コロナ禍でいくぶん増加も…電話による通話時間の推移をさぐる(2024年公開版)
通話による電話利用が今なおコミュニケーションにおいて重要な手段の一つには違いないが、インターネットの普及、特にソーシャルメディアをはじめとした各種コミュニケーションサービスの浸透に伴い、重要性は薄れつつあるのも事実。今回は総務省が2024年2月に発表した調査結果「通信量からみた我が国の音声通信利用状況-令和4年度における利用状況-」(※)から、電話による通話の実態を確認する。
今件調査結果によると音声通話時間を意味する通信時間の日本国内での総計は、直近2022年度では28億2100万時間となり、前年度比で5.2%の減少。種類別では前年度比で固定系、IP電話、携帯電話・PHSとすべてが減少している。IP電話は2014年度において、データ取得が可能な2005年度以来はじめて前年度比でマイナスに転じ、それ以降はゼロ前後を行き来する動きとなっている。プラスを示す年度でもわずかなもので、「電話による通話」そのものへの手控え感が進んでいる実情を覆すまでにはいたらない。
携帯電話・PHSは2020年度において前年度比でプラスとなり、結果として総通信時間も前年度比の記録のある2001年度以降では初めて前年度比プラスになったが、これは新型コロナウイルスの流行で在宅時間が増えたことで、携帯電話などによる通話でのコミュニケーションをする機会が増えたのが原因だと思われる。翌年の2021年度ではその勢いもなくなり、全種類が前年度比でマイナスとなった。その動きは直近の2022年度でも続いている。
取得可能なデータで最古となる2000年度では、通話時間の約8割が固定電話、約2割が携帯電話だった。つまり「電話での通話」といえば固定電話によるものが一般的な世の中で、携帯電話の通話は少数派。しかし直近の2022年度では、固定系電話はIP電話を合わせても3割にすら届かず、携帯電話やPHSで3/4超え。今や「電話での通話」は主に携帯電話でのやりとりが普通となっている。
種類別では、IP電話は長らく前年度比でプラスを示していたが、これは契約数を大きく伸ばしていたのがプラスの主な要因だった。しかし契約数の増加傾向は続いているが、それ以上に個々の契約における通話時間の減少率が大きくなり、2014年度以降は前年度比でゼロを挟んでプラスとマイナスを行き来する形となっている。もっとも、2017年度以降はすべて前年度比マイナスなので、実質的にIP電話も減少傾向に転じたと見てもよいかもしれない。
携帯電話・PHSでは、PHSこそ契約数は減少中だが、携帯電話では契約数は増加している。しかし通信回数は減少している。
電話によるコミュニケーション手段が、音声からデジタル(電子メールやチャット、ソーシャルメディアなど)にシフトしつつあるからだ。もっとも2020年度では、新型コロナウイルスの流行という特殊環境の中で携帯電話・PHSは前年度比で増加。結果として総通信時間も前年度比で増加という結果になった。総通信時間は記録のある2001年度以降、前年度比での増加は2020年度が初めてということになる。直近2022年では全種類、そして当然総送信時間もまた、前年度比でマイナスとなったが。
知人との間、そして親子でも手持ちのモバイル端末で、音声による通話では無くデジタル(電子メール、チャットなど)での意思疎通へとシフトが進んでいる。LINEのように音声通話もできるチャットアプリが普及するにつれ、そしてそれを実装できるスマートフォンの普及とともに、電話における通話は時間も回数もますます減少していく。この傾向は今後も続くに違いない。
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※通信量からみた我が国の音声通信利用状況-令和4年度における利用状況-
日本国内の電気通信事業者からの報告を取りまとめたもので、対象事業者は兼業している事業者も含め発信側で区分すると、固定系関係10社、IP電話系21社、移動電話系11社、そして国際電話関係7社。過去の調査結果も同様の様式で取りまとめられている。
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