたら、リーダーは2種類目のメッセージを発していきます。それが「やり方」を含めたメッセージです。つまり……「ルールを守れ」と、しっかり言うことです。「あり方」のメッセージと組み合わせて発信しましょう。
「生産性をよくするためにスタートさせたプロジェクト会議は、全員が出席するルールとなっていたはず。しかし、先日の会議に無断欠席したメンバーがいる。絶対にやめてほしい。このプロジェクトは遊びじゃない。私は生産性の高い組織にするまで、絶対にあきらめない」
「あり方」のメッセージを出しつつ、ルールを決め、「やり方」を守るメッセージを出し続けます。
コミュニケーションが潤滑油の役割に
「メッセージ」と「ルール」を意識することによって、組織は変わりはじめます。しかし「メルのみ組織」だと、ギスギスした空気が漂いはじめることもある。そこで、定期的にコミュニケーションをとる機会をつくりましょう。
ポイントは3つ。
1.自己開示
2.単純接触
3.共時性
です。業務のためのコミュニケーション(用談)ではなく、業務とは関係のないコミュニケーション(雑談)を組織内で積極的にできるよう、ルールと仕組みを整備します。
これも「場」を提供するだけで、自主性に任せてはいけません。必ずルールを決めます。お互いの関係構築には「単純接触」が大事です(単純接触効果)から、濃厚接触の「社員旅行」「運動会」「飲みニュケーション」……といったものではなく、「挨拶運動」「社内座談会」「他部門とのランチ会」などを定期的にやること。
同じ時間ともに過ごしていると関係が構築されやすい、という心理効果を「共時性効果」と呼びます。メールなど、時間差のあるコミュニケーションは共時性効果が働きません。実際に会ったり、メールよりは共時性効果を期待できる「社内SNS」の利用をお勧めします。
雑談コミュニケーションの内容は、「自己開示」できるテーマを設定しましょう。仕事の話は2割以下に抑えることです。社風がよくない状態でメンバーに「自己開示」を強要することはご法度です。
(当然のことながら、リーダーが積極的に自己開示することが大事です)
「メルコサイクル」をまわす
これまでのコンサルティング実績からすると、スムーズに進行しても、ここまで来るのに早くて半年。普通は1年ぐらいはかかります。1年で社風が変わらないとなると、リーダーに原因があります。リーダーの姿勢が中途半端だと遅々として社風革命は進みません。
「社風」はしばらくのあいだ、一進一退を続けます。いったんよくなっても、また何かのきっかけで悪い状態に戻ったりもします。
現在の「社風」が【5】のレベルであれば、最初こそ【5】→【6】→【7】と順調に「社風」は変化していきますが、ちょっとしたことで【7】→【6】→【4】と下がってしまうこともあります。
そうなったときに、必ず見逃すことなくリーダーはメッセージを発するべきです。「私は何があっても元には戻らせない」というアイメッセージで発するのです。
そしてユーメッセージで「ルールを守れ」と働きかけ、相互の雑談コミュニケーションを促します。
そうすると、再び【5】→【6】→【7】と社風レベルは上昇し、さらに【7】→【8】→【7】→【8】→【7】→【8】→【9】……と、いい状態に推移していくようになります。
社風がよくなり、組織が「本来の組織」としての機能を取り戻すと、8割のメンバーは自主的に動きはじめます。
現在の「やり方(ルール)」が、「あり方(組織目的)」にマッチしていないのであれば、メンバーたちが自主的に見直すことでしょう。「あり方」は変わりませんが「やり方」は常に変化していくものです。
そして変化させるのはリーダーではなく、現場にいるメンバーたちです。メンバーの自主的な努力によってルールが見直され、徹底され、そして組織のめざすべき「あり方」に近付いていきます。
これが組織のチカラです。
「働きがい」や「やりがい」という言葉に振りまわされず、「社風」をよくしていきましょう。そうすれば、組織に新しくジョインした若者の多くは、少しばかり大変な労苦があっても乗り越え、目的を果たし、結果的に「働きがい」や「やりがい」を感じるようになります。
メンバーが主体的に動くような「社風」を恒常的に維持することが、現代の組織において不可欠なファクターと言えます。