【西日本豪雨】鉄道路線が寸断、人と貨物輸送の危機をどう乗り越えるのか
7月第1週の終わりごろから、第2週にかけての豪雨災害から約2週間が経った。この豪雨では鉄道の被害も深刻であり、JR西日本エリアでは芸備線や福塩線といったローカル線だけではなく、山陽本線といった幹線まで運転できなくなった。
1ヶ月以上の長期運転見合わせを予定しているのは山陽本線・姫新線・津山線・伯備線・芸備線・福塩線・因美線・呉線・木次線となっている。大幹線の山陽本線でも柳井~下松は9月中、白市~瀬野は10月中、三原~白市は11月中であり、三原~広島、新岩国~徳山館では山陽新幹線による代替輸送が行われている。また、エリアの多くではバス代行がある。移動の多い広島~呉間では、バスだけではなく船による代行輸送も。
運転再開まで長期間を要すると発表されているのは、芸備線の備後落合~狩留家、福塩線府中~塩町、木次線出雲横田~備後落合である。
JR四国エリアでは予讃線本山~観音寺間の財田川橋梁が流失、こちらは8月10日頃に復旧できる見通しだ。
この西日本豪雨では鉄道が甚大な被害を受け、復旧にあたっての課題も多い。それらを整理してみよう。
山陽本線の復旧長期間に
山陽本線は、地域輸送の要として多くの利用者が存在する。「広島シティネットワーク」として知られる同エリアは、在来線でも普通列車の乗客が多く、高頻度輸送を実現している。そのエリアにおいて、普通列車が長期にわたって運行できないのは地元にとっては不便であるということだ。
また同路線は貨物列車が頻繁に走る区間であり、関東・関西地方から九州地方に向けての貨物列車が通る唯一の路線である。その路線が寸断されることにより、日本の物流に与える影響は大きい。
2014年には、JR東海の東海道本線由比~興津間で台風の影響により土砂が流入し、10日間貨物列車が運行できず、トラックへの振替や他路線への迂回などでしのいだこともある。
人口減エリアのローカル線維持の問題
芸備線では備後落合~狩留家間で橋梁が流出し、復旧に1年以上かかる。また木次線も長期間の運休を予定している。これらのエリアでは人口減少にともない、ローカル線をどう維持するかが課題になっており、とくに木次線エリアではそのことが問われている。
貨物輸送をどうするか
山陽本線の長期間運休にともない、もっと危機に置かれているのはJR貨物である。7月19日には貨物の代行輸送を開始した。トラックや船舶による代行輸送を進めているものの、輸送量は13%程度となっている。山陰本線で迂回できないか検討しているものの、同線の貨物の免許は現在なく、かつ運転士の訓練も必要であり、実現できるかはわからない。
現在、代行輸送で対応できるコンテナの個数は、広島貨物ターミナル以東で1日片道408個、以西で1日片道344個となっている。新南陽までは貨物列車は走れるものの、福岡貨物ターミナルや北九州貨物ターミナルから広島貨物ターミナルに直行するトラック、博多港から大阪港、北九州港から岡山港への船舶で直行する貨物も多い。
これは2014年の東海道本線寸断以上の危機である。貨物輸送は定時性が高く、大量のものを高速に輸送できることを特徴としている。トラックでは大量輸送をすることは困難であり、船舶では時間がかかる。
西日本豪雨による鉄道貨物輸送の被害はたいへん大きく、早い復旧が望まれるものの、現状では時間がかかる。JR西日本の復旧作業の進捗にも影響される。
今回の西日本豪雨では、山陽本線の重要性や、ローカル線の脆弱さ、貨物輸送の危機などが明らかになった。
東日本大震災以来、被災した路線が復旧されるまで時間がかかるというケースが相次いでいる。鉄道インフラの重要性と脆弱性を、鉄道会社だけの問題ではなく、政治課題とすべきではないか。