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運命の最終局、藤井叡王防衛か伊藤七段奪取か――第9期叡王戦五番勝負第5局展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
タイトル戦番勝負で最終局を迎えるのは2度目の藤井叡王(筆者撮影)

 藤井聡太叡王(21)=八冠に伊藤匠七段(21)が挑戦する第9期叡王戦(不二家主催)五番勝負は第4局までを終え2勝2敗のタイ。最終第5局は6月20日、山梨県甲府市「常磐ホテル」で行われる。

 藤井叡王がタイトル戦でフルセットになったのは豊島将之叡王(当時)に挑戦した2021年の第6期叡王戦以来で2回目。勝敗と展開を、データを基に予想してみた。

<第9期叡王戦五番勝負 これまでの結果と日程>

第1局 4月7日 愛知県名古屋市「か茂免」

藤井叡王(先手)勝ち

第2局 4月20日 石川県加賀市「アパリゾート佳水郷」

伊藤七段(先手)勝ち

第3局 5月2日 愛知県名古屋市「名古屋東急ホテル」

伊藤七段(後手)勝ち

第4局 5月31日 千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」

藤井叡王(後手)勝ち

第5局 6月20日 山梨県甲府市「常磐ホテル」

経験の差で藤井叡王やや優位か

<藤井叡王の最近10局>

4月10、11日 名人戦七番勝負第1局

対豊島将之九段 ○

4月20日 叡王戦五番勝負第2局

対伊藤七段 ●

4月23、24日 名人戦七番勝負第2局

対豊島九段 ○

5月2日 叡王戦五番勝負第3局

対伊藤七段 ●

5月8、9日 名人戦七番勝負第3局

対豊島九段 ○

5月18、19日 名人戦七番勝負第4局

対豊島九段 ●

5月25、26日 名人戦七番勝負第5局

対豊島九段 ○

5月31日 叡王戦五番勝負第4局

対伊藤七段 ○

6月6日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局

対山崎隆之八段 ○

6月17日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局

対山崎八段 ○

<伊藤七段の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

4月10日 竜王戦1組準決勝

対佐藤康光九段 ●

4月20日 叡王戦五番勝負第2局

対藤井叡王 ○

4月23日 ALSOK杯王将戦1次予選

対八代弥七段 ○

5月2日 叡王戦五番勝負第3局

対藤井叡王 ○

5月6日 NHK杯本戦

対梶浦宏孝七段 ●

5月17日 ALSOK杯王将戦1次予選

対渡辺和史七段 ○

5月21日 竜王戦1組出場者決定戦

対久保利明九段 ●

5月31日 叡王戦五番勝負第4局

対藤井叡王 ●

6月5日 ALSOK杯王将戦1次予選

対岡部怜央四段 ●

6月12日 順位戦B級2組

対横山泰明七段 ○

 直近10局の成績は藤井叡王が7勝3敗と順調。一方伊藤七段は第3局で藤井叡王をカド番に追い込んでから3連敗をはさみ5勝5敗の指し分けと勢いが止まった感がある。

 調子の比較はもちろん、タイトル戦経験の差を含めても藤井叡王やや優位と見ていいだろう。

振り駒が勝負に大きく影響

 直接対決は過去15戦して藤井叡王の12勝2敗1持将棋。伊藤七段は本シリーズ第2局、第3局の連勝で自信を取り戻したかに思えるが、トータルでは依然として藤井叡王が大きくリードしている。

 最終第5局はあらためて振り駒が行われるため、先手番やや有利とされるタイトル戦番勝負では勝負に大きく影響するだろう。

 藤井叡王先手ならば角換わり志向、伊藤七段先手ならば角換わりか相掛かりが予想される。いずれの戦型に進んでも、両者の最新研究と深い読みがぶつかり合う大熱戦になることは間違いない。棋界の歴史に残る名局を期待している。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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